建仁寺の塔頭から移されたと伝わる江戸前期の四脚門

松本酒造正門は、京都府京都市伏見区恵美酒町にある江戸前期(1615年から1660年)の四脚門で、平成20年(2008年)7月8日に国の登録有形文化財に登録された。通りに面して東向きに建ち、間口は2.8メートル。松本酒造で登録された建物のなかでもっとも古い年代に属する。

文化庁の解説によれば、この門はもと建仁寺の塔頭・正傳院(正伝院)にあったと伝わる。文化庁のデータベースは、明治期に一度移築され、昭和29年(1954年)頃にふたたび移築・改修されたと記している。同じ頃に建てられた松本家の居宅・万暁院と、同じ日に登録された。

正伝院は、織田信長の弟で茶人として知られる織田有楽斎が晩年に再興した寺である。有楽斎はここで茶の湯に明け暮れ、元和7年(1621年)に没した。正伝院はのち明治6年(1873年)に永源庵の跡地へ移り、正伝永源院と名を改めている(京都市の観光案内)。門の細部が示す年代は有楽斎の時代と重なるが、この門が有楽斎の再興に伴って建てられたことを示す資料は確認できない。

禅宗様の細部を持つ門

屋根は切妻造の本瓦葺。柱は礎盤の上に立ち、上下の端を丸く絞った粽(ちまき)付きとする。礎盤と粽はどちらも禅宗様の建築に特有の意匠で、臨済宗の大寺である建仁寺の塔頭にあった門という伝えとよく合う。

柱の上には三斗組を組み、柱と柱のあいだの中備には蟇股を入れる。妻側は虹梁の上に大瓶束を立てる虹梁大瓶束の形式で、軒は垂木を1段に、間隔をあけて並べた一軒疎垂木である。

文化庁は、改造を受けているものの、木鼻(柱から突き出た梁の先端の彫刻)などの細部の意匠は近世の初めにさかのぼり、植物の彫刻が優れていると評価している。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

見どころ

まず見たいのは木鼻と蟇股の彫刻である。文化庁がとくに挙げている植物の彫刻は、門の正面に立てば頭上の高さで確かめられる。近世初頭の彫りの深さと、後の改造部分との違いに目を凝らしたい。

次に足元を見る。礎盤に据えた粽付きの柱は、民家や町家の門にはまず見られない形で、この門が寺の門として生まれたことを示している。間口2.8メートルの小さな門だが、細部の格式は高い。

通りに面して東向きに建つので、午前中は正面に光が当たる。彫刻の陰影を見るなら、日が高くなりすぎない時間帯がよい。

見学方法

松本酒造正門は通りに面して建っており、公道から外観を見ることができる。門の内側は松本酒造の敷地で、一般には公開されていない。門をくぐって中に入ることはできない。

撮影は公道から行う。車や通行人の妨げにならない位置から見たい。門の奥にある万暁院は非公開で、塀越しに屋根の一部が見える程度である。

Q&A

Q松本酒造正門はいつのもので、いつ登録有形文化財になりましたか?
A江戸前期(1615年から1660年)の四脚門で、明治期と昭和29年(1954年)頃に移築されています。平成20年(2008年)7月8日に国の登録有形文化財に登録されました。登録番号は26-0321です。
Q松本酒造正門はどこから移されたのですか?
A文化庁の解説によれば、建仁寺の塔頭・正傳院(正伝院)にあったと伝わります。正伝院は織田有楽斎が晩年に再興した寺です。
Q松本酒造正門の建築的な特徴は?
A切妻造本瓦葺の四脚門で、礎盤の上に粽付きの柱を立て、三斗組と蟇股、妻の虹梁大瓶束、一軒疎垂木の軒を備えます。木鼻などの細部は近世の初めにさかのぼり、植物の彫刻が優れています。
Q松本酒造正門の大きさは?
A間口は2.8メートルです。木造、瓦葺の門です。
Q松本酒造正門は見学できますか?
A通りに面しているので、外観は公道から見られます。門の内側は非公開で、中には入れません。

基本情報

名称松本酒造正門(まつもとしゅぞうせいもん)
所在地京都府京都市伏見区恵美酒町938他
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号26-0321、登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
指定年平成20年(2008年)7月8日登録
員数1棟
寸法木造、切妻造本瓦葺の四脚門、間口2.8メートル
所有者松本酒造株式会社
公開状況外観は公道から見学可(門内は非公開)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 松本酒造正門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007236
文化遺産オンライン — 松本酒造正門
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/142998
京都を彩る建物や庭園(京都市文化市民局)— 松本酒造
https://kyoto-irodoru.city.kyoto.lg.jp/fushimi/matsumoto_shuzo-n.html
京都観光Navi(京都市)— 正伝永源院並びに織田有楽斎の墓
https://ja.kyoto.travel/tourism/single02.php?category_id=9&tourism_id=228

最終更新日: 2026.09.26