辻本店衣装蔵とは ― 主屋の北に接する衣装の蔵
辻本店衣装蔵(つじほんてんいしょうぐら)は、岡山県真庭市勝山の造り酒屋・辻本店で店舗兼主屋の北に接続して建つ明治中期(1883年から1897年ごろ)の土蔵造2階建の蔵で、平成26年(2014年)に登録有形文化財に登録された。名称のとおり、一家の衣装や調度を納めるための蔵である。
辻本店衣装蔵の建築面積は58平方メートルで、敷地の蔵のなかではもっとも小さい。屋根は切妻造の桟瓦葺で、切石の基礎の上に建つ。
辻本店衣装蔵だけが「再現することが容易でないもの」
辻本店の登録建造物9件のうち8件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されたが、辻本店衣装蔵だけは「再現することが容易でないもの」という別の基準で登録されている。評価されたのは町並みへの寄与よりも、左官と大工の技そのものだといってよい。
文化庁の解説が挙げるのは、西の通り側の窓である。土戸(土で塗り固めた防火の扉)の内側を鏝絵で飾り、庇を支える持送りには繊細な彫刻を施している。辻本店の公式サイトは、この鏝絵を竜と虎の図柄と説明している。鏝絵は左官が鏝で漆喰を盛り上げて描く浮き彫りで、同じものを今つくり直すには相当の腕が要る。
屋根は置屋根式である。土蔵の本体を土と漆喰で塗り固めたうえで、その上に屋根を別に載せる造り方で、火災のときに屋根が焼け落ちても蔵の中身を守れるよう工夫されている。
辻本店衣装蔵の見どころ ― 腰と隅の海鼠壁、東の濡縁
辻本店衣装蔵の外壁は漆喰塗で、1階と2階それぞれの腰、そして建物の隅に海鼠壁を張っている。腰だけでなく角まで海鼠壁で固めるのは、ぶつかりやすく傷みやすい部分を守るためで、蔵の輪郭が格子模様で縁取られたように見える。
戸口は東面にあり、瓦葺の庇の下を濡縁としている。家族が衣装の出し入れに使った側で、通りに面した西側の飾られた窓とは表情がまったく違う。通りに見せる顔を西に、日々の使い勝手を東に振り分けた設計である。
辻本店衣装蔵の見学方法
辻本店衣装蔵は内部が公開されておらず、見られるのは旧出雲街道に面した西側の外観である。鏝絵は土戸の内側に描かれているため、土戸が開いているときでないと図柄は見えない。持送りの彫刻は、土戸の開閉に関係なく庇の下を見上げれば確かめられる。
東面の戸口と濡縁は敷地の内側にあり、通りからは見えない。辻本店への行き方と敷地全体の見学条件は、辻本店のページにまとめてある。
Q&A
- 辻本店衣装蔵はいつ建てられたのですか?
- 明治中期(1883年から1897年ごろ)の建築です。平成26年(2014年)に登録有形文化財に登録されました。
- 辻本店衣装蔵の鏝絵はどこで見られますか?
- 通りに面した西側の窓の土戸の内側に描かれています。土戸が開いているときに通りから見られます。
- 辻本店衣装蔵の鏝絵には何が描かれていますか?
- 辻本店の公式サイトによれば、竜と虎の図柄です。
- 辻本店衣装蔵はなぜほかの8件と登録基準が違うのですか?
- 鏝絵や持送りの彫刻など職人の技が評価され、ただ1件「再現することが容易でないもの」として登録されたためです。
- 辻本店衣装蔵の内部は見学できますか?
- 内部は公開されていません。見学できるのは通りに面した西側の外観です。
基本情報
| 名称 | 辻本店衣装蔵(つじほんてんいしょうぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県真庭市勝山字山本町屋敷116 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2014年(平成26年) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、建築面積58㎡ |
| 所有者 | 株式会社辻本店 |
| 公開状況 | 外観は通りから見学可、内部は非公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「辻本店衣装蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010054
- 文化遺産オンライン「辻本店衣装蔵」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/232481
- 御前酒蔵元 辻本店「蔵元紹介」
- https://www.gozenshu.co.jp/sp/kuramoto/
最終更新日: 2026.09.24