若桜鉄道 ― 郡家と若桜を結ぶ19.2キロの登録文化財路線
若桜鉄道は、鳥取県八頭郡八頭町の郡家駅と若桜町の若桜駅を結ぶ全長19.2キロの鉄道で、昭和5年(1930年)に鉄道省若桜線として全線開通し、沿線の駅舎・橋梁・若桜駅構内の施設など23件が平成20年(2008年)7月8日に登録有形文化財となった。
一つの路線の施設がこれだけまとまって登録された例は全国で初めてとされ、鳥取市の観光サイトもその点を紹介している。登録されたのは特別な記念建築ではない。昭和初期の地方線を動かしていた駅舎、石積みのホーム、鋼の桁橋、雪と落石から線路を守るコンクリートの覆い、そして終着駅で蒸気機関車を回し、給水し、転轍機を扱った小さな建物群である。
列車は八東川の谷をさかのぼる。郡家を出ると川を何度も渡り、両側の山が近づくにつれて駅の間隔も長くなる。終点の若桜駅は鳥取県の東端に近い山あいの町にあり、線路はそこで止まっている。
路線のあゆみ
若桜線の構想は、大正11年(1922年)の改正鉄道敷設法の別表に「鳥取県郡家ヨリ若桜ヲ経テ兵庫県八鹿附近ニ至ル鉄道」として載ったことに始まる。昭和2年(1927年)12月に着工し、昭和5年(1930年)1月20日に郡家駅と隼駅の間が開業、同じ年の12月1日に若桜駅まで全通した。兵庫県側への延長は結局着工されず、若桜駅は行き止まりの終着駅のまま今日に至る。
開業当初の若桜線は旅客だけでなく、若桜谷の木材をはじめとする貨物を運ぶ役割を負っていた。安部駅は昭和7年(1932年)2月に追加で設けられた駅である。戦後は日本国有鉄道の路線となり、貨物の取り扱いは昭和49年(1974年)に全線で廃止された。
昭和56年(1981年)に第1次特定地方交通線、つまり廃止対象に選ばれたが、沿線の乗車運動を経て第三セクター方式での存続が決まり、昭和62年(1987年)10月14日に若桜鉄道株式会社が運行を引き継いだ。平成21年(2009年)4月からは八頭町と若桜町が線路や駅などの施設を持ち、若桜鉄道が列車を走らせる公有民営の上下分離方式に移っている。登録された施設の多くが八頭町・若桜町の所有になっているのはこのためである。
登録された23件の内訳と並び
23件は、若桜駅構内の8件、沿線の駅舎とプラットホーム、橋梁6基、雪覆と落石覆に分けられる。郡家駅側から乗ると次の順に現れる。
- 八頭高校前駅と因幡船岡駅の間:第一八東川橋梁(橋長139メートル、路線最長)
- 因幡船岡駅・隼駅:本屋とプラットホームを一体で登録
- 安部駅:本屋とプラットホームを別々に登録
- 八東駅:本屋とプラットホームを別々に登録
- 八東駅と丹比駅の間:岩淵川橋梁、第二八東川橋梁
- 丹比駅:本屋とプラットホームを一体で登録
- 丹比駅と若桜駅の間:細見川橋梁、第三八東川橋梁、落石覆、雪覆、若桜川橋梁
- 若桜駅構内:本屋及びプラットホーム、物置及び灯室、旧西転轍手箱番所、旧東転轍手箱番所、諸車庫、機関車転車台、給水塔、流雪溝
橋梁はいずれも鋼または錬鉄のプレートガーダーで、規模の大きい第一・第二・第三の八東川橋梁は開業時に新たに架けられた。一方、細見川・岩淵川・若桜川の3橋は明治から大正にかけて造られた他線の桁を切り詰めて転用したもので、日本の鉄道桁の標準設計の移り変わりを一路線の中でたどれる。中間駅の本屋はどれも木造平屋建・切妻造・下見板張という共通の型を持ち、そのうえで待合所の造りや入口の位置に駅ごとの違いがある。
若桜駅には、転車台・給水塔・転轍手の番所・灯室といった蒸気機関車時代の終着駅に欠かせない施設が一式残る。これらは個別の建物としてより、構内全体の配置で見たときに意味がよく分かる。構内には若桜線を走ったことのある蒸気機関車C12形167号機が保存されていて、転車台や給水塔と並ぶ姿を見られる。
沿線への行き方
鉄道で向かう場合は、JR鳥取駅から因美線で郡家駅まで約15分、郡家駅で若桜鉄道に乗り換えて終点の若桜駅まで約30分である。若桜鉄道の線内(郡家駅から若桜駅まで)を1日乗り降りできる1日フリー乗車券は760円で、若桜駅や列車内で買える。途中の駅で降りて駅舎や橋梁を見て回るなら、この切符が使いやすい。列車の本数は多くないので、降りる前に次の列車の時刻を必ず確かめておきたい。
車の場合は、鳥取自動車道の鳥取南インターチェンジから若桜駅まで約25分で、若桜駅には無料の駐車場がある。
若桜駅の本屋と待合室には乗車券がなくても入れる。転車台や給水塔のある構内の有料エリアに入るには、駅窓口で入構券(300円、小学生以下は無料)を買う。構内では係員の指示に従い、立入禁止の場所には入らない。
沿線の登録施設を見るときの注意
駅舎とプラットホームは現役の駅なので、列車の利用者と同じように待合室やホームに立ち入れる。橋梁・雪覆・落石覆は列車の中から通過するか、周辺の道路や河原から眺めることになる。鉄道の線路内や橋の上は立入禁止で、撮影のために線路へ近づくことはできない。
冬の若桜谷は雪が多い。雪覆や流雪溝、転車台の融雪設備は、この路線が雪とどう付き合ってきたかを示す施設であり、雪の季節に訪れると使われ方が想像しやすい。ただし積雪期は道路の状況が変わるため、車で橋梁を見て回る計画は無理のない範囲にとどめたい。
参考文献
- 登録有形文化財ご紹介(若桜鉄道株式会社)
- https://wakatetsu.co.jp/bunkazai
- 若桜鉄道とは? 歴史・沿革(若桜鉄道株式会社)
- https://wakatetsu.co.jp/about/
- 若桜鉄道若桜駅本屋及びプラットホーム、転車台ほか計23件(文化庁 日本遺産ポータルサイト)
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4487/
- 近代化遺産としての若桜鉄道(八頭町観光協会 やずナビ)
- https://yazukanko.jp/feature/wakasarailroad/
- 運行情報・運賃・1日フリー乗車券(若桜鉄道株式会社)
- https://wakatetsu.co.jp/info/
- C12展示運転スケジュール・入構券(若桜鉄道株式会社)
- https://wakatetsu.co.jp/c12
- 若桜鉄道 若桜駅(鳥取市観光サイト)
- https://www.torican.jp/spot/detail_1231.html
- 若桜谷公共交通活性化協議会の取組(国土交通省)
- https://www.mlit.go.jp/common/000046212.pdf
- 国指定文化財等データベース 若桜鉄道若桜駅本屋及びプラットホーム(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007287
最終更新日: 2026.09.26
基本情報
| 名称 | 若桜鉄道 |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県八頭郡八頭町・若桜町 |
| 所有者 | 八頭町、若桜町ほか |
| 指定 | 登録有形文化財 23件 |
| 座標 | 35.35698, 134.36453 |