貞和4年の銘をもつ浄土寺の宝篋印塔

浄土寺宝篋印塔は、広島県尾道市東久保町の浄土寺境内の東端に立つ南北朝時代の石造宝篋印塔で、貞和4年(1348年)10月1日の刻銘をもち、昭和28年(1953年)8月29日に重要文化財に指定された。

浄土寺には同じ名称で指定された宝篋印塔が2基ある。このページで扱うのは、年紀の刻銘をもつほうの1基である。文化庁のデータベースは「石造宝篋印塔、貞和四年戊子十月一日の刻銘がある」と記し、時代を室町前期とする。高さは広島県教育委員会の資料で3.2メートルあり、境内の石塔のなかでも大きい。

刻銘は、この塔が何のために立てられたかも伝えている。広島県教育委員会の解説によれば、浄土寺宝篋印塔は沙弥行円ら4人の逆修と、光孝らの追善のために建てられた。逆修は生前に自分の死後の供養を営んでおくこと、追善は亡くなった人の冥福を祈ることである。生きている人と亡くなった人の供養を1基にまとめた塔ということになる。造立の趣旨は、基礎の格狭間の中に刻まれている。

浄土寺宝篋印塔の価値と地方色

浄土寺宝篋印塔の姿は、下から順に見ると整理しやすい。見事な格狭間を刻んだ基礎の上を美しい反花とし、その上に金剛界四仏の種字を刻んだ塔身を据える。笠の四隅の突起(隅飾)には、八方を守る八方天が種字で表されている。

広島県教育委員会がとくに注目するのは、基礎と塔身のあいだに受台を入れている点である。これは伊予(現在の愛媛県)や備後南部の宝篋印塔に見られる地方的な特色とされる。尾道は備後の南端にあり、瀬戸内海をはさんで伊予と向き合う。浄土寺宝篋印塔は、瀬戸内海をはさんだ両岸に共通する形を備えた1基ということになる。

年紀がはっきりしていることも重要である。貞和4年は、浄土寺阿弥陀堂が完成した貞和元年(1345年)の3年後にあたる。再建がひと区切りついた直後の境内に、尾道の人々がこの浄土寺宝篋印塔を立てたことになる。

浄土寺宝篋印塔の見どころ

浄土寺宝篋印塔は、弘安元年(1278年)銘の納経塔と並んで境内の東端に立つ。70年のへだたりがある2基の石塔を、同じ場所で見比べられるのがこの場所の面白さである。

正面に立ったら、まず基礎の格狭間を探したい。造立の趣旨を刻んだ部分で、彫りの深さは光の向きで見え方が変わる。次に視線を上げ、基礎と塔身のあいだに挟まる受台を確かめる。ここが伊予・備後南部の特色とされる部分で、受台のない一般的な宝篋印塔と比べると、塔身が一段持ち上げられたような印象になる。

最後に笠の隅飾を見る。四隅に立ち上がる突起に、八方天の種字が彫られている。

浄土寺宝篋印塔の見学方法

浄土寺宝篋印塔は屋外にあり、境内に入れる時間であれば自由に見学できる。料金はかからない。

刻銘や種字は風化しやすいので、石に触れず、少し離れた位置から観察したい。境内にはもう1基、「足利尊氏の墓」と呼ばれてきた浄土寺宝篋印塔が南側にある。境内への行き方と拝観の全体は浄土寺のページにまとめてある。

Q&A

Q浄土寺宝篋印塔(貞和4年銘)はいつ造られましたか?
A貞和4年(1348年)10月1日の刻銘があります。南北朝時代の作です。
Q浄土寺宝篋印塔は何のために建てられたのですか?
A広島県教育委員会によると、沙弥行円ら4人の逆修(生前の自分のための供養)と、光孝らの追善のために建てられました。
Q浄土寺宝篋印塔の地方的な特徴は何ですか?
A基礎と塔身のあいだに受台を入れている点です。伊予や備後南部の宝篋印塔に見られる特色とされています。
Q浄土寺には宝篋印塔が2基あるのですか?
Aはい。境内東端の貞和4年銘の塔と、南側にある「足利尊氏の墓」と呼ばれてきた塔の2基で、それぞれ別に重要文化財に指定されています。
Q浄土寺宝篋印塔の見学は無料ですか?
A無料です。境内の東端、納経塔のそばの屋外に立っていて、境内に入れる時間であれば自由に見られます。

基本情報

名称浄土寺宝篋印塔(じょうどじほうきょういんとう)/1348年銘の塔
所在地広島県尾道市東久保町
指定区分重要文化財(建造物)
指定年昭和28年(1953年)8月29日
員数1基
寸法石造宝篋印塔。高さ3.2メートル(広島県教育委員会による)
所有者浄土寺
公開状況境内の屋外にあり、見学自由(無料)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺宝篋印塔(貞和四年銘)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3128
文化遺産オンライン 浄土寺宝篋印塔
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/157665
広島県教育委員会 広島県の文化財(尾道市)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/655404.pdf

最終更新日: 2026.09.27