尾道水道を見下ろす中世の伽藍

浄土寺は、広島県尾道市東久保町にある真言宗泉涌寺派の大本山で、推古天皇24年(616年)に聖徳太子が開いたと伝わり、いま境内に立つ中心の堂塔は正中2年(1325年)の火災のあと、嘉暦2年(1327年)から再建されたものである。山号は転法輪山。境内には国宝2件と重要文化財6件の建造物が集まる。尾道水道から港へ入る船から真っ先に見える位置にあり、背後の浄土寺山と一体になって尾道の町の景観をつくっている。

寺の縁起によると、鎌倉時代の終わりに西大寺の僧・定証が立ち寄ったとき、浄土寺には堂塔を守る人さえいなかった。定証は尾道浦の有力者・光阿弥陀仏らの支援を受け、嘉元元年(1303年)から嘉元4年(1306年)にかけて伽藍を整える。その20年後、正中2年の火災で諸堂はことごとく焼けた。

再建を担ったのは尾道の町の人々である。沙弥道蓮と比丘尼道性の夫妻が発願し、嘉暦2年に金堂(現在の本堂)、元徳元年(1329年)に多宝塔、貞和元年(1345年)に当時の本堂(現在の阿弥陀堂)が完成した。浄土寺はその後大きな災禍に遭わず、この3棟がそろって今に残る。

建武3年(1336年)、九州へ下る足利尊氏が船を寄せて戦勝を祈ったことでも知られる。江戸時代になると支えの中心は尾道の豪商に移り、方丈や庫裏、客殿の再建、茶室露滴庵の移築が町衆の寄進で進んだ。

浄土寺の境内を歩く順序

浄土寺の正面は南で、表門にあたる山門から境内に入る。山門の正面、北の奥に本堂が建ち、その東隣に阿弥陀堂、さらに東へ多宝塔が並ぶ。中世の3棟が東西に一列に並ぶこの眺めが、浄土寺の境内でいちばん古い景観にあたる。

多宝塔の先、境内の東端には弘安元年(1278年)銘の納経塔と、貞和4年(1348年)銘の宝篋印塔が並ぶ。多宝塔の南寄りには、「足利尊氏の墓」と呼ばれてきたもう1基の宝篋印塔が立つ。

本堂の西側は江戸時代の建物の領域である。唐門の奥に庫裏及び客殿、その北に方丈があり、方丈と庫裏に囲まれた北西の一角に庭園が開ける。庭園の築山の上に茶室露滴庵があり、宝庫は北西、長屋門の裏門は南西の隅に建つ。方丈・唐門・庫裏及び客殿・宝庫・裏門・露滴庵の6棟は、「浄土寺」の名で一括して重要文化財に指定されている。

平成6年(1994年)には、本堂を中心とする境内地が本堂とあわせて国宝に指定された。建物だけでなく、中世から近世にかけての伽藍の配置そのものが評価の対象になっている。

浄土寺の文化財の内訳

国宝は本堂(嘉暦2年、1327年)と多宝塔(元徳元年、1329年)の2件で、いずれも昭和28年(1953年)3月31日に国宝となった。重要文化財の建造物は、阿弥陀堂、山門、納経塔、宝篋印塔2基、そして方丈以下6棟からなる「浄土寺」の6件である。

年代の幅は広い。最も古いのは弘安元年(1278年)の納経塔で、定証による再興よりも前に立てられている。最も新しいのは18世紀後期の裏門で、両者のあいだにおよそ500年の開きがある。

建造物のほか、本尊の木造十一面観音立像をはじめ、仏像・絵画・古文書の多くが国や県の指定を受けている。秘仏以外の多くは宝物館や各堂で公開されている。

浄土寺へのアクセスと拝観

浄土寺へは、JR尾道駅から徒歩で約25分、路線バスで約10分、タクシーで約5分(1,000円程度)かかる。新幹線の新尾道駅からはタクシーで約15分(1,300円程度)。車の場合は山陽自動車道の尾道ICまたは福山ICから約30分で、境内に乗用車約15台分の無料駐車場がある。大型バスは国道2号沿いの浄土寺下交差点付近に2台分の駐車場があり、利用する際は事前に寺への電話連絡が要る。

境内を歩いて建物の外観を見るのは自由である。料金がかかるのは建物内部と庭園の拝観で、2つのコースがある。

  • 通常拝観は受付が午前9時から午後4時まで、大人300円、中学生以下150円。庫裏、客殿、方丈、庭園と本堂の脇陣を、案内なしで見て回る。
  • 特別拝観は受付が午前9時から午後3時30分まで、大人800円、中学生以下400円。通常拝観の範囲に本堂内陣と阿弥陀堂内陣が加わり、一部は係の人が案内する。

法要やお茶会、修理のために拝観できない日がある。10名以上の団体は事前の予約が必要で、問い合わせ先は浄土寺(0848-37-2361)。茶室露滴庵は通常は公開されておらず、令和7年(2025年)春のように期間を限って事前申込制で公開されることがある。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺本堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3125
文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺多宝塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3124
文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺(方丈)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3130
文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺納経塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3127
広島県教育委員会 広島県の文化財(尾道市)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/655404.pdf
日本遺産ポータルサイト 浄土寺本堂及び境内地、多宝塔など
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/1256/
大本山 浄土寺 浄土寺の縁起
https://ermjp.com/j/temple/histry/engi.htm
大本山 浄土寺 浄土寺の縁起(続き)
https://ermjp.com/j/temple/histry/engi2.htm
大本山 浄土寺 拝観のご案内
https://ermjp.com/j/temple/haikan/index.htm
大本山 浄土寺 交通アクセス
https://ermjp.com/j/temple/access/index.htm

最終更新日: 2026.09.27

基本情報

名称浄土寺
所在地広島県尾道市東久保町
所有者浄土寺
指定国宝 2件・重要文化財 6件
座標34.41186, 133.21080