表門の脇に建つ洋風の事務所

福美人酒造事務所は、広島県東広島市西条本町の恵比寿蔵の敷地に建つ大正期(1912〜1926年)の事務所建築で、平成28年(2016年)8月1日に国の登録有形文化財に登録された。

恵比寿蔵の敷地の南面、出入口の西脇に建つ。木造2階建で一部を平屋とし、屋根は瓦葺、建築面積は147平方メートル。外壁を横板張りとした洋風の外観をもつ。

酒蔵の白壁と赤瓦が続く敷地のなかで、板張りの洋風の壁面はひときわ目を引く。門をくぐる人が最初に目にする建物であり、福美人酒造の表の顔にあたる。

西条の造り酒屋に広まった「入口脇の洋風事務所」

文化庁の解説は、福美人酒造事務所を大正期の西条の造り酒屋で典型となった出入口脇の洋風事務空間と位置づけている。酒造りの場である蔵とは別に、帳場や応接の機能を門の近くにまとめ、外観を洋風に仕立てる。西条の酒造業が近代的な会社経営へ移っていく時期の姿を伝える建物である。

内部は1階がカウンターと執務室を備えた事務室、2階が和室である。外は洋風、2階は畳の部屋という組み合わせは、洋風の意匠を取り入れつつ暮らしの作法は和のまま残した大正期の建物に少なくない。

株式会社として発足した福美人酒造にとって、事務所は取引と経理を担う場だった。酒蔵群とともに登録されたことで、造る場所だけでなく売り、記帳する場所までが一揃いで残されたことになる。

見どころ:横板張りの壁面

外壁の横板張りに注目したい。板を水平に重ねて張った壁は、陰影が横縞となって走り、土蔵の平らな漆喰壁と好対照をなす。

建物の位置も見どころの一つである。門柱のすぐ内側、西脇に構えているため、敷地に入る人の動線を自然に見渡せる。事務所がなぜここに置かれたかは、門の前に立ってみるとよく分かる。

敷地の奥には高さ24メートルの恵比寿蔵煙突がそびえる。門の外から事務所の洋風の壁と煙突を一緒に収めると、西条の酒蔵らしい構図になる。

見学について

福美人酒造事務所は現在も会社の施設として使われており、内部を公開する案内は出ていない。外観は恵比寿蔵の敷地の出入口から見ることができる。

恵比寿蔵の敷地には直売所の営業時間内であれば入ることができ、事務所は門を入ってすぐ西側にある。業務の妨げにならないよう、建物の出入口付近に立ち止まらずに眺めたい。

Q&A

Q福美人酒造事務所の中は見学できますか。
A内部を公開する案内は出ていません。外観は恵比寿蔵の敷地の出入口付近から見ることができます。
Q福美人酒造事務所はいつ建てられたのですか。
A文化庁の記録では大正期(1912〜1926年)です。登録有形文化財への登録は平成28年(2016年)8月1日です。
Q福美人酒造事務所はどこにありますか。
A恵比寿蔵の敷地の南面、出入口の西脇に建っています。門柱を入ってすぐの位置です。
Q福美人酒造事務所の建物の特徴は何ですか。
A木造2階建一部平屋で、外壁を横板張りとした洋風の外観をもちます。1階はカウンターと執務室のある事務室、2階は和室です。
Q福美人酒造事務所はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A大正期の西条の造り酒屋で典型となった出入口脇の洋風事務所の姿をよく残し、国土の歴史的景観に寄与していると評価されたためです。

基本情報

名称福美人酒造事務所(ふくびじんしゅぞうじむしょ)
所在地広島県東広島市西条本町691
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 34-0164
指定年平成28年(2016年)8月1日登録
員数1棟
寸法木造2階一部平屋建、瓦葺、建築面積147平方メートル
所有者福美人酒造株式会社
公開状況内部公開の案内なし。外観は恵比寿蔵の敷地内から見学可(直売所の営業時間内)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):福美人酒造事務所
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011171
文化遺産オンライン:福美人酒造事務所
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/240058
福美人酒造株式会社:酒蔵紹介
https://www.fukubijin.co.jp/kura_info.html

最終更新日: 2026.09.24