和泉国の二宮、泉穴師神社

泉穴師神社は、大阪府泉大津市豊中町にある『延喜式』所載の古社で、鎌倉時代の文永10年(1273年)の棟木銘をもつ摂社住吉神社本殿と、慶長7年(1602年)に再建された本殿、同じころの摂社春日神社本殿の3棟が、昭和24年(1949年)2月18日に重要文化財に指定されている。

社名の読みは、神社自身が「いずみあなしじんじゃ」と名のり、大阪府の文化財一覧もこの読みを使う。文化庁のデータベースと文化遺産オンラインのふりがなは「いずあなしじんじゃ」となっている。京都国立博物館の解説によると、泉穴師神社は大和の穴師坐兵主神社(奈良県桜井市)と関係が深く、大和の社と区別するために「泉」を冠して呼ばれたらしい。

創建は社伝で天武天皇の白鳳元年(672年)とされ、泉大津市もこの年を紹介している。大阪文化財ナビは社伝として650年ごろの創建を挙げ、京都国立博物館は7世紀中頃の創建と伝わるとする。平安時代の『延喜式』神名帳には「泉穴師神社二座」とあり、中世には大鳥・穴師・聖・積川・大井関(日根)の和泉五社のうちの二宮とされた。

祭神は、農業の神とされる天忍穂耳尊と、紡織の神とされる栲幡千々姫命の夫婦2柱である。神社の由緒書きは、天正3年(1575年)に織田信長が和泉五社へ社領を安堵した朱印状の文面も紹介している。

泉穴師神社の重要文化財3棟

泉穴師神社の重要文化財は、拝殿の奥に東西に並ぶ3棟の社殿である。中央の本殿は、文化庁の記録では流造の三間社で、正面に千鳥破風を2か所付け、屋根は檜皮葺。実際には一間社流造の社殿2棟を中央の合の間でつないだ形をとり、夫婦2柱の神を並べてまつる造りになっている。棟札によれば、豊臣秀頼が片桐且元を奉行として慶長7年に建て直した。

本殿の東には摂社春日神社本殿、西には摂社住吉神社本殿が建つ。2棟はどちらも一間社春日造で、正面に軒唐破風を付け、背面を入母屋造に納め、檜皮で屋根を葺く。住吉神社本殿には「文永十年」と書かれた棟木が残り、泉大津市は府内最古の神社本殿といわれると紹介している。春日神社本殿の年代は、文化庁が慶長7年ごろとする一方、大阪文化財ナビは慶長より前に建っていたとみている。

3棟はいずれも棟札を附として指定を受けた。附の棟札は本殿が5枚、春日神社本殿が1枚、住吉神社本殿が2枚である。棟ごとの形式と来歴は、それぞれのページで紹介している。

泉穴師神社には、平安時代から鎌倉時代にかけて造られた木造神像80躯も重要文化財として伝わる。京都国立博物館によると神社に伝わる神像は83躯で、令和元年(2019年)から4年をかけて修理が行われた。

泉穴師神社の境内を歩く

泉穴師神社の境内は、高さ20〜33メートルに達するクスノキの大木に覆われている。この大木群は泉大津市の天然記念物で、市はクスノキを含む神社の景観が江戸時代から大きく変わっていないと説明している。

二の鳥居をくぐると、中央に石造の太鼓橋(反橋)が架かる。神社によると昔は神輿を担いでこの橋を渡ったといい、いまの参拝者は両脇の石畳を歩く。秋祭りのだんじりも左手の石畳から宮入りする。

正面の拝殿は入母屋造・瓦葺で、慶長年間(1596〜1615年)ごろの建築とされる。拝殿の前に石鳥居が2基並ぶのは、本殿の夫婦神に1基ずつ備えたものと神社は考えている。拝殿と石鳥居は泉大津市の指定文化財である。本殿の前には、元弘元年(1331年)に楠木正成が奉納したと伝わる石燈籠も立つ。

重要文化財の3棟は拝殿の奥、鈴門の内側にまとまって建つ。拝殿の前に立つと、3棟の位置関係は東の春日神社本殿、中央の本殿、西の住吉神社本殿の順になる。

泉穴師神社の参拝と行き方

泉穴師神社の境内は参拝自由で、開門・閉門の時刻は設けられていない。社殿を囲む鈴門は、神社の案内によれば元日の午前0時から午後5時まで開かれ、その間は門内の各社殿に参拝できる(歳旦祭の斎行中は閉じる)。ふだん門内に入れるかどうかは案内に書かれていないので、社殿を近くで見たい場合は社務所(電話0725-32-2610)に確かめておきたい。

電車ならJR阪和線の和泉府中駅から歩いて約16分、南海本線の泉大津駅から約23分。車では国道26号の阪和豊中交差点から入る。境内に無料の駐車場が7台分あるが、祭典や行事の際は使えないことがある。神社の住所は泉大津市豊中町1丁目1番1号で、文化庁の記録では所在地を「豊中」までとしている。

主な祭礼は、4月5日の春季大祭、10月の秋季大祭、11月の栲幡祭である。秋季大祭では地元のだんじりや神輿が巡行し、白米と餅米を蒸して盛り付ける飯の山神事が行われる。栲幡祭は織物の神への感謝と繊維産業の繁栄を願う祭典で、地域の繊維業の関係者が多く参列する。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):泉穴師神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2158
国指定文化財等データベース(文化庁):泉穴師神社摂社春日神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2159
国指定文化財等データベース(文化庁):泉穴師神社摂社住吉神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2160
大阪府:泉大津市の指定等文化財一覧(PDF)
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/26653/032izumiohtsu.pdf
泉大津市:泉大津市内の文化財
https://www.city.izumiotsu.lg.jp/kakuka/kyoikuiinkai/shogaigakushu/bunkazai/bunkazai_shinainobunkazai.html
泉大津市:泉穴師神社(豊中)
https://www.city.izumiotsu.lg.jp/kakuka/koushitsu/hishokoho/shinainomeishokyuuseki/izumianashijinnjya.html
大阪文化財ナビ:泉穴師神社
https://osaka-bunkazainavi.org/bunkazai/%E6%B3%89%E7%A9%B4%E5%B8%AB%E7%A5%9E%E7%A4%BE
泉穴師神社 公式サイト:泉穴師神社について
https://izumi.anashi-jinja.com/about/
泉穴師神社 公式サイト:ご祭神・由緒
https://izumi.anashi-jinja.com/deity/
泉穴師神社 公式サイト:境内マップ
https://izumi.anashi-jinja.com/map/
泉穴師神社 公式サイト:年間行事
https://izumi.anashi-jinja.com/event/
京都国立博物館:特集展示「泉穴師神社の神像」リーフレット(PDF)
https://www.kyohaku.go.jp/jp/learn/assets/guides/leafret_izumianashi_2024.pdf
OSAKA-INFO(大阪観光局):泉穴師神社
https://osaka-info.jp/spot/izumianashijinja/

最終更新日: 2026.10.15

基本情報

名称泉穴師神社
所在地大阪府泉大津市豊中
所有者泉穴師神社
指定重要文化財 3件
座標34.49666, 135.41985