東京女子大学7号館(西校舎) ―― キャンパスを開いたE字型平面

大正13年(1924年)、東京女子大学は新宿から善福寺の雑木林の一角へ移転した。7号館は、その移転を迎え入れた建物のひとつである。それから百年後の2024年、大学はこの建物が内に抱える講堂で竣工100周年の特別講義を開いた。

まず把握しておきたいのは平面のかたちだ。7号館はE字型の平面をとる。背骨にあたる棟から三本の翼が突き出し、玄関の奥ではEの中央の一画が外へ膨らんで講堂を収める。つまり教室棟と講堂は一続きの構造体であって、箱に部屋を後付けしたものではない。

構造は鉄筋コンクリート造2階建、瓦葺。登録上の建築面積は806平方メートル。コンクリート躯体に和瓦の屋根という組み合わせは創立期のキャンパス全体に繰り返され、この建物群にまとまりを与えている要素のひとつになっている。近代的な構造に、見慣れた覆い。

7号館は中庭を挟んで東を向き、対となる6号館と向き合う。両者は、現在VERA広場と呼ばれる開けた場所を左右から挟むように構想され、その奥で本館が軸線を締めくくる。

7号館は今も教室棟として動いている。学生が毎日通り抜けていく建物であることは、眺めるときに覚えておきたい。保存された外殻ではない。

登録の理由と価値

7号館は登録有形文化財(建造物)である。登録年月日は平成10年(1998年)9月2日、告示は同月25日、第11回登録。登録番号は13-0030。

平成8年(1996年)に始まった登録制度は、国宝や重要文化財を生む指定制度より軽い枠組みとして設けられた。近代建築のストックが、指定の手続きが追いつく速度を超えて失われていったことが背景にある。登録では、外観を大きく変える際に所有者が届出を行う。建物は使われ続け、所有者の手元に残る。このキャンパスでは7棟が登録されており、7棟すべてが大学にとって必要な役目を今も担っている。

適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の解説文は、7号館を本館の左手前に位置づけ、E字型平面と玄関奥に張り出す講堂に触れたうえで、注目に値する比較を行っている。中庭を挟んだ6号館と外観は同様だが、教室窓は6号館よりも大きく、スチールサッシを3連ではなく5連にはめる。そして中央部の意匠は、ライト調がより濃厚である、と。

この最後の指摘は、アントニン・レーモンドの歩みのなかでこの建物が置かれた位置を正確に示している。レーモンドは大正8年(1919年)、帝国ホテル建設のためのフランク・ロイド・ライトの助手として来日し、まもなく独立した。大正10年にこのキャンパスの計画を委ねられた時期、彼はライトの影響から抜け出たのではなく、その只中を通り抜けている最中だった。関東大震災が工程を大きく組み替える前の大正13年に竣工した7号館は、その軌跡の早い段階に立つ。

本建物は、平成4年度のBELCA賞(ロングライフ・ビルディング部門)の対象にも含まれている。

見どころ

6号館と7号館のあいだの中庭に立ち、二つの窓壁を見比べてみてほしい。このキャンパスで最も学ぶところの多い五分間になる。7号館側の開口はスチールサッシ5連の組で走り、幅が広くのびやかな比例をもつ。向かいの6号館は3連で窓をまとめる。同じ設計者、同じ素材、ほぼ同じ時期、それでいてリズムがはっきり違う。

中央の玄関部へ移動する。文化庁の解説文自身がここを建物のなかで最もライト調が濃い箇所として挙げており、そのつもりで見ると語彙が読み取れる。強調された水平線、壁面に影を落とす深い軒、そして低く幾何学的に抑えられた装飾。浮き彫りのように貼り付けたものではない。この図面が引かれていたころ、日比谷ではライトの帝国ホテルが立ち上がりつつあった。

それから屋根を見上げること。1920年代に鉄筋コンクリート躯体へ瓦を葺くのは自明の選択ではなかった。それをキャンパス全体で通したことが、性格の異なる7棟を一つの構図にまとめている。中庭から見たとき、目が連続性として読み取っているのは瓦の傾斜面である。

玄関奥の講堂は大学の行事や公開講座に使われる。2024年のレーモンド建築思想をめぐる100周年記念講義もここで行われ、後半にはキャンパス内の各建造物を歩いて見て回る時間が設けられた。内部に入る機会を求めるなら、この形式を狙うのが現実的である。大学の行事案内が確実な入口になる。

一般の見学に予約は要らない。当日、正門で入構者情報を登録する。外部からの通行は正門のみ、来訪者用の駐車場はないので、公共交通での来訪が前提となる。JR中央・総武線西荻窪駅北口から徒歩約12分、吉祥寺駅・上石神井駅からのバスは「東京女子大前」下車。

Q&A

Q7号館は今も使われていますか。
Aはい。現役の教室棟として使用され、内部の講堂も大学行事に使われています。登録有形文化財という枠組みは、こうした使用の継続を可能にするために設けられたものです。
Q6号館との違いはどこですか。
A中庭を挟んで向かい合い外観の性格は共通しますが、7号館はE字型平面で玄関奥に講堂が張り出し、教室窓はスチールサッシ5連と大きく、中央部にライト由来の意匠がより濃く現れます。
Q内部を見学できますか。
A授業が行われているため、通常のキャンパス見学に内部立ち入りは含まれません。公開講座や大学行事の際に開かれることがあるので、大学の行事案内を確認するのが実際的です。
Qコンクリート造なのに、なぜ瓦屋根なのですか。
Aこの組み合わせはレーモンドの創立期の建物に共通し、キャンパスの視覚的な統一を生んでいます。鉄筋コンクリート躯体に和瓦という取り合わせは妥協ではなく意識的な選択で、竣工年の異なる建物群を一つのまとまりとして見せています。
Q正確な竣工年はいつですか。
A国の登録では大正13年(1924年)とされ、大学側の記載も一致しています。2024年に竣工100周年が記念されました。善福寺キャンパスに現存する最初期の建物のひとつです。

基本データ

名称東京女子大学7号館(西校舎)(とうきょうじょしだいがくななごうかん)
所在地東京都杉並区善福寺2-6-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録番号13-0030
登録年月日平成10年(1998年)9月2日(告示 同年9月25日/第11回登録)
登録基準造形の規範となっているもの
員数1棟
年代大正13年(1924年)
構造及び形式等鉄筋コンクリート造2階建、瓦葺
建築面積806平方メートル
平面E字型平面、玄関奥に講堂を張り出す
設計アントニン・レーモンド(1888-1976)
種別学校/建築物
所有者学校法人東京女子大学
現在の用途教室棟
アクセスJR中央・総武線西荻窪駅北口から徒歩約12分
公開状況一般見学時に外観を見学可(予約不要、正門で入構者情報の登録)。内部は大学行事等に限られる。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):東京女子大学7号館(西校舎)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000649
東京女子大学:キャンパス紹介
https://www.twcu.ac.jp/main/about/campus/index.html
東京女子大学:「東京女子大学の建築群に見るA・レーモンドの建築思想」7号館・外国人教師館 竣工100周年特別講義(2024年)
https://www.twcu.ac.jp/main/event/2024/1102_01.html
東京女子大学:アクセス
https://www.twcu.ac.jp/main/access/index.html
すぎなみ学倶楽部(杉並区公式情報サイト):東京女子大学
https://www.suginamigaku.org/2023/10/tokyowc-u.html

最終更新日: 2026.07.22