日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿とは

日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿は、滋賀県大津市坂本本町の八王子山山上に建つ安土桃山時代の社殿2棟で、明治40年(1907年)に本殿が重要文化財に指定され、拝殿は昭和58年(1983年)に追加指定された。造立はいずれも文禄4年(1595年)である。

牛尾神社は山王七社のひとつで、牛尾宮とも呼ばれる。祭神は大山咋神荒魂。東本宮に祀られる大山咋神の荒々しい側面を、山上に別に祀ったものである。日吉大社では東本宮と樹下宮を里宮、牛尾神社と三宮神社を奥宮と位置づけている。

八王子山は牛尾山とも呼ばれ、標高およそ380メートル。日吉大社の信仰はこの山を神体山とするところから始まった。山頂近くには金大巌と呼ばれる巨岩があり、その両脇に牛尾神社と三宮神社が向かい合うように建つ。日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿は、社殿より先に岩と山があった場所に、後から建てられた建築である。

崖にせり出す懸造の拝殿

文化庁の国指定文化財等データベースは、拝殿の構造を「懸造、桁行5間、梁間5間、一重、正面入母屋造、背面本殿に接続、側面軒唐破風付、檜皮葺」と記録している。この一行に、この建物のすべてが書かれている。

懸造は、傾斜地に長い束柱を組んで床を張り出す工法である。平地なら基礎で済むところを、山では柱の長さで解決する。日吉大社摂社牛尾神社拝殿は5間四方という規模を、崖の上に持ち出して支えている。大津市の文化財解説も、崖上にせり出して建っている点をこの社殿の特徴に挙げる。

もうひとつの特徴は、拝殿と本殿の関係にある。文化庁の記述にある「背面本殿に接続」が示すとおり、拝殿の背面が本殿と直接つながっている。大津市はこれを、拝殿が後ろの本殿を取り込むような形と表現する。里の社殿では拝殿と本殿が別棟として前後に並ぶのに対し、山上では2棟が一体化している。狭い平場しかない場所で、2つの機能をどう納めるかという問題への答えである。

本殿は三間社流造、檜皮葺。里の摂社と同じ形式だが、拝殿に囲まれているため正面から全体を見ることはできない。側面の軒唐破風は、拝殿の横に回ったときに目に入る。

登拝という前提

日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿を間近に見るには、山を登るしかない。日吉大社の案内によれば、境内の登山口から奥宮までは約1キロメートル、徒歩で片道およそ30分である。石段があるのは最初と最後だけで、途中は急な山道が続く。車で行くことはできない。

登山口は西本宮エリアと東本宮エリアのあいだにある。その両脇に建つのが牛尾宮と三宮宮の遥拝所で、山に登らない参拝者はここから山上を拝む。山頂へ続く参道は猿の馬場と呼ばれている。

登り着くと、まず金大巌が目に入る。その右手に建つのが牛尾神社である。懸造の床が斜面から突き出しているのは、下から見上げたときにいちばんよく分かる。振り返れば琵琶湖が広がるが、社殿を見るために来たのなら、床下の柱組みを追うほうが得るものは多い。

この場所は年に一度、祭りの起点になる。山王祭では3月上旬に神輿が奥宮へ上げられ、4月12日の午の神事で、松明の火だけを頼りに急坂を担ぎ降ろされる。

見学方法とアクセス

日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿の見学に、社殿単独の拝観料はかからない。日吉大社の入苑協賛料(大人500円、中高生300円、小学生以下無料、30名以上の団体は1名450円)を納めて境内に入り、登山口から歩く。社殿の内部は非公開で、外からの見学となる。撮影の制限はない。

装備は必要である。日吉大社は登山靴やスニーカーを履くよう案内している。片道30分の山道で、途中に自動販売機はない。飲み物は麓で用意しておきたい。日没が早い時期や雨天のあとは足元が悪くなるため、時間に余裕をもって登りたい。

境内の参拝時間は午前9時から午後4時、開門は4月から9月が午前6時から午後4時、10月から3月が午前7時から午後4時である。往復1時間の行程になるので、午後遅い時間からの登拝は避けたほうがよい。

麓までのアクセスは、京阪石山坂本線の坂本比叡山口駅から徒歩約10分、JR湖西線の比叡山坂本駅から徒歩約20分。乗用車の駐車場は約50台分で無料だが、11月は有料になる。

Q&A

Q日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿へはどうやって行くのですか。
A日吉大社境内にある登山口から八王子山を登ります。約1キロメートル、徒歩で片道およそ30分です。石段は最初と最後だけで、途中は急な山道が続きます。車では行けません。
Q日吉大社摂社牛尾神社拝殿の懸造とはどういう構造ですか。
A傾斜地に長い束柱を組み、床を斜面から張り出す工法です。桁行5間・梁間5間の拝殿を崖の上にせり出して支えています。拝殿の背面は本殿に接続しており、2棟が一体になっています。
Q日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿はいつ建てられ、いつ指定されたのですか。
A本殿・拝殿とも文禄4年(1595年)の造立です。重要文化財への指定は本殿が明治40年(1907年)、拝殿は昭和58年(1983年)の追加指定です。
Q山に登らずに日吉大社摂社牛尾神社を拝むことはできますか。
Aできます。登山口の両脇に牛尾宮と三宮宮の遥拝所が建っており、そこから山上を拝む形になります。社殿を間近に見たい場合は登拝が必要です。
Q日吉大社摂社牛尾神社の登拝に必要な装備と時間を教えてください。
A日吉大社は登山靴やスニーカーを推奨しています。往復でおよそ1時間かかり、途中に自動販売機はありません。境内の開門は4月から9月が午前6時、10月から3月が午前7時で、閉門は午後4時です。

基本データ

名称日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿
所在地滋賀県大津市坂本本町(日吉大社境内 八王子山山上)
指定区分重要文化財
指定年明治40年(1907年)重要文化財指定(本殿)、昭和58年(1983年)重要文化財追加指定(拝殿)
員数2棟
寸法本殿 3間社流造、拝殿 桁行5間・梁間5間
所有者日吉大社
公開状況外観を通年見学可能(入苑協賛料 大人500円)。登山口から徒歩片道約30分、内部は非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿 本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/1354
文化庁 国指定文化財等データベース 日吉大社摂社牛尾神社本殿及び拝殿 拝殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/1355
大津市 日吉大社 摂社牛尾神社 本殿及び拝殿
https://www.city.otsu.lg.jp/bz/a/03/15/60735.html
日吉大社 よくあるご質問
https://hiyoshitaisha.jp/faq/
日吉大社 神猿について
https://hiyoshitaisha.jp/masaru/
日吉大社 山王祭について
https://hiyoshitaisha.jp/event/sannou/

最終更新日: 2026.09.08

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