もとは「本堂」として建てられた堂

浄土寺阿弥陀堂は、広島県尾道市東久保町の浄土寺境内に建つ南北朝時代の仏堂で、貞和元年(1345年)の建立とされ、大正2年(1913年)4月14日に重要文化財に指定された。

いまは阿弥陀如来を祀る堂だが、建てられた当時の役割は違う。文化庁の解説によれば、正中2年(1325年)の火災のあと浄土寺は再建を急ぎ、嘉暦2年(1327年)に金堂(観音堂)、元徳元年(1329年)に多宝塔を建て、貞和元年に「当時の本堂」を完成させた。その「当時の本堂」が浄土寺阿弥陀堂である。現在の本堂は、もとは金堂または観音堂と呼ばれた建物のほうになる。

貞和元年は、同じ年の秋に改元されるまで康永4年と呼ばれていた。広島県教育委員会の資料が「康永4年(貞和元)」と両方を記すのはそのためである。

再建の前にも堂はあった。広島県教育委員会の資料によると、弘安元年(1278年)の納経塔で供養された尾道の有力者・光阿弥陀仏は、定証が浄土寺を再興するより前に、現在の阿弥陀堂にあたる堂などの修造に力を注いでいる。浄土寺阿弥陀堂の建つ場所は、火災の前から信仰の拠点だったことになる。

浄土寺阿弥陀堂が重要文化財とされる理由

浄土寺阿弥陀堂は桁行五間、梁間四間、一重の寄棟造で、屋根は本瓦葺である。広島県教育委員会は、正面の本堂と多宝塔が再建されたあとに建てられた建物とみて、すぐれた和様建築と評価している。

同じ再建事業の3棟を比べると違いが見えてくる。本堂は入母屋造で、桟唐戸や花肘木など大陸伝来の部材を和様に混ぜた折衷様の建物である。浄土寺阿弥陀堂はそうした混用が目立たず、寄棟の大屋根を低く構えた落ち着いた外観をもつ。18年の差のうちに、町衆は様式の異なる2つの仏堂を並べたことになる。

本尊は木造阿弥陀如来坐像で、広島県の重要文化財である。定証が残した起請文(重要文化財)に記された像と推定され、脇侍の観音菩薩・勢至菩薩とともに内陣に安置されている。建物と本尊がともに14世紀の浄土寺再興の記録に結びつく点も、この堂の価値を支えている。

浄土寺阿弥陀堂の見どころ

まず屋根を見たい。浄土寺阿弥陀堂は本堂の東隣に建ち、正面から並べて見ると、入母屋の本堂と寄棟の阿弥陀堂の屋根の形の違いがよく分かる。山門から入って本堂の前に立ち、右手(東)を見ると、浄土寺阿弥陀堂の先に多宝塔が続く。

桁行五間に対して梁間四間と、奥行きが正面の幅に近い。側面にまわると、寄棟の屋根が四方へ均等に流れ下るのが確かめられる。本瓦の丸瓦の列がそろった屋根面は、朝の斜光が当たる時間にいちばん立体的に見える。

堂内では、中央の阿弥陀如来坐像と左右の観音・勢至の三尊がそろう。14世紀の再建の記録と結びつく像が、建てられた堂の中にいまも座っている。

浄土寺阿弥陀堂の見学方法

浄土寺阿弥陀堂の外観は、境内に入れば自由に見られる。料金はかからない。

内陣に入れるのは、浄土寺の「特別拝観」を申し込んだときだけである。受付は午前9時から午後3時30分まで、料金は大人800円、中学生以下400円で、一部は係の人が案内する。通常拝観(大人300円)には浄土寺阿弥陀堂の内部は含まれない。法要などで拝観できない日もあるので、内陣を目当てに訪ねるなら事前に寺へ確認しておくと確実である。

堂内の撮影の可否は寺の定めによるので、現地で確かめてほしい。境内への行き方と拝観の全体は浄土寺のページにまとめてある。

Q&A

Q浄土寺阿弥陀堂はいつ建てられましたか?
A貞和元年(1345年)の建立とされます。正中2年(1325年)の火災のあと、本堂(1327年)と多宝塔(1329年)に続いて完成しました。
Q浄土寺阿弥陀堂はもともと本堂だったのですか?
Aはい。文化庁の解説は、貞和元年に完成した「当時の本堂」がこの阿弥陀堂だと記しています。現在の本堂は、もとは金堂(観音堂)と呼ばれた建物です。
Q浄土寺阿弥陀堂の中は見られますか?料金はいくらですか?
A内陣は特別拝観(大人800円、中学生以下400円、受付は午前9時から午後3時30分)で見られます。通常拝観には含まれません。外観は無料で見られます。
Q浄土寺阿弥陀堂の本尊は何ですか?
A木造阿弥陀如来坐像(広島県重要文化財)で、観音菩薩・勢至菩薩の脇侍とともに内陣に安置されています。定証の起請文に記された像と推定されています。
Q浄土寺阿弥陀堂は本堂とどう違いますか?
A本堂は入母屋造の折衷様ですが、浄土寺阿弥陀堂は寄棟造、本瓦葺の和様建築です。2棟は隣り合っているので、屋根の形の違いを並べて見比べられます。

基本情報

名称浄土寺阿弥陀堂(じょうどじあみだどう)
所在地広島県尾道市東久保町
指定区分重要文化財(建造物)
指定年大正2年(1913年)4月14日
員数1棟
寸法桁行5間、梁間4間、一重、寄棟造、本瓦葺
所有者浄土寺
公開状況外観は境内で見学自由。内陣は特別拝観(有料)で公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺阿弥陀堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3126
文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺本堂(詳細解説)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3125
文化遺産オンライン 浄土寺阿弥陀堂
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/190963
広島県教育委員会 広島県の文化財(尾道市)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/655404.pdf
大本山 浄土寺 拝観のご案内
https://ermjp.com/j/temple/haikan/index.htm

最終更新日: 2026.09.27