萬乗醸造主屋とは

萬乗醸造主屋は、愛知県名古屋市緑区大高町にある江戸時代末期の木造2階建住宅で、平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は23-0234。大高の旧市街を東西に貫く新町通に北面して建ち、通りから見える萬乗醸造の顔にあたる建物である。

規模は桁行8、梁間6間半。切妻造桟瓦葺で、屋根の長い面を通りに向ける平入の構えをとる。建築面積は171平方メートル。内部は東側を土間、西側を居室部とし、居室部の北西に8畳の座敷を置く。座敷には床の間が設けられている。

建てた久野家は、江戸時代に大高村の庄屋を務めた家である。当主は代々「九平治」を名乗ってきた。萬乗醸造の創業は正保4年(1647年)と伝えられるが、愛知県教育委員会の解説では、酒造業を営んだ記録が確認できるのは天保8年(1837年)以降とされる。萬乗醸造主屋の建築年代は1830年から1867年ごろと推定されており、記録上の酒造開始とほぼ重なる。

なぜ登録有形文化財なのか

萬乗醸造主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。個々の意匠の突出よりも、町の眺めをつくっている点が評価された。

同じ日に、萬乗醸造の敷地とその周辺にある12件の建造物・工作物がまとめて登録されている。主屋のほか、旧精米作業場、瓶詰作業場、元蔵、中蔵、新蔵、白米倉庫、離れ、土蔵、内井戸、旧仕込蔵及び樽修理場、外井戸である。ひとつの醸造場を構成する住まい・仕込蔵・作業場・井戸が、機能ごとに分かれたまま一括で残っている例は多くない。

新町通に沿って主屋・土蔵・新蔵が横に並ぶ配置は、江戸期以来の酒造町の街区がそのまま生きていることを示す。大高では現在も3軒が清酒醸造を続けており、萬乗醸造主屋はその町並みの中心に位置している。

見どころ

まず目に入るのは、通りに向いた北面の黒さである。萬乗醸造主屋の北面は柱と梁を見せる真壁造で、壁は黒漆喰で塗られている。開口部が少なく、面としてのまとまりが強い。冬の低い日射しが当たると、黒い壁面に柱の影が細く落ちる。

この黒い面は、東隣の土蔵とその蔵前部に連続していく。土蔵側も上部が黒漆喰塗であるため、通りに面した壁は一続きの帯のように見える。どこまでが住まいでどこからが蔵なのか、外からは判別しにくい。

中庭側に回ると印象が変わる。こちら側は柱梁をあらわにした真壁造で、壁は白漆喰。北の黒と南の白が同じ建物の表裏になっている。ただし中庭は敷地内のため、一般には見ることができない。

屋根の桟瓦は、同じ敷地の中蔵・新蔵・白米倉庫にも共通する。萬乗醸造主屋の棟の高さを基準に、南へ向かって蔵の屋根が重なって見える位置が、新町通の西寄りにある。

見学方法とアクセス

萬乗醸造主屋は現役の酒造会社の建物であり、内部は公開されていない。敷地内への立ち入りもできない。見学は新町通からの外観に限られる。萬乗醸造は公式サイトの「よくあるご質問」で、蔵での直売を行っていないことを明らかにしている。訪問しても購入や見学の受付はない。

写真撮影は、公道上から外観を撮る範囲であれば妨げられない。敷地内や作業の様子に向けた撮影は避けたい。醸造期にあたる冬季は蔵人が出入りするため、通りに立ち止まる際は通行の妨げにならない位置を選ぶ。

アクセスはJR東海道本線の大高駅が最寄りで、徒歩約15分。駅前の道を渡って旧市街に入り、大高川の左岸を西へ進むと、煙突と黒い壁面が見えてくる。萬乗醸造主屋の西側からさらに歩けば大高城跡公園に出る。名古屋市緑区が案内する歴史散策路「大高城下コース」は、この酒蔵の町並みを経由して大高城跡へ向かう約5.7キロの経路である。

Q&A

Q萬乗醸造主屋は見学できますか?内部は公開されていますか?
A内部は公開されていません。稼働中の酒造会社の建物で、敷地内に入ることもできません。見学は新町通からの外観に限られます。
Q萬乗醸造主屋へのアクセスは?最寄り駅からどのくらいかかりますか?
AJR東海道本線の大高駅が最寄りで、徒歩約15分です。名古屋市緑区の歴史散策路「大高城下コース」の経路上にあります。
Q萬乗醸造主屋はいつ建てられたのですか?
A1830年から1867年ごろ、江戸時代末期の建築と推定されています。平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財に登録されました。
Q萬乗醸造主屋の写真は撮影できますか?
A公道である新町通から外観を撮影する分には差し支えありません。敷地内や作業中の様子に向けた撮影は控えてください。
Q萬乗醸造主屋の通りに面した壁が黒いのはなぜですか?
A北面が黒漆喰で塗られているためです。防火と耐候を兼ねた仕上げで、東に続く土蔵の上部も同じ黒漆喰塗になっています。

基本データ

名称萬乗醸造主屋
所在地愛知県名古屋市緑区大高町字西門田41
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成19年(2007年)7月31日登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積171平方メートル。桁行8間、梁間6.5間
所有者株式会社萬乗醸造
公開状況非公開(稼働中の醸造施設の敷地内。外観は公道から見学可)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006583
文化遺産オンライン(文化庁)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/182796
愛知県の国・県指定文化財と国の登録文化財(愛知県教育委員会)
https://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/yukei/kenzoubutu/kunitouroku/1253-1264.html
緑区の歴史散策路・大高城下コースの紹介(名古屋市緑区役所)
https://www.city.nagoya.jp/midori/miryoku/1024793/1024794/1024797.html
よくあるご質問(株式会社萬乗醸造)
https://kuheiji.co.jp/contact/faq/

最終更新日: 2026.09.02