7棟でただ一つの煉瓦造、昭和初期の麹室

矢野酒造麹室は、佐賀県鹿島市大字高津原の矢野酒造に建つ昭和初期の煉瓦造及び木造平屋建の麹室で、平成18年(2006年)8月3日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「やのしゅぞうこうじしつ」。

敷地の西の端、西蔵の南に接続する南北棟で、建築面積は81平方メートル。矢野酒造麹室は矢野酒造の7棟のうち最も新しく、煉瓦を使ったただ一つの建物である。

煉瓦の壁と、その上に立つ板壁

規模は桁行6間・梁間3間で、1間を約1.82メートルとすると約10.9メートル×約5.5メートル。

矢野酒造麹室の外観は上下で素材が切り替わる。下部は煉瓦の壁で、その上に板を縦に張った竪羽目板張の壁を立ち上げ、切妻造の桟瓦葺の屋根を架けている。白漆喰や鉄板で覆われたほかの蔵のなかで、赤い煉瓦の壁が目を引く。

麹をつくる部屋のつくり

麹室は、蒸した米に麹菌を付けて米麹を育てる部屋である。麹づくりには高い温度と湿度を保つ必要があり、麹室は保温のために厚い壁や断熱を備えるのが普通である。矢野酒造麹室が壁の下部を煉瓦で築いているのも、熱を逃がしにくくする工夫と考えられる。

文化庁の解説によれば、矢野酒造麹室の内部は北から2間の位置に間仕切りを設け、北側を前室としている。前室は、外気が麹づくりの部屋に直接入るのを防ぐ緩衝の役割を果たしていたとみられる。内壁は煉瓦の壁にモルタルを塗って仕上げている。

登録の理由と昭和初期の建築

矢野酒造麹室の登録番号は41-0059、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

文化庁のデータベースは、矢野酒造麹室の年代を「昭和初期」としている。明治37年(1904年)の主屋から始まった矢野酒造の建物群のなかで、最後に加わった棟である。佐賀県遺産の説明は、敷地の西側から見える西蔵や麹室をはじめとする蔵の並びを、歴史を感じさせる眺めとして挙げている。

矢野酒造麹室の見学

矢野酒造麹室は敷地の西端にあり、街道からは見えない。西側から見える可能性はあるが、西側への道順は案内されていないので、私有地に入らず公道から見える範囲にとどめたい。

麹室は酒造りのなかでも衛生管理が特に厳しい場所で、矢野酒造麹室の内部を公開するという案内は見当たらない。蔵元が見学先として案内しているのは旧精米所の「たつみの蔵」である。

Q&A

Q矢野酒造麹室とは何をする建物ですか?
A蒸した米に麹菌を付けて米麹を育てる部屋です。麹づくりには高い温度と湿度が必要で、そのための専用の建物です。
Q矢野酒造麹室はいつ建てられましたか?
A文化庁のデータベースでは昭和初期とされています。矢野酒造の7棟のうち最も新しい建物です。
Q矢野酒造麹室はどんな構造ですか?
A煉瓦造及び木造平屋建で、煉瓦の壁の上に竪羽目板張の壁を立ち上げ、切妻造・桟瓦葺の屋根を架けています。内部は北から2間の位置で仕切って前室とし、内壁は煉瓦にモルタル塗りです。
Q矢野酒造麹室は見学できますか?
A内部を公開するという案内はありません。街道からも見えません。蔵元が見学先として案内しているのは旧精米所(たつみの蔵)です。
Q矢野酒造麹室はなぜ登録有形文化財なのですか?
A平成18年(2006年)8月3日に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されました。登録番号は41-0059です。

基本情報

名称矢野酒造麹室(やのしゅぞうこうじしつ)
所在地佐賀県鹿島市大字高津原字一本杉3903-1他
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号41-0059
指定年平成18年(2006年)8月3日登録
員数1棟
寸法煉瓦造及び木造平屋建、切妻造、桟瓦葺、桁行6間・梁間3間、建築面積81平方メートル
所有者矢野酒造株式会社
公開状況非公開。街道からは見えない

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):矢野酒造麹室
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005675
国指定文化財等データベース(文化庁):矢野酒造西蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005674
佐賀県遺産データベース(佐賀県):第2012-1号 矢野酒造
https://www.pref.saga.lg.jp/dynamic/isan/info/pub/Detail.aspx?c_id=90&id=131&wd=%E7%9F%A2%E9%87%8E
矢野酒造株式会社 公式サイト:会社概要
https://yanoshuzou.jp/?page_id=180

最終更新日: 2026.09.28