一本の隧道に、大正と昭和が継がれている
わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルは、群馬県みどり市大間々町下神梅にある大正元年(1912年)竣工の鉄道隧道で、平成21年(2009年)に登録有形文化財となった。当初の坑道は延長45メートル。覆工の全体を煉瓦積とし、煉瓦は4枚厚、坑門だけを石積で構える。断面は馬蹄形で、坑内は全体が緩やかに湾曲している。
そこへ昭和12年(1937年)、南側に鉄筋コンクリート造の構造物が15メートル継ぎ足された。柱と梁で組むラーメン構造の箱形で、煉瓦の坑道とは造りも表情もまるで違う。みどり市の調査によれば、当初部が44.81メートル、増設部が15.4メートル、合わせて60.21メートルになる。増設部の躯体には建設年と請負業者名が陰刻されており、コンクリートに彫り込まれた文字がそのまま竣工の記録として残っている。
昭和49年(1974年)には、保線作業員が列車をやり過ごすための待避所が1か所設けられた。
「七曲がり」を抜けるために掘られた三本のうちの一本
大間々町桐原から下神梅にかけての区間は、渡良瀬川に削られた急崖が線路際まで迫る。旧銅山街道でもこのあたりは「七曲がり」と呼ばれる難所で、足尾鉄道はここを三本の隧道で抜けた。第一・第二・第三神梅トンネルがそれである。わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルは三本のうち最も上流側にあたり、第二神梅トンネルとの間隔はわずか約90メートル、北へ約3,100メートル進めば深沢橋梁に出る。
登録は平成21年(2009年)11月2日、告示は同月19日。このとき桐生から間藤までの鉄道施設が一括して登録有形文化財となり、駅舎・橋梁・トンネルなど全38施設が対象となった。全線にわたる鉄道施設が2県にまたがって登録された例は、わたらせ渓谷鐵道が全国で初めてである。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。平成28年(2016年)には、この施設群が土木学会選奨土木遺産にも認定された。
暗がりの質が変わる15メートル
わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルの見どころは、通り抜ける数秒のあいだに壁の性格が入れ替わることにある。煉瓦の坑道は継ぎ目が細かく、光の当たり方で焼きむらの濃淡が出る。増設されたコンクリートの区間は面が平らで継ぎ目がなく、同じ暗さでも反射の仕方が違う。境目に気づけたら、そこが大正元年(1912年)と昭和12年(1937年)の接点である。
上神梅駅から桐生方面へ向かう上り列車では、発車から約2分半で坑口が見えはじめる。第三神梅トンネルを抜けてから第一神梅トンネルと手振山架樋を通過するまでは約1分。三本の隧道と一基の架樋が短い間隔で続くこの区間は、渓谷に入ってゆく感覚がもっとも強く出るところだ。
見学方法
わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルは現役の単線区間にあり、軌道敷への立ち入りも徒歩通行もできない。見学は列車の車窓からに限られる。大間々駅と上神梅駅のあいだを走る普通列車のほか、3月から11月を中心に運行される「トロッコわたらせ渓谷号」「トロッコわっしー号」からも見られる。トロッコ列車には乗車券のほかトロッコ整理券が必要で、料金は2026年9月1日から大人700円、小児350円。座席は事前予約が確実である。
乗り降りを繰り返すなら一日フリーきっぷ(大人1,880円、小児940円)が使いやすい。桐生から間藤までの全長44.1キロメートルを、片道およそ1時間半で走る。撮影については、車内からの撮影に制限はないが、鉄道軌道敷内および列車の無人航空機による空撮は全面的に禁止されている。運行日と時刻は公式サイトで確認できる(料金・運行日は2026年9月13日時点)。
Q&A
- わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルの長さはどれくらいですか。
- 文化庁データベースは延長45メートルとします。昭和12年(1937年)に増設された鉄筋コンクリート部分15メートルを含めると、全体で約60メートルになります。
- わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルはいつ造られましたか。
- 大正元年(1912年)の竣工です。昭和12年(1937年)に南側へ鉄筋コンクリート造が増設され、昭和49年(1974年)には待避所が設けられました。
- わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルの中に入れますか。
- 入れません。現役の鉄道隧道で歩行者は立ち入れず、見学はわたらせ渓谷線の車窓からになります。
- わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルはどの区間で見えますか。
- 大間々駅と上神梅駅のあいだです。上神梅駅から桐生方面の列車に乗ると、約2分半で坑口が見えはじめます。
- 神梅のトンネルはほかにもありますか。わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネルとの位置関係は。
- 第一・第二の二本があります。第三神梅トンネルは最も上流側で、第二神梅トンネルまで約90メートル、そこからさらに約240メートル先が第一神梅トンネルです。
基本情報
| 名称 | わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネル |
|---|---|
| 所在地 | 群馬県みどり市大間々町下神梅 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成21年(2009年)登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 延長45メートル、増設部を含む全長約60メートル |
| 所有者 | 文化庁データベースに記載なし。路線はわたらせ渓谷鐵道株式会社が運行 |
| 公開状況 | 非公開。立ち入り不可、車窓から見学可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/わたらせ渓谷鐵道第三神梅トンネル
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007870
- みどり市/第2神梅トンネル・第3神梅トンネル
- https://www.city.midori.gunma.jp/kosodate/1001647/1001800/1002430/1002485.html
- わたらせ渓谷鐵道株式会社/歴史・文化的魅力
- https://www.watetsu.com/sightseeing/culture.php
- わたらせ渓谷鐵道株式会社/登録有形文化財パンフレット「車窓の旅 鉄道文化財めぐり」
- https://www.watetsu.com/assets/pdf/sightseeing/culture_yukei_des01.pdf
- わたらせ渓谷鐵道株式会社/トロッコわたらせ渓谷号
- https://www.watetsu.com/train/torokei.php
最終更新日: 2026.09.13