江戸時代の方丈と茶室をまとめた6棟の指定
重要文化財「浄土寺」は、広島県尾道市東久保町の浄土寺境内の西側に建つ江戸時代の方丈・唐門・庫裏及び客殿・宝庫・裏門・露滴庵の6棟からなる指定で、昭和28年(1953年)11月14日に露滴庵が重要文化財に指定され、平成6年(1994年)7月12日に残る5棟が加わった。
名称は寺名と同じ「浄土寺」だが、本堂や多宝塔を含む寺全体を指すものではない。僧が暮らし、客を迎え、寺の財産を納めた近世の建物群を1件にまとめた指定である。中世の堂塔が並ぶ境内の東側に対し、この浄土寺の6棟は本堂の西側にまとまっている。附として、露滴庵の中門、方丈と庫裏及び客殿の棟札、旧食堂の厨子及び須弥壇が指定に含まれる。
年代は17世紀末から18世紀後期にわたる。
- 方丈:元禄3年(1690年)。桁行16.7メートル、梁間13.1メートル、一重、寄棟造、本瓦葺
- 唐門:正徳2年(1712年)ごろ。一間の向唐門、本瓦葺
- 庫裏及び客殿:享保4年(1719年)。庫裏は桁行15.9メートル、梁間12.0メートルの切妻造・妻入
- 宝庫:宝暦9年(1759年)。土蔵造、2階建、桁行6.0メートル、梁間3.9メートル
- 裏門:18世紀後期。長屋門、桁行14.9メートル、梁間5.0メートル
- 露滴庵:江戸時代中期。三畳台目の茶室に水屋と勝手が付く、入母屋造、茅葺
尾道の町衆が支えた浄土寺の近世建築
浄土寺の6棟が評価されるのは、1棟ずつの出来に加えて、中世の堂塔と近世の生活空間がそろって残る点にある。広島県教育委員会は、境内に本堂・多宝塔・阿弥陀堂などの中世建築と方丈などの近世建築がよく残り、統一された寺院建築群になっていると述べる。浄土寺の6棟は、その近世の側を受け持つ建物群である。
建てた人々も分かっている。関ヶ原の戦いのあと、浄土寺は寺領を失い、尾道の豪商の外護を受ける寺へ変わった。寺の縁起は、元禄の方丈、享保の食堂の修理・改築、文化年間の露滴庵の移築をその証として挙げる。広島県教育委員会は、庫裏及び客殿と方丈について、尾道の豪商橋本家が施主となって再建されたと記している。港町の商人の財力が、そのまま寺の姿になった。
個々の建物にも見るべき点が多い。唐門は総ケヤキ造りの小さな一間の向唐門で、宝庫は寺の財産を守るための2階建ての土蔵である。裏門は門の両脇に部屋を連ねた長屋門である。
浄土寺露滴庵と6棟の見どころ
6棟のうち、もっとも多くの話を背負っているのが茶室の露滴庵である。寺の伝えでは、豊臣秀吉が伏見(桃山)城内に建てた茶室を移したもので、京都の本願寺を経て向島(尾道の対岸)の豪商天満屋に移り、文化11年(1814年)に浄土寺へ寄進されたという。ただし文化庁のデータベースは露滴庵の年代を江戸中期(1661〜1750年)としており、秀吉の時代とは合わない。秀吉ゆかりの話は伝承として受け止めたい。
建物の中身は確かである。露滴庵は入母屋造、茅葺の外観をもち、内部は三畳台目の席に水屋と四畳・四畳半の勝手が続く(勝手は後補とされる)。点前座と相伴席が三畳の両側につく燕庵形式で、古田織部の好みを伝える形とされる。茶道口の方立に竹を使う点や窓の多さも、織部好みの特徴として挙げられている。
露滴庵は、方丈と庫裏に囲まれた北西の庭園の築山の上に建つ。広島県教育委員会によれば、庭園は露滴庵の露地へと続いており、茶室と庭が一体に計画されていることが分かる。境内を歩くなら、本堂の西にある総ケヤキ造りの唐門と、南西の角に桁行14.9メートルの長さで延びる裏門の外観も見ておきたい。
浄土寺の6棟の見学方法
方丈・庫裏・客殿の内部と庭園は、浄土寺の通常拝観で見られる。受付は午前9時から午後4時まで、料金は大人300円、中学生以下150円で、案内人はつかない。特別拝観(大人800円)でも同じ範囲を回れる。
露滴庵の内部は通常公開されていない。庭園から築山の上の外観を眺めることになる。令和7年(2025年)4月29日から5月6日には、整備の完了を記念して7年ぶりに内部が一般公開され、事前申込制で大人1,700円だった。こうした公開は不定期なので、浄土寺(0848-37-2361)の案内を確かめたい。
宝庫は拝観の範囲に含まれていない。唐門と裏門は外観を見る建物である。法要やお茶会、修理のため拝観できない日もある。境内への行き方は浄土寺のページにまとめてある。
Q&A
- 重要文化財「浄土寺」にはどの建物が含まれますか?
- 方丈・唐門・庫裏及び客殿・宝庫・裏門・露滴庵の6棟です。附として露滴庵の中門、棟札、旧食堂の厨子及び須弥壇も含まれます。本堂・多宝塔などは別の指定です。
- 浄土寺の露滴庵は本当に豊臣秀吉の茶室ですか?
- 伏見城内の秀吉の茶室を移したと伝えられますが、文化庁データベースは年代を江戸中期(1661〜1750年)としています。浄土寺に寄進されたのは文化11年(1814年)です。
- 浄土寺の方丈や客殿の中は見られますか?料金はいくらですか?
- 通常拝観(大人300円、中学生以下150円、受付は午前9時から午後4時)で方丈・庫裏・客殿と庭園を見られます。
- 浄土寺の露滴庵の中に入れますか?
- 通常は非公開です。令和7年(2025年)春のように期間を限って事前申込制で公開されることがあります。ふだんは庭園から外観を見られます。
- 浄土寺の6棟はいつ建てられましたか?
- 方丈が元禄3年(1690年)、唐門が正徳2年(1712年)ごろ、庫裏及び客殿が享保4年(1719年)、宝庫が宝暦9年(1759年)、裏門が18世紀後期、露滴庵は江戸中期とされます。
基本情報
| 名称 | 浄土寺(じょうどじ)/方丈・唐門・庫裏及び客殿・宝庫・裏門・露滴庵 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県尾道市東久保町 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年 | 昭和28年(1953年)11月14日(露滴庵)、平成6年(1994年)7月12日(5棟追加) |
| 員数 | 6棟(附 中門、棟札、旧食堂厨子及び須弥壇) |
| 寸法 | 方丈 桁行16.7m・梁間13.1m、庫裏 桁行15.9m・梁間12.0m、宝庫 桁行6.0m・梁間3.9m、裏門 桁行14.9m・梁間5.0m |
| 所有者 | 浄土寺 |
| 公開状況 | 方丈・庫裏・客殿の内部は通常拝観(有料)で公開。露滴庵は通常非公開(不定期に特別公開) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺(方丈)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3130
- 文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺(唐門)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3131
- 文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺(庫裏及び客殿)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3132
- 文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺(宝庫)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3133
- 文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺(裏門)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3134
- 文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺(露滴庵)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3135
- 文化遺産オンライン 浄土寺 露滴庵
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/176372
- 広島県教育委員会 広島県の文化財(尾道市)
- https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/655404.pdf
- 日本遺産ポータルサイト 重要文化財浄土寺露滴庵 一般公開
- https://www.japan-heritage.bunka.go.jp/ja/news/4963/
- 大本山 浄土寺 浄土寺の縁起(続き)
- https://ermjp.com/j/temple/histry/engi2.htm
- 大本山 浄土寺 拝観のご案内
- https://ermjp.com/j/temple/haikan/index.htm
最終更新日: 2026.09.27
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