銅を運ぶために掘られた煉瓦のトンネル

旧別子鉱山鉄道端出場隧道は、愛媛県新居浜市立川町にある明治26年(1893年)建造の煉瓦造トンネルで、平成21年(2009年)8月7日に登録有形文化財に登録された。延長93メートル、幅員3.0メートル、馬蹄形断面で、線形は緩やかに湾曲する。

掘られたのは別子鉱山鉄道の下部鉄道のためである。明治26年(1893年)に開通し、山中の銅鉱石を海沿いの新居浜の製錬所へ下ろす役目を負った。山側の起点となった端出場には、のちに別子銅山最後の採鉱本部が置かれる。住友が別子を開坑したのは元禄4年(1691年)、閉山は昭和48年(1973年)だった。

新居浜市は「中尾トンネル」の通称でこの施設を記載し、延長を92.55メートルとし、設計者を住友の技師・小川東吾としている。旧別子鉱山鉄道端出場隧道と、南に少し離れて架かる鉄橋は、同じ線のために同じ年に造られた。ただし出自は対照的である。橋は金属部材の荷としてドイツから届き、隧道は日本で設計され、煉瓦を人の手で積み上げてつくられた。

登録の理由と価値

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、登録番号は38-0090。官報告示は平成21年(2009年)8月25日である。員数は1基。

文化庁は旧別子鉱山鉄道端出場隧道を、近代に発展した端出場地区を代表する構造物の一つと位置づけている。価値の中心は煉瓦の仕事にある。明治26年(1893年)の時点で国産煉瓦の歴史はまだ数十年しかなく、湾曲しながら馬蹄形の断面をこの長さで保つ坑道は、積む側に相当な負担を強いた。線形が曲がる分、アーチの一段一段がわずかに異なる半径で閉じなければならない。

坑門は、ただの穴として済まされていない。壁面からわずかに突き出た角柱、すなわちピラスターがアーチの左右に立ち、頂部の要石は二面を切って仕上げてある。周囲の煉瓦に対して独立した石として見えるようにするためである。どちらも、壁だけで支えられない荷重を受け持っているわけではない。見られることを前提に置かれている。

見どころ

坑門に近づくと積み方が分かる。新居浜市は側壁部分を長手積と記録している。見えている煉瓦がすべて長い面を向け、目地が半個ずつずれて重なる積み方である。構造的な積み方のなかでは最も素朴で、落ち着いた横縞として目に入る。明治期の煉瓦建築で多く用いられたイギリス積みの、長い面と短い面が交互に現れる表情とは対照的だ。

その素朴な壁に対して、ピラスターとアーチ環では煉瓦の表情が変わり、視線は二面切仕上げの要石へ引き上げられる。無地の壁と作り込まれた開口部の対比が、この坑門の設計そのものである。

中に入ったら向こうの坑口を見ていてほしい。線形が曲がっているため、前方の明かりは静止せずアーチの上をゆっくり移動する。中ほどの数秒間はどちらの坑口も完全には見えない。幅員3.0メートルは車体の脇にほとんど余地を残さず、煉瓦の目地が一つずつ見分けられる距離を通り過ぎる。窓から物を出さないこと。

列車の速度は時速10キロメートル程度なので、延長93メートルの通過には30秒余りかかる。その時間はスマートフォンではなく天井に使いたい。

見学方法

隧道は現役で列車を通している。端出場の産業遺産テーマパーク「マイントピア別子」が当時の線路の上で観光列車「別子1号」を走らせており、旧別子鉱山鉄道端出場隧道をくぐるのはその乗車体験の一部である。軌道脇に歩道はなく、内部へ入るには列車に乗るほかない。

通過できる券は2種類ある。列車往復と観光坑道の見学がセットになった鉱山観光は、大人1,500円、中・高生1,100円、3歳以上から小学生までが900円。列車の往復のみの別子1号乗車体験は、大人700円、中・高生600円、3歳以上から小学生までが500円である。行きの発車は毎時00分・20分・40分、帰りは毎時05分・25分・45分。営業時間は季節により変わり、園内の施設ごとにも異なるため、出発前に運営者の公式サイトで確認してほしい。定休日は設けられていない。

入園も駐車場も無料である。撮影を禁じる掲示は出ていない。坑門は車内から撮りやすいが、坑内は明るさが急に落ちるので条件は厳しい。

JR新居浜駅からはせとうちバスのマイントピア別子行きに乗り、終点で下車する。車では松山自動車道の新居浜インターチェンジから約6キロメートル、12分ほどである。

Q&A

Q旧別子鉱山鉄道端出場隧道の中に入れますか。料金はいくらですか。
A新居浜市のマイントピア別子で観光列車「別子1号」に乗れば通過できます。列車往復のみの券は大人700円、中・高生600円、3歳以上から小学生までが500円。観光坑道の見学が付く鉱山観光は順に1,500円、1,100円、900円です。徒歩での立ち入りはできません。
Q旧別子鉱山鉄道端出場隧道の長さと構造を教えてください。
A国の登録では煉瓦造、延長93メートル、幅員3.0メートル、馬蹄形断面です。新居浜市はより細かく延長92.55メートルとしています。
Q旧別子鉱山鉄道端出場隧道はいつ、誰の設計で造られましたか。
A明治26年(1893年)、別子鉱山鉄道下部線の開通に向けて完成しました。新居浜市は設計者を住友の技師・小川東吾としています。登録有形文化財への登録は平成21年(2009年)8月7日、登録番号は38-0090です。
Q旧別子鉱山鉄道端出場隧道と中尾トンネルは同じものですか。
A同じものです。中尾トンネルは地元での通称で、登録名称は旧別子鉱山鉄道端出場隧道です。同じ線に架かる鉄橋は南に少し離れた位置にあり、別件として登録されています。
Q旧別子鉱山鉄道端出場隧道へはどう行けばよいですか。
AJR新居浜駅からせとうちバスのマイントピア別子行きに乗り、終点で降ります。車では松山自動車道の新居浜インターチェンジから約6キロメートル、12分ほどです。駐車場は無料です。

基本情報

名称旧別子鉱山鉄道端出場隧道
所在地愛媛県新居浜市立川町
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号38-0090
指定年平成21年(2009年)8月7日登録、告示は同年8月25日
員数1基
寸法煉瓦造、延長93メートル、幅員3.0メートル、馬蹄形断面
所有者住友金属鉱山株式会社
公開状況マイントピア別子の観光列車「別子1号」で通過可能。徒歩での立ち入りは不可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧別子鉱山鉄道端出場隧道
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007809
文化遺産オンライン 旧別子鉱山鉄道端出場隧道
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/192530
新居浜市 別子銅山文化遺産課 新たな登録有形文化財(4) 旧別子鉱山鉄道 端出場隧道
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/dozan/torokubesshitekkyo.html
新居浜市 5つの物件が国の登録有形文化財に追加されました(平成21年)
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/dozan/torokuyuukei.html
愛媛県 えひめの文化財(たから) 旧別子鉱山鉄道端出場隧道
https://www.pref.ehime.jp/ehimenotakara/670.html
マイントピア別子 鉱山観光・別子1号乗車体験
https://besshi.com/hadeba/mine-train/
マイントピア別子 利用料金
https://besshi.com/price/
マイントピア別子 アクセス
https://besshi.com/access/

最終更新日: 2026.09.04