国立天文台太陽分光写真儀室とは
国立天文台太陽分光写真儀室は、東京都三鷹市大沢にある昭和5年(1930年)建設の観測用建物で、平成10年(1998年)に国の登録有形文化財となった。塔の形をしており、アインシュタイン塔の通称で知られる。
この建物は、塔そのものが望遠鏡の筒である。頂部のドームに入った光を直径60センチメートルのシーロスタット、すなわち2枚の平面鏡で受けて垂直に落とし、北側へ続く半地下の大暗室で分光する。焦点距離は22メートルに及ぶ。
設計は東京帝国大学営繕課、施工は中村工務所。文化庁のデータベースは鉄筋コンクリート造平屋建、建築面積331平方メートルと記録する。国立天文台の公開資料では地上5階地下1階、塔の高さは約20メートルとされ、両者の記述は一致していない。半地下の分光器室は大正15年(1926年)に、塔の部分は昭和5年(1930年)に完成した。
登録の理由と価値
登録基準は「再現することが容易でないもの」で、登録番号は13-0010。平成10年(1998年)7月23日の登録で、国立天文台三鷹キャンパスの10件のなかで最も早く登録有形文化財となった。
アインシュタインの一般相対性理論が予言した太陽光のスペクトル線の変位を確かめることが、建設の主な目的だった。ドイツのポツダム天体物理観測所に建てられた塔望遠鏡と同じ狙いで計画されたことから、国立天文台太陽分光写真儀室もアインシュタイン塔と呼ばれる。
建物と光学系が不可分である点が、再現の難しさに直結する。塔の内部では機械室が建物本体から縁を切られたまま上部までつながっており、その周囲を階段と準備室が取り巻く。振動を伝えない筒をコンクリートで組み上げた構造で、外形だけを写しても意味をなさない。
光学系は昭和32年(1957年)に現在の形へ改められ、口径48センチメートルのカセグレン式反射望遠鏡を用いる構成となった。研究観測は昭和43年(1968年)に終えている。
見どころ
外壁は茶色のスクラッチタイルで覆われている。焼きむらで生じた色の差をわざと混ぜて貼っており、近づくと1枚ごとに色調が違う。
全体は直線的な四角の積み重ねだが、入口、庇、屋上のバルコニーには曲線が使われている。硬い塊のなかにその3か所だけ柔らかい線が入る。
頂部のドームは直径約5メートル。地上から見上げると小さく見えるが、この下で受けた光が塔の内部を20メートル落ちていくことになる。
国立天文台太陽分光写真儀室の北側には、分光器を収めた半地下部分が低く伸びる。塔と地面すれすれの建物が一続きであることを確かめると、この建物が1本の望遠鏡だという説明が腑に落ちる。
見学のしかた
国立天文台太陽分光写真儀室の通常の見学は外観のみで、内部は公開されていない。塔の四面を回りながら、スクラッチタイルの色調と曲線の使い方を見ていくことになる。音声ガイドが用意されている。
平成12年(2000年)に外観の一般公開が始まり、平成22年(2010年)からは案内付きで内部を見学できる機会も設けられている。内部見学は常時ではないので、実施の有無は訪問前に確認してほしい。
撮影は見学コース内であれば私的利用に限り自由。公開時間・受付・バスでの行き方は構内で共通なので、国立天文台三鷹キャンパスのページを参照してほしい。
よくある質問
- 国立天文台太陽分光写真儀室はなぜアインシュタイン塔と呼ばれるのですか?
- アインシュタインの相対性理論の検証を主目的に建てられ、ドイツのポツダム天体物理観測所にある同じ目的の塔望遠鏡にならった建物だからです。
- 国立天文台太陽分光写真儀室の内部は見学できますか?
- 通常の公開は外観のみです。平成22年(2010年)以降、案内付きで内部を見学できる機会が設けられていますが、常時ではありません。
- 国立天文台太陽分光写真儀室はどういう仕組みの望遠鏡ですか?
- 頂部の直径60センチメートルのシーロスタットで太陽光を垂直に取り込み、塔の中を落として北側の半地下の暗室で分光します。塔全体が鏡筒にあたります。
- 国立天文台太陽分光写真儀室はいつ建てられましたか?
- 半地下の分光器室が大正15年(1926年)、塔の部分が昭和5年(1930年)の完成です。平成10年(1998年)に登録有形文化財となりました。
- 国立天文台太陽分光写真儀室はいまも観測に使われていますか?
- 研究観測は昭和43年(1968年)に終了しています。現在は登録有形文化財として保存されています。
基本データ
| 名称 | 国立天文台太陽分光写真儀室 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都三鷹市大沢2-21-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成10年(1998年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造平屋建、建築面積331平方メートル、塔の高さ約20メートル |
| 所有者 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構 |
| 公開状況 | 外観のみ見学可(内部は通常非公開) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 国立天文台太陽分光写真儀室
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000565
- 国立天文台 太陽塔望遠鏡
- https://www.nao.ac.jp/about-naoj/organization/facilities/mitaka/visit-facilities/solar-tower-telescope.html
- 国立天文台 三鷹キャンパス 見学のご案内
- https://www.nao.ac.jp/about-naoj/organization/facilities/mitaka/visit.html
最終更新日: 2026.09.13