浄土寺でいちばん古い年紀をもつ石塔
浄土寺納経塔は、広島県尾道市東久保町の浄土寺境内に立つ鎌倉時代の石造宝塔で、弘安元年(1278年)10月14日の刻銘をもち、昭和28年(1953年)8月29日に重要文化財に指定された。
文化庁のデータベースは形式を「石造宝塔、基壇付」とし、「弘安元年戊寅十月十四日」の刻銘があると記す。高さは広島県教育委員会の資料で2.7メートル。浄土寺に残る指定建造物のなかでは、この浄土寺納経塔がもっとも古い年紀をもつ。正中2年(1325年)の火災よりも、西大寺の僧定証が嘉元年間(1303〜1306年)に寺を再興するよりも前に立てられている。
建てた事情も分かっている。広島県教育委員会の解説によれば、尾道の富商・光阿弥陀仏のために、子の光阿吉近が弘安元年10月に建てた供養塔である。光阿弥陀仏は、定証による再興以前に、現在の浄土寺阿弥陀堂などの修造に力を尽くした人物とされる。
名の由来は中身にある。浄土寺納経塔には法華経・浄土三部経・梵網経などの経典が奉納された。供養のための塔であり、同時に経を納める器でもあったことが「納経塔」という呼び名に残っている。
浄土寺納経塔が重要文化財とされる理由
広島県教育委員会は、浄土寺納経塔を鎌倉時代の石造宝塔のなかで年代が古く、形もよく整った優品と評価している。
評価の中身は細部にある。基礎の側面には格狭間を刻み、円い塔身の上には高欄を設けて、形式として整った姿を見せる。その一方で、笠の上に露盤を置き、その上を請花と宝珠で終える頂部の作りは古い調子を残す。大きな基壇と組み合わさって、全体は重く、力強い印象になる。
塔身には胎蔵界四仏の種字が刻まれる。梵字1文字で仏を表す種字を、塔身の四方に割り当てたものである。整った形式と古い頂部、そして尾道の商人の家が残した明確な年紀が1基にそろっている点が、この石塔の重要さを支えている。
一族の名は後の記録にも出てくる。浄土寺の縁起は、嘉元元年(1303年)からの再興を援助した尾道浦の大檀那として「光阿弥陀仏」の名を挙げる。浄土寺納経塔で供養された人物と同じ人か、同じ名を継いだ一族の者かは、手元の資料からは判断できない。
浄土寺納経塔の見どころ
浄土寺納経塔は境内の東端、多宝塔よりさらに東に立つ。すぐそばには貞和4年(1348年)銘の宝篋印塔があり、形の違う2基の中世の石塔を並べて見られる。
近づいたら、まず基壇の大きさに目を向けたい。塔そのものを持ち上げるように据えられた基壇が、2.7メートルの塔を実際以上に大きく見せている。次に塔身のふくらみと、その上の高欄、笠の上の露盤から宝珠までを下から順に目で追うと、広島県教育委員会のいう「整った形」と「古い調子」の両方が確かめられる。
塔身の四方を回りながら種字を探してみるのもよい。角度を変えて光の当たり方を見ると、彫りの浅い文字も読み取りやすくなる。
浄土寺納経塔の見学方法
浄土寺納経塔は屋外の境内に立っており、見学は自由で料金はかからない。建物の内部拝観の受付時間とは関係なく、境内に入れる時間であれば見られる。
石塔は触れたり寄りかかったりしないこと。刻銘や種字は風化が進みやすいので、離れた位置から観察したい。境内への行き方と拝観の全体は浄土寺のページにまとめてある。
Q&A
- 浄土寺納経塔はいつ造られましたか?
- 弘安元年(1278年)10月14日の刻銘があります。浄土寺の指定建造物のなかでもっとも古い年紀です。
- 浄土寺納経塔は誰が建てたのですか?
- 広島県教育委員会によると、尾道の富商・光阿弥陀仏のために、子の光阿吉近が建てた供養塔です。
- 浄土寺納経塔の「納経」とは何を納めたのですか?
- 法華経・浄土三部経・梵網経などの経典が奉納されました。供養塔であると同時に、経を納める塔でもありました。
- 浄土寺納経塔は境内のどこにありますか?見学は無料ですか?
- 境内の東端、多宝塔より東にあり、貞和4年(1348年)銘の宝篋印塔と並んでいます。屋外にあり、見学は無料です。
- 浄土寺納経塔の大きさはどれくらいですか?
- 広島県教育委員会の資料で高さ2.7メートルです。大きな基壇の上に据えられています。
基本情報
| 名称 | 浄土寺納経塔(じょうどじのうきょうとう) |
|---|---|
| 所在地 | 広島県尾道市東久保町 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年 | 昭和28年(1953年)8月29日 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 石造宝塔、基壇付。高さ2.7メートル(広島県教育委員会による) |
| 所有者 | 浄土寺 |
| 公開状況 | 境内の屋外にあり、見学自由(無料) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 浄土寺納経塔
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3127
- 文化遺産オンライン 浄土寺納経塔
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/123934
- 広島県教育委員会 広島県の文化財(尾道市)
- https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/655404.pdf
- 大本山 浄土寺 浄土寺の縁起
- https://ermjp.com/j/temple/histry/engi.htm
最終更新日: 2026.09.27