辻本店事務所とは ― 店舗の南に続く土蔵造の棟

辻本店事務所(つじほんてんじむしょ)は、岡山県真庭市勝山の造り酒屋・辻本店で店舗兼主屋の南に接続して建つ江戸時代末期の土蔵造の建物で、平成26年(2014年)に登録有形文化財に登録された。現在の名称は事務所だが、もともとは物をしまう蔵の列であった。

文化庁の記録によると、辻本店事務所の建築年代は江戸末期(1830年から1868年ごろ)で、昭和54年(1979年)に改修されている。構造は土蔵造平屋一部2階建、屋根は切妻造桟瓦葺、建築面積は148平方メートルである。

辻本店事務所の来歴 ― 倉庫・醤油倉庫・納屋からの転用

辻本店事務所の内部は、かつて北から倉庫、醤油倉庫、納屋の三つに分かれていた。そのうち二階の床と間仕切りの一部を取り払って、いまの事務所の空間にしている。造り酒屋の一角に醤油を納める区画があったことは、この建物の記録から読み取れる事実である。

出入りの仕方も変わっている。西面、つまり通りに面した1階の窓と出入口は後から設けられたもので、元は店舗の側から出入りしていた。通りから直接入れる現在の姿は、1979年の改修以降のものと考えるのが自然だが、文化庁の解説は窓と出入口を「後補」とするだけで、時期までは記していない。

蔵を事務所に変えても外壁には大きく手を入れず、土蔵の姿をそのまま残した。辻本店事務所が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されたのは、この外観が通りの景観を引き締めていると評価されたためである。

辻本店事務所の見どころ ― 漆喰と海鼠壁の壁面

辻本店事務所の外壁は漆喰塗で、腰を海鼠壁とする。北隣の店舗兼主屋も2階の腰に海鼠壁を用いているので、通りから見ると二つの棟の格子模様が高さを変えながら連なって見える。

通りに面した西面の窓と出入口が後補だと知ったうえで壁を眺めると、開口部の周りの納まりが土蔵本来の部分とどう違うかに目が向く。蔵の厚い壁に後から穴を開けた建物は勝山の町並みにいくつもあり、辻本店事務所はその変化がはっきり記録されている例である。

辻本店事務所の見学方法

辻本店事務所は会社の事務所として使われており、内部は公開されていない。外観は旧出雲街道から眺められる。店舗兼主屋と屋根が続いているので、通りの向かい側から少し南へ下がって見ると、2棟のつながり方がよく分かる。

業務中の建物なので、出入口の前に立ち止まって通行や来客の妨げにならないよう気をつけたい。辻本店への行き方と敷地全体の見学条件は、辻本店のページにまとめてある。

Q&A

Q辻本店事務所はいつ建てられたのですか?
A江戸末期(1830年から1868年ごろ)の建築で、昭和54年(1979年)に改修されています。平成26年(2014年)に登録有形文化財に登録されました。
Q辻本店事務所はもともと何に使われていたのですか?
A北から倉庫、醤油倉庫、納屋の三つに分かれた蔵でした。二階の床と間仕切りの一部を撤去して事務所にしています。
Q辻本店事務所の内部は見学できますか?
A会社の事務所として使われているため、内部は非公開です。外観は通りから眺められます。
Q辻本店事務所の通り側の出入口は昔からあるのですか?
Aいいえ。西面1階の窓と出入口は後から設けられたもので、元は店舗の側から出入りしていました。
Q辻本店事務所はなぜ登録有形文化財になったのですか?
A漆喰塗に海鼠壁の腰をもつ土蔵造の外観が、通りの景観を引き締めていると評価されたためです。

基本情報

名称辻本店事務所(つじほんてんじむしょ)
所在地岡山県真庭市勝山字山本町屋敷116
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2014年(平成26年)
員数1棟
寸法土蔵造平屋一部2階建、建築面積148㎡
所有者株式会社辻本店
公開状況外観は通りから見学可、内部は非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「辻本店事務所」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010053
文化遺産オンライン「辻本店事務所」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/279940

最終更新日: 2026.09.24