境内でもっとも古い社殿
鹿島神宮摂社奥宮本殿は、茨城県鹿嶋市大字宮中にある慶長10年(1605年)建立の神社本殿で、明治34年(1901年)3月27日に重要文化財に指定された。徳川家康が関ヶ原の戦勝を謝して奉納した建物であり、鹿島神宮の境内に建つ社殿のなかでもっとも古い。
建てられた当初、この建物は奥宮ではなかった。いま本殿が立っている位置にあり、本宮の本殿として武甕槌大神を祀っていた。14年後の元和5年(1619年)、二代将軍徳川秀忠が社殿一式を新造する。このとき家康の本殿は解体されず、参道の奥へそのまま曳かれて摂社奥宮の本殿になった。現在ここに祀られているのは武甕槌大神の荒魂である。
白木のまま残った桃山の彫り
形式は三間社流造、向拝一間、檜皮葺。身舎の柱は円柱、庇は角柱とし、組物は出三斗、庇には蟇股を置く。軒は二軒繁垂木、妻は豕扠首である。
目を引くのは、むしろ開口部の少なさだ。身舎の梁間は2間で、四方に縁をめぐらす。扉口は正面の中央間に設けるだけで、残る面は連子窓と板壁でふさがれている。閉じることを優先したこの構えが神社本殿の古い形式を伝えていると、茨城県教育委員会は説明する。
木割りは大きい。漆も極彩色も施さず白木のままで、彫刻は蟇股と柱状の木鼻に限られる。数は少ないが彫りは深く、桃山時代の豪放な気風がそこに出ている。
ただし、いま見える姿がそのまま慶長10年の姿ではない。庇の床を高く張ること、前庇の前に一間の向拝を付すことは、後年の修理で新しい本殿の形式に倣って改造されたものとみられている。移築と手入れが、ひとつの建物に二つの時代を重ねた。
奥参道を歩いて確かめる
奥宮へは、本宮の脇から東へ延びる奥参道を300メートルほど歩く。杉の巨木が両側から覆いかぶさり、日中でも光は足元まで届かない。参道の突き当たりで、屋根の低い建物が正面を見せて立っている。
本宮の本殿と奥宮本殿は同じ三間社流造だが、仕上げは正反対である。本殿は漆塗に極彩色、奥宮本殿は白木のまま。二つを続けて見ると、14年のあいだに造営の考え方が変わったことが目で分かる。順路としては本宮を先に見るほうが比較しやすい。
令和3年(2021年)2月に着手した屋根の葺き替えは終わっており、檜皮の重なりが新しい状態で見られる。正面に立って軒下を見上げると、二軒に並ぶ垂木の断面と、庇の蟇股の彫りが確認できる。側面へ回れば、連子窓と板壁の分かれ目も追える。
見学方法
鹿島神宮の境内には外部と区切る門も柵もなく、鹿島神宮摂社奥宮本殿の前へは時刻を問わず近づける。拝観料はかからない。ただし建物の内部に立ち入ることはできず、見学は屋外からになる。
撮影は自由に行える。三脚やドローンを使う場合は社務所に確認したい。授与所と御祈祷の受付は午前8時30分から午後4時30分まで。宝物館は平成30年(2018年)から休館している。
JR鹿島線・鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の鹿島神宮駅から楼門まで徒歩7分、楼門から鹿島神宮摂社奥宮本殿まではさらに10分ほどみておきたい。東京駅八重洲南口からは高速バス「かしま号」が通じており、所要約2時間、片道2,100円。奥参道は平坦で舗装されているが、要石や御手洗池へ足を延ばすなら坂と階段がある。犬を連れての参拝は、境内の鹿への配慮から控えるよう求められている。
Q&A
- 鹿島神宮摂社奥宮本殿はいつ、誰が建てたものですか。
- 慶長10年(1605年)、徳川家康が関ヶ原の戦勝を謝して奉納しました。年代は指定に附として含まれる棟札1枚から知られます。明治34年(1901年)3月27日に重要文化財に指定されています。
- 鹿島神宮摂社奥宮本殿はなぜ奥宮に建っているのですか。
- もとは本宮の本殿として、現在の本殿の位置に建っていました。元和5年(1619年)に徳川秀忠が社殿一式を新造した際、解体せずに参道の奥へ曳いて移し、摂社奥宮の本殿としたためです。
- 鹿島神宮摂社奥宮本殿と本宮の本殿はどこが違いますか。
- 形式はどちらも三間社流造、向拝一間、檜皮葺で共通します。違いは仕上げで、本宮の本殿が漆塗に極彩色であるのに対し、奥宮本殿は白木のままです。彫刻も蟇股と木鼻に限られます。
- 鹿島神宮摂社奥宮本殿は拝観できますか。時間と料金を教えてください。
- 境内に門や柵がないため時刻を問わず近づけ、拝観料はかかりません。内部は公開されておらず、見学は屋外からになります。授与所と御祈祷の受付は午前8時30分から午後4時30分までです。
- 鹿島神宮摂社奥宮本殿へはどう行けばよいですか。
- JR鹿島線・鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の鹿島神宮駅から楼門まで徒歩7分、そこから奥参道を約300メートル進んで10分ほどです。東京駅八重洲南口からの高速バス「かしま号」は所要約2時間、片道2,100円です。
基本情報
| 名称 | 鹿島神宮摂社奥宮本殿(かしまじんぐうせっしゃおくみやほんでん) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県鹿嶋市大字宮中 |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) 指定番号00155 附 棟札1枚 |
| 指定年 | 明治34年(1901年)3月27日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 三間社流造、向拝一間、檜皮葺 |
| 所有者 | 鹿島神宮 |
| 公開状況 | 屋外から常時拝観可、拝観料なし。内部は非公開 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 鹿島神宮摂社奥宮本殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/253
- 茨城県教育委員会 いばらきの文化財 鹿島神宮摂社奧宮本殿(附 棟札1枚)
- https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/kuni-2/
- 鹿嶋市 鹿嶋デジタル博物館 鹿島神宮摂社奥宮本殿(附棟札1枚)
- https://www.city.kashima.ibaraki.jp/site/bunkazai/50117.html
- 鹿島神宮 摂社 奥宮
- https://kashimajingu.jp/keidai_annai/%E5%A5%A5%E5%AE%AE/
- 鹿島神宮 よくあるご質問(参拝時間・交通手段)
- https://kashimajingu.jp/info/%e3%82%88%e3%81%8f%e3%81%82%e3%82%8b%e3%81%94%e8%b3%aa%e5%95%8f/
最終更新日: 2026.09.05