本殿に取り付く垣
向日神社末社天満宮社瑞垣は、京都府向日市向日町北山にある江戸時代末期(1830年から1868年)の工作物で、平成27年(2015年)8月4日に登録有形文化財となった。木造・瓦葺で、総延長は17メートルである。
この垣は独立して立っているのではない。天満宮社本殿の向拝の側面に取り付き、そこから矩折れに後方へ延びる。矩折れとは直角に折れ曲がることをいう。社殿の横腹から出て、直角に曲がり、建物の裏手へ回り込む。向日神社末社天満宮社瑞垣は、本殿と一体で社地を囲うためにつくられている。
向日市の記録によれば、天満宮社本殿の後方までは軸部があって瓦葺とし、背面には屋根がない。屋根を全長に架けず、必要な範囲で止めている。
柱が直接、棟木を受ける
向日神社末社天満宮社瑞垣の構造は単純である。基壇の上に土台を据え、そこに柱を立てる。その柱が直接、棟木を受ける。
ふつう屋根の重さは、柱の上に置いた組物や梁を介して伝えられる。この垣にはそれがない。柱の上端がそのまま棟木に当たる。垣という低い工作物だからこそ成り立つ納め方で、部材の数を最小限に抑えている。
壁面は高さで二つに分かれる。腰から下が竪板壁、その上の内法の高さに襷格子を入れる。襷格子は斜めに交差させた格子で、本殿域を囲む瑞垣に使われた菱格子とは組み方が違う。同じ境内の垣でありながら、格子の入れ方で区別されている。
垣に付いた大仏様の木鼻
向日神社末社天満宮社瑞垣の見どころは、挿肘木の腕木に付けられた木鼻である。しかもそれが大仏様の木鼻になっている。
大仏様は鎌倉時代に東大寺の再建で用いられた建築様式で、その木鼻は先端を大きく削ぎ落とした力強い形をとる。本来は大きな仏堂の柱に付くものである。それを江戸末期の、しかも高さ二メートルに満たない垣の腕木に付けている。
簡素な構造のなかで、この木鼻だけが手間をかけられている。文化庁の解説も、簡素ながら装飾を持ち社叢景観に寄与すると評する。木鼻は腕木の先にあるので、垣に沿って歩きながら見上げると順に現れる。数は多くないので、見落とさないように足を止めたい。
向日神社末社天満宮社瑞垣の見学
向日神社末社天満宮社瑞垣は屋外の工作物で、参道の北側から常に外観を見ることができる。垣の内側へは立ち入れない。
見るなら、まず天満宮社本殿の正面に立って、垣が向拝の側面のどこに取り付いているかを確かめる。そこから東側へ歩けば、矩折れに曲がる箇所に出る。直角に折れる部分は、土台と柱の納まりが外から見える数少ない場所である。
背面には屋根がないため、後ろへ回ると軸部だけが立つ状態が見える。屋根のある部分とない部分の切り替わりは、垣の役割を考えるうえで分かりやすい手がかりになる。撮影は通常認められている。境内への行き方と拝観の条件は向日神社のページにまとめてある。
Q&A
- 向日神社末社天満宮社瑞垣はどこに取り付いていますか?
- 天満宮社本殿の向拝の側面に取り付き、そこから矩折れに、つまり直角に折れながら後方へ延びています。総延長は17メートルです。
- 向日神社末社天満宮社瑞垣の見どころはどこですか?
- 挿肘木の腕木に付けられた大仏様の木鼻です。鎌倉時代の大きな仏堂に用いられた形式の木鼻を、低い垣の腕木に付けています。
- 向日神社末社天満宮社瑞垣はどのような構造ですか?
- 基壇上の土台に立てた柱が直接、棟木を受けます。組物や梁を介さない簡素な納め方で、部材の数を抑えています。
- 向日神社末社天満宮社瑞垣の壁はどうなっていますか?
- 腰から下を竪板壁とし、その上の内法の高さに襷格子を入れます。本殿域を囲む瑞垣の菱格子とは組み方が異なります。
- 向日神社末社天満宮社瑞垣には全体に屋根がありますか?
- ありません。天満宮社本殿の後方までは軸部があって瓦葺ですが、背面には屋根が架かっていません。
基本データ
| 名称 | 向日神社末社天満宮社瑞垣 |
|---|---|
| 所在地 | 京都府向日市向日町北山65 |
| 指定区分 | 登録有形文化財 |
| 指定年 | 平成27年(2015年)8月4日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 総延長17メートル、木造・瓦葺(背面は屋根なし) |
| 所有者 | 宗教法人向日神社 |
| 公開状況 | 屋外の工作物、外観のみ見学可 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 向日神社末社天満宮社瑞垣
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010653
- 向日市 向日神社本殿を取り囲む境内社13棟
- https://www.city.muko.kyoto.jp/site/rekishi/2443.html
- 向日市 向日神社
- https://www.city.muko.kyoto.jp/site/rekishi/1061.html
最終更新日: 2026.09.14