中庭の井戸を覆う小さな屋形

石川酒造井戸屋形は、三重県四日市市桜町にある明治後期(1898年から1912年)建築の井戸の覆屋で、平成25年(2013年)3月29日に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は24-0143で、登録は井戸を含む。

敷地中央の中庭から南西に寄った位置、主屋のすぐ北に建つ。木造で、屋根は切妻造の桟瓦葺、面積は6.8平方メートルと、15件のなかで最も小さい。壁を設けない四方吹き放しの造りで、中央には石を積んで井桁を組んだ井戸がある。

文化庁の解説は、伏流水が豊富に自噴する造り酒屋にあって、敷地の景観に寄与する工作物とこの屋形を位置づけている。酒の味を決める水を汲み上げる場所を、小さいながら瓦屋根の建物で丁寧に覆った。

登録の理由と価値

石川酒造井戸屋形は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。規模は小さいが、構造に見るべき工夫がある。

4本の柱は、上に向かってわずかに内側へ傾けて立てる「内ころび」としている。柱の頂部は頭貫(かしらぬき)という横材でつなぎ、柱と頭貫の角には方杖(ほうづえ)と呼ぶ斜めの支えを入れる。壁の無い吹き放しの建物は横からの力に弱いが、柱を内へ傾け、方杖で角を固めることで、軽い構造のまま瓦屋根の重さと揺れに耐えるようにしている。

蔵元によれば、敷地には深さ76メートルの井戸と、深さ200メートルの自噴する掘り抜き井戸があり、石川酒造は鈴鹿山系の伏流水で酒を仕込んでいる。この屋形の井戸がどちらにあたるのか、あるいは別の井戸なのかは、公開された資料からは確かめられない。それでも、水に恵まれた蔵であることを敷地の中で最も端的に示す建物であることは変わらない。

見どころ

石川酒造井戸屋形の見どころは、柱の傾きである。まっすぐ立っているように見えて、4本の柱は頂部に向かって少しずつ内側へ寄っている。正面から見ると、屋根の下の柱の輪郭がわずかに台形を描く。

柱と頭貫の角に入る方杖は、屋形の四隅で同じ形を繰り返す。小さな建物の中に、構造の理屈がそのまま見える。

中央の石積みの井桁は、角を組み合わせた四角い井戸枠である。主屋の北、中庭に面した位置は、家の者と蔵人の双方が日々出入りする場所だったと考えられる。

見学方法

石川酒造井戸屋形は中庭に面した敷地の内部にあり、外からは見えない。建物も公開されていない。

敷地への行き方と問い合わせ先は、石川酒造のページにまとめてある。

Q&A

Q石川酒造井戸屋形とは何ですか?
A中庭の井戸を覆う小さな木造の屋形です。壁の無い四方吹き放しで、中央に石積みの井桁を組んだ井戸があります。
Q石川酒造井戸屋形はいつ建てられましたか?
A明治後期、1898年から1912年の間の建築とされています。
Q石川酒造井戸屋形の柱にはどのような工夫がありますか?
A4本の柱を上に向かって内側へ傾ける「内ころび」とし、頭貫と方杖で頂部を固めています。
Q石川酒造井戸屋形の井戸は蔵元の紹介する深井戸と同じですか?
A蔵元は深さ76メートルと200メートルの井戸を紹介していますが、この屋形の井戸がそのどちらにあたるかは公開資料からは確かめられません。
Q石川酒造井戸屋形は見学できますか?
A公開されていません。中庭に面した敷地の内部にあるため、外からも見えません。

基本情報

名称石川酒造井戸屋形
所在地三重県四日市市桜町字南垣内128他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成25年(2013年)3月29日登録
員数1棟
寸法木造、瓦葺、面積6.8平方メートル、井戸付
所有者石川酒造株式会社
公開状況非公開(中庭に面した敷地内部にあり、外からは見えない)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造井戸屋形
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009491
四日市市:石川酒造主屋・大蔵・自噴井戸など全15件
https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1001000002649/index.html
石川酒造株式会社 公式サイト
https://e-sakagura.co.jp/

最終更新日: 2026.09.25