旧大洲街道に東面する大型町家

宮内家住宅主屋は、愛媛県伊予市灘町にある江戸時代中期の町家で、平成30年(2018年)5月10日に登録有形文化財に登録された。旧大洲街道に東面して建ち、間口は10間半、およそ19メートル。建築面積は255平方メートルある。文化庁の国指定文化財等データベースは建築年代を江戸中期(1661年から1751年の間)とし、伊予市は元文3年(1738年)の当初建築と説明している。

この家がここに構えられた経緯は、寛永13年(1636年)の御替地までさかのぼる。松山藩と大洲藩のあいだで領地が入れ替わったのを機に、上灘村の宮内九右衛門と清兵衛の兄弟が大洲藩主加藤泰興に海岸の開発を願い出て、米湊村の浜に新しい町を開いた。今の伊予市郡中地区の始まりである。

宮内家は町名「灘町」と屋号「灘屋」を許され、町年寄を務めながら酒造と大洲和紙の取引を営んだ。伊予市の観光案内によれば、文化5年(1808年)には日本全図の測量にあたっていた伊能忠敬の測量隊がこの家を本陣として使っている。かつては敷地およそ1000坪、約3300平方メートルに及び、藩主や幕府巡見使を迎えるための御成門も構えていた。

登録の理由と価値

宮内家住宅主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。愛媛県教育委員会は、この主屋を県内でも最古級の町家と位置づけ、本瓦葺の近世町家として貴重だとしている。灘町という町そのものが宮内家の手で開かれた以上、街道に面したこの一棟は町割りの起点にあたる建物でもある。

屋根は本瓦葺。大屋根には千鳥破風が構えられ、妻側には卯建が上がり、鬼板が据えられている。町家としては格の高い構えで、通りを歩くと造作の密度が周囲と違うことにすぐ気づく。

平成28年(2016年)に改修が行われ、翌平成29年(2017年)4月1日には景観法にもとづく伊予市の景観重要建造物として、第1号の指定を受けた。国の登録はその翌年である。

見どころ

通りから最初に目に入るのは、間口いっぱいに広がるつし二階の壁面だ。一階は出格子を並べ、腰まわりを簓子下見板張とする。二階部分は出桁造の軒まで白く塗り籠め、そこに横長の格子窓を穿つ。虫籠窓と呼ばれるこの開口は、外から見ると細い切れ込みにしか見えない。

屋根の形も見ておきたい。大屋根に対して直交する屋根が架かり、正面からは千鳥破風のように立ち上がって見える。一階の前面には下屋が差し掛かるため、軒の線が二段になって奥行きが生まれる。瓦には宮内家の家紋が入る。

内部は北側を土間、南側を三列構成とし、上手の列を座敷とする。書院造の座敷は伊能忠敬測量隊を迎えた当時の姿を残すとされ、現在は「伊能の間」として開放されている。波打つ海から鶴が飛び立つ彫刻欄間と、16の家紋を組んだ格子の欄間が入る。

座敷に掛かる「郡中市陌浜辺図」の複製も見逃せない。安政元年(1854年)11月の地震で建物が大きく傷み、修繕したものの以前の景観とは変わってしまったため、地震前の町並みを描き残したのだという由来が、巻頭の漢文に記されている。原本は伊予市立図書館が収蔵する。この図からは、灘町の地割りが間口4間半から6間、およそ8メートルから11メートルに対し、奥行きは最長60間、およそ109メートルという細長い短冊形だったことも読み取れる。

見学方法

宮内家住宅主屋は改修を経て、まちの縁側「ミュゼ灘屋」として使われている。多目的スペース、伊能の間(東・西)、土間を時間帯ごとに貸し出す仕組みで、利用は事前予約制。時間帯は午前8時から午後1時、午後1時から午後6時、午後6時から午後11時の三区分に分かれる。市内住民や文化協会サークルの活動は1区分500円、有料の催しは1区分1000円で、冷暖房を使う場合は500円が加算される。問い合わせは専用電話080-2981-6281。

宮内家住宅主屋の敷地では現在も生活が営まれており、立ち入れるのは主屋に限られる。奥の隠居所・古隠居・潮見堀の側へは入れない。外観は旧大洲街道の路上から自由に見ることができる。

撮影の可否は利用目的によって扱いが変わるため、予約の際に運営者へ確かめておきたい。使用料は宮内家住宅の改修と維持に充てられている。

最寄り駅はJR予讃線の伊予市駅と伊予鉄道郡中線の郡中港駅で、どちらからも徒歩約3分。駐車場は建物裏の専用駐車場と栄養寺の駐車場を合わせて15台分あり、無料で利用できる。

Q&A

Q宮内家住宅主屋は見学できますか。予約は必要ですか。
A主屋はまちの縁側「ミュゼ灘屋」として使われており、事前予約制で利用できます。予約なしでの立ち入りはできませんが、外観は旧大洲街道の路上からいつでも見られます。
Q宮内家住宅主屋の利用時間と料金はどうなっていますか。
A午前8時から午後1時、午後1時から午後6時、午後6時から午後11時の三区分で貸し出されます。市内住民や文化協会サークルの活動は1区分500円、有料の催しは1区分1000円、冷暖房の使用で500円加算です。
Q宮内家住宅主屋はいつ建てられたのですか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは江戸中期、1661年から1751年の間としています。伊予市は元文3年(1738年)の当初建築と説明しており、平成28年(2016年)に改修されました。
Q宮内家住宅主屋へのアクセスと駐車場を教えてください。
AJR予讃線の伊予市駅、伊予鉄道郡中線の郡中港駅から、いずれも徒歩約3分です。建物裏の専用駐車場と栄養寺の駐車場を合わせて15台分が無料で利用できます。
Q宮内家住宅主屋の敷地内にある他の建物も見られますか。
A見られません。敷地内には同じ日に登録された隠居所・古隠居・潮見堀がありますが、現在も居住されているため、主屋以外への立ち入りは遠慮するよう求められています。

基本情報

名称宮内家住宅主屋(みやうちけじゅうたくしゅおく)
所在地愛媛県伊予市灘町123
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号38-122
指定年平成30年(2018年)5月10日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積255平方メートル。間口10間半(約19メートル)
所有者個人
公開状況まちの縁側「ミュゼ灘屋」として事前予約制で利用可能。外観は路上から見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「宮内家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012451
文化遺産オンライン「宮内家住宅主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/577395
愛媛県 えひめの文化財(たから)「宮内家住宅主屋ほか3件」
https://www.pref.ehime.jp/ehimenotakara/702.html
伊予市「景観重要建造物」
https://www.city.iyo.lg.jp/toshijyutaku/keikanjuuyoukennzoubutsu.html
伊予市観光公式Webサイト「まちの縁側『ミュゼ灘屋』(旧宮内邸)」
https://iyokankou.jp/spot/spot-438/

最終更新日: 2026.09.05