萬乗醸造瓶詰作業場とは
萬乗醸造瓶詰作業場は、愛知県名古屋市緑区大高町にある大正期の木造平屋建作業場で、平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は23-0236。萬乗醸造の敷地では旧精米作業場の南方にあたり、東西棟で建つ。
規模は桁行9間、梁間4間。切妻造で、屋根は瓦ではなく鉄板を葺く。建築面積は147平方メートル。北面の東端から敷地境界に沿って北へ、桁行6間、梁間1間の物置が延び、その前に広い作業スペースがとられている。建築年代は1912年から1925年ごろと推定されている。
壁は柱と梁をあらわしにする真壁造である。瓶詰めとは、貯蔵した酒を瓶に充填し、栓をして出荷できる形に整える工程をいう。明治以降に瓶での流通が広がったことで、酒蔵の敷地に瓶詰めのための建物が必要になった。萬乗醸造瓶詰作業場はその変化に応じて建てられた棟である。
なぜ登録有形文化財なのか
萬乗醸造瓶詰作業場の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。あわせて、萬乗醸造の建物群のなかで最も新しい構法が使われている点が特徴として挙げられる。
愛知県教育委員会の解説によれば、萬乗醸造瓶詰作業場の小屋組は山形トラスの中央に垂直材を立てるキングポスト構造で、2つの材で挟む合せ梁を用い、コの字形の箱金物やボルトで接合している。木を刻んで組む在来の仕口ではなく、金物で締める接合が採られている。
同じ敷地には江戸時代後期の中蔵から大正期のこの作業場まで、建築年代の異なる12件が並ぶ。萬乗醸造瓶詰作業場は、江戸期の木組みと近代の金物接合が同じ塀の内側に共存していることを示す位置にある。平成19年(2007年)7月31日の一括登録は、その幅ごと残す判断だった。
見どころ
屋根が鉄板葺である点が、まず他と異なる。萬乗醸造の登録12件のうち、屋根に瓦を用いないのは萬乗醸造瓶詰作業場だけである。桟瓦の重い連なりが続くなかで、この棟だけ屋根面が平滑に見える。
小屋組のキングポストトラスは、旧精米作業場と同じ形式である。ただし部材の使い方は進んでおり、合せ梁と箱金物が加わる。合せ梁は、細い材を2枚合わせて中間の材を挟み込み、1本の太い梁に相当する強さを得る方法である。木材の寸法に頼らず断面を稼げるため、広い無柱空間をつくりやすい。
真壁造の内部は、柱・梁・トラスがそのまま見える。装飾のための造作を持たない建物で、見えているものがそのまま構造である。萬乗醸造瓶詰作業場の性格は、この率直さにある。
北へ延びる物置は桁行6間、梁間1間と細長い。敷地境界に沿わせて建てることで、物置の前に作業のための平場が生まれている。建物の形が作業動線から決まった例といえる。
見学方法とアクセス
萬乗醸造瓶詰作業場は稼働中の酒造会社の敷地内にあり、内部は公開されていない。敷地への立ち入りもできない。敷地の南寄りに位置するため、公道から建物を正面に見る位置は限られる。萬乗醸造は公式サイトの「よくあるご質問」で、蔵での直売を行っていないと説明している。
撮影は公道から行う範囲であれば妨げられない。萬乗醸造瓶詰作業場は通りからは見えにくいので、北隣の旧精米作業場の煙突を手がかりに位置を把握するとよい。敷地内や作業中の人に向けた撮影は控えたい。
最寄り駅はJR東海道本線の大高駅で、徒歩約15分。駅から旧市街に入り、大高川の左岸を西へ歩くと酒蔵の町並みに入る。名古屋市緑区が案内する歴史散策路「大高城下コース」は、この町並みを経て大高城跡へ向かう約5.7キロの経路である。
Q&A
- 萬乗醸造瓶詰作業場は見学できますか?内部は公開されていますか?
- 内部は公開されていません。稼働中の酒造会社の敷地内にあり、立ち入りもできません。見学は公道からの外観に限られます。
- 萬乗醸造瓶詰作業場へのアクセスは?最寄り駅からどのくらいですか?
- JR東海道本線の大高駅から徒歩約15分です。名古屋市緑区の歴史散策路「大高城下コース」の経路上にあります。
- 萬乗醸造瓶詰作業場はいつ建てられたのですか?
- 1912年から1925年ごろ、大正期の建築と推定されています。平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財に登録されました。
- 萬乗醸造瓶詰作業場の屋根が他の建物と違って見えるのはなぜですか?
- 屋根が鉄板葺だからです。萬乗醸造で登録された12件のうち、瓦を葺かないのはこの建物だけです。
- 萬乗醸造瓶詰作業場はどのような構法で建てられていますか?
- 小屋組はキングポストトラスで、2つの材で中間材を挟む合せ梁を用い、コの字形の箱金物やボルトで接合しています。萬乗醸造の建物群のなかでは新しい構法です。
基本データ
| 名称 | 萬乗醸造瓶詰作業場 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市緑区大高町字西門田41 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成19年(2007年)7月31日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、鉄板葺、建築面積147平方メートル、物置付。桁行9間、梁間4間 |
| 所有者 | 株式会社萬乗醸造 |
| 公開状況 | 非公開(稼働中の醸造施設の敷地内。外観は公道から見学可) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006581
- 愛知県の国・県指定文化財と国の登録文化財(愛知県教育委員会)
- https://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/yukei/kenzoubutu/kunitouroku/1253-1264.html
- 緑区の歴史散策路・大高城下コースの紹介(名古屋市緑区役所)
- https://www.city.nagoya.jp/midori/miryoku/1024793/1024794/1024797.html
- よくあるご質問(株式会社萬乗醸造)
- https://kuheiji.co.jp/contact/faq/
最終更新日: 2026.09.02