土塀に組み込まれた門
西大寺鐘楼門は、岡山県岡山市東区の金陵山西大寺境内を南北に区切る土塀の中央に建つ江戸中期の一間楼門で、文化庁は年代を1661年から1751年の間とし、令和元年(2019年)に登録有形文化財となった。屋根は入母屋造の本瓦葺、平面は一間である。
建築面積は10平方メートル。西大寺の境内でこれより小さい建物はほとんどないが、この門は梵鐘を吊り、なおかつ境内の北半と南半を隔てる塀の唯一の通路を担っている。機能が最小の容積に押し込まれている。
下層は正面と背面に虹梁を渡し、親柱の筋に板扉を構える。上層は正背とも三間に開き、中央の間を空けて梵鐘を吊る。鐘を撞き、音を通すための構えである。
この一棟だけ登録の理由が違う
西大寺の登録建造物7件のうち6件は「造形の規範となっているもの」を基準とする。西大寺鐘楼門だけが例外で、令和元年(2019年)の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。造りの良し悪しではなく、その建物がどこに立っているかを評価する基準といえる。
現地に立つとこの読みは腑に落ちる。門は、断ち切っている土塀と切り離せない。門を取れば塀はただの遮断になり、門があることで塀は境になる。文化庁の解説も、江戸中期の境内の建築形式を伝える遺構と述べており、その「形式」を担っているのは塀と門と両側の空間の関係である。
年代には幅がある。登録データは江戸中期という範囲を示す。寺の案内は18世紀とし、仁王門や大師堂と近い延宝の頃ではないかと推測する。二つの記述は重なるものの一致はしておらず、いずれも銘のある部材に基づくものではない。
細部は、小さいながら丁寧な仕事であることを示している。組物は出組、中備は間斗束、縁の腰組は三斗組。寺は下層を面取角柱、上層を台輪と頭貫で受ける出組支輪付き、軒は二軒で深いと記す。上層のほうが重く見えるのはそのためである。
現地で見たいところ
足を止める人の目当ては、まず鐘だろう。高麗時代前期、10世紀から11世紀に朝鮮半島で鋳造されたもので、日本に現存する朝鮮鐘のなかでは最大の規模とされ、西大寺は当山の三つの霊宝の一つに数える。もとからここにあったわけではない。明治になるまで境内南端の石門に吊られており、その後に西大寺鐘楼門へ移された。
大きさだけでなく、輪郭を見てほしい。この時期の朝鮮鐘は、竜の姿に作られた吊り手が一つ、その脇に筒状の管を備え、鐘身には同時代の和鐘が用いない装飾の区画が入る。寺はこれを龍鐘と呼ぶ。
門の周りには行灯が並ぶ。西大寺会陽の歴代の祝主と、宝木を取った福男の名が記されている。上から順に読んでいくと、掲示板のどこにも書かれていない祭りの歴史が圧縮されて見えてくる。
正月三が日には「招福の鐘」としてこの鐘を撞くことができる。それ以外の時期に一般の撞鐘は案内されていないので、音を聞きたい人はこの期間に合わせて計画したい。
西大寺鐘楼門の見学方法
境内は終日参拝でき、西大寺鐘楼門はいつでも無料で見られ、通り抜けることもできる。2月の会陽の期間は塀の両側が行事に使われ、通行が制限される。
寺の有料拝観は本堂と牛玉所殿の内部が対象で、大人500円、小人200円、受付は午前9時から午後4時まで、10名以上の団体は100円割引。この門の上層はその対象ではなく、正月の撞鐘を除いて鐘のある階への立ち入りは案内されていない。御守授与所は午前8時30分から午後5時まで。
地上からの門と鐘の撮影は通常問題ない。堂内撮影に関する規定は公表されていないので、現地の掲示を確認してほしい。
JR赤穂線西大寺駅から徒歩約10分。岡山天満屋バスセンターから西大寺バスセンターまでバスで約30分、そこから徒歩約10分。境内に駐車場がある。
Q&A
- 西大寺鐘楼門に吊られている鐘はどんな鐘ですか。
- 高麗時代前期、10世紀から11世紀に朝鮮半島で鋳造された朝鮮鐘です。日本に現存する朝鮮鐘では最大の規模とされ、明治までは境内の石門に吊られていました。
- 西大寺鐘楼門の鐘は撞けますか。
- 正月三が日は「招福の鐘」として撞くことができます。それ以外の時期については一般の撞鐘の案内がありません。
- 西大寺鐘楼門はいつ建てられたのですか。
- 文化庁は江戸中期、1661年から1751年の間としています。寺は18世紀とし、仁王門や大師堂に近い延宝の頃ではないかと推測しています。
- 西大寺鐘楼門はなぜ登録されたのですか。
- 登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、境内の他の6件とは異なります。境内を南北に区切る土塀と一体で評価されているためです。
- 西大寺鐘楼門へのアクセスを教えてください。
- JR赤穂線西大寺駅から徒歩約10分です。バスは岡山天満屋バスセンターから西大寺バスセンターまで約30分、そこから徒歩約10分になります。
基本データ
| 名称 | 西大寺鐘楼門 |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県岡山市東区西大寺中3丁目1225 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2019年登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積10平方メートル |
| 所有者 | 宗教法人西大寺 |
| 公開状況 | 境内は終日参拝可能。外観は自由に見学できる |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「西大寺鐘楼門」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012985
- 西大寺(観音院)「境内拝観・周辺案内」
- https://www.saidaiji.jp/about/precinct-guide/
- 西大寺(観音院)「アクセス 窓口時間」
- https://www.saidaiji.jp/access/
- 岡山市「西大寺観音院(はだか祭り)」
- https://www.city.okayama.jp/higashiku/0000011671.html
最終更新日: 2026.09.09