萬乗醸造内井戸とは
萬乗醸造内井戸は、愛知県名古屋市緑区大高町にある江戸時代後期の石造井戸で、平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は23-0243。萬乗醸造の敷地内、元蔵の南面近くに、南北方向へ2本が並んで掘られている。
井戸枠は円形の石造で、外径は2本とも2.5メートル。深さは約8メートルである。文化庁の登録では面積4.9平方メートルの2基からなるとされ、員数は1棟ではなく「1所」で数えられている。建物ではなく工作物として登録されているためで、種別も「その他工作物」となっている。
萬乗醸造内井戸は創業期以来の井戸とされ、元蔵井戸とも呼ばれる。建築年代の推定は1751年から1829年ごろで、同じ敷地の中蔵と同じ層にあたる。酒造は仕込み水のほか、洗米、蒸米、器具の洗浄にも大量の水を使う。水源の位置は、醸造場をどこに置くかを決める条件そのものである。
なぜ登録有形文化財なのか
萬乗醸造内井戸の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建物ではない設備が登録対象に含まれた点に、この一括登録の性格が表れている。
萬乗醸造では平成19年(2007年)7月31日に12件が登録された。うち工作物として登録されたのは萬乗醸造内井戸と外井戸の2件で、残る10件は建築物である。井戸は蔵や作業場に比べて目立たず、埋め戻されることも多い。それが2件とも残り、登録の対象に入っている。
建物だけを残しても、醸造場がどう成り立っていたかは見えにくい。米を扱う建物、酒を仕込む蔵、樽を直す場所、そして水を汲む井戸。萬乗醸造内井戸はその最初の要素にあたり、大高で酒造が続いてきた理由を具体的に示している。
見どころ
2本の井戸が南北に並ぶという配置が、萬乗醸造内井戸のかたちである。1本ではなく2本を近接して掘るのは、汲み上げ量を確保するためと考えられる。人力で釣瓶を上げ下げしていた時代、1本の井戸から取れる水量には限りがあった。
外径2.5メートルという井戸枠は大きい。家庭用の井戸が直径1メートル前後であることを考えると、この寸法は生産設備の規模を示している。文化庁の記載する面積4.9平方メートルは、直径2.5メートルの円の面積にほぼ一致する。
深さ約8メートルという数値も具体的である。大高は大高川の左岸に開けた土地で、伏流水が得やすい。萬乗醸造内井戸はその水脈に届く深さで止まっている。同じ敷地外にある外井戸のうち、南方の1本も径2.5メートル、深さ8メートルで、掘り方が揃っている。
ただし萬乗醸造内井戸は元蔵の南面近くという敷地の奥にあり、公道から見ることはできない。文化庁と愛知県教育委員会の解説文、および両者が公開する写真が、現状で確かめられる資料である。
見学方法とアクセス
萬乗醸造内井戸は稼働中の酒造会社の敷地内にあり、公開されていない。敷地への立ち入りもできず、公道から見ることもできない。萬乗醸造は公式サイトの「よくあるご質問」で、蔵での直売を行っていないと説明している。訪ねても購入や見学の受付はない。
撮影についても、萬乗醸造内井戸を対象とすることはできない。公道から敷地の外観を撮る範囲にとどめ、敷地内や作業に向けた撮影は控えたい。特別公開の予定は、文化庁および愛知県教育委員会の公開情報では確認できなかった。
敷地の位置はJR東海道本線の大高駅から徒歩約15分。駅から旧市街に入り、大高川の左岸を西へ歩くと酒蔵の町並みに入る。名古屋市緑区が案内する歴史散策路「大高城下コース」は、この町並みを経て大高城跡へ向かう約5.7キロの経路である。萬乗醸造内井戸は見えないが、通りから見える屋根の連なりの南側にあると考えてよい。
Q&A
- 萬乗醸造内井戸は見学できますか?
- 見学できません。稼働中の酒造会社の敷地の奥にあり、立ち入りも公道からの観覧もできません。特別公開の予定は公開情報では確認できませんでした。
- 萬乗醸造内井戸へのアクセスは?最寄り駅からどのくらいですか?
- 敷地はJR東海道本線の大高駅から徒歩約15分の位置にあります。名古屋市緑区の歴史散策路「大高城下コース」の経路上です。
- 萬乗醸造内井戸はいつ掘られたのですか?
- 1751年から1829年ごろ、江戸時代後期のものと推定されています。平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財に登録されました。
- 萬乗醸造内井戸の大きさと深さは?
- 井戸枠は円形の石造で外径2.5メートル、深さは約8メートルです。同じ規格の井戸が南北方向に2本並んでいます。
- 萬乗醸造内井戸はなぜ「1棟」ではなく「1所」と数えるのですか?
- 建物ではなく工作物として登録されているためです。文化庁の分類でも種別は「その他工作物」とされています。
基本データ
| 名称 | 萬乗醸造内井戸 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市緑区大高町字西門田41 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成19年(2007年)7月31日登録 |
| 員数 | 1所 |
| 寸法 | 石造、面積4.9平方メートル2基よりなる。井戸枠外径2.5メートル、深さ約8メートル |
| 所有者 | 株式会社萬乗醸造 |
| 公開状況 | 非公開(敷地の奥にあり公道からも見学不可) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006586
- 愛知県の国・県指定文化財と国の登録文化財(愛知県教育委員会)
- https://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/yukei/kenzoubutu/kunitouroku/1253-1264.html
- 緑区の歴史散策路・大高城下コースの紹介(名古屋市緑区役所)
- https://www.city.nagoya.jp/midori/miryoku/1024793/1024794/1024797.html
- よくあるご質問(株式会社萬乗醸造)
- https://kuheiji.co.jp/contact/faq/
最終更新日: 2026.09.02