天台寺とは―八葉山の観音霊場に残る江戸前期の2棟

天台寺は、岩手県二戸市浄法寺町御山にある天台宗の寺院で、明暦3年(1657年)完成の仁王門と万治元年(1658年)建立の本堂の2棟が、平成2年(1990年)に重要文化財に指定されている。

山号は八葉山(はちようざん)。寺の縁起では、神亀5年(728年)、聖武天皇の命で寺地を探していた行基が、八つの峰と八つの谷をもつこの山を八葉山と名づけ、桂の木で観音像を刻み、天皇の筆になる「天台寺」の額を掲げて開いたとされる。寺自身もこの縁起の真偽は定かでないとしたうえで、仏像の制作年代から見て遅くとも11世紀から12世紀には創建されていたと説明している。

地元では今も「御山(おやま)の観音」と呼ばれる。参道の登り口に立つ桂の大木の根元から清水が湧き、そこから「桂泉(けいせん)観音」の名でも知られてきた。

江戸時代には盛岡藩の南部家が庇護し、藩主南部重直が現在の本堂と仁王門を建てた。明治以降は住職の家系が絶え、戦後には境内の杉の大木の大半が伐採されて売られ、寺は荒れた。1970年代前半から地元で保存の動きが起こり、1987年に作家の瀬戸内寂聴師が住職に就くと、青空説法を聞きに全国から人が訪れるようになった。

重要文化財としての価値―盛岡藩が同時に建てた本堂と仁王門

文化庁は平成2年(1990年)9月11日、天台寺の本堂と仁王門を1件の重要文化財に指定した。附(つけたり)として棟札11枚と造営文書1通も指定に含まれる。

文化庁の解説は、天台寺を東北を代表する観音霊場の名刹と位置づけたうえで、本堂について、内部に大型の厨子を備えた五間堂で細部の造りも優れていると評価する。同じ時期の仁王門とあわせて盛岡藩の手で造営されたことから、2棟は岩手県内に残る江戸時代前期の本格的な寺院建築として重んじられている。

建立年の確かさも天台寺の建物の特徴である。先に完成したのは仁王門で、明暦3年(1657年)。寺の記録によれば本堂の棟上げは同じ年の10月24日で、旧暦のこの日は今の暦では12月半ばにあたる。雪が本格的に降りだす直前に骨組みを立ち上げ、翌万治元年(1658年)に本堂が完成した。

平成の修理では、この年代を裏づける墨書も見つかった。本堂の敷居の裏に大工が記した「明暦4年」の文字である。明暦4年は改元前の万治元年と同じ年で、敷居は建立以来一度も動かされた形跡がないため、記録どおりの建立年が確かめられた。元禄3年(1690年)や享和2年(1802年)の修理を示す墨書、部材を組むときの目印として大工が描いた絵番付も見つかっている。

天台寺の見どころ

本堂

天台寺本堂は桁行5間・梁間5間の一重の建物で、屋根は入母屋造、正面に1間の向拝を付ける。内部は、仏と僧のための内陣と、参拝者が座る手前の外陣とがはっきり仕切られ、天台宗を含む密教寺院の伝統的な間取りをとる。

内陣奥の壁際には、指定の評価にも挙げられた大型の厨子が造り付けられている。黒漆と朱漆に金泥を配した仕上げで、かつては本尊の聖観音立像が秘仏としてここに納められていた。本尊は現在、本堂裏の収蔵庫に安置され、本堂には複製の像が祀られている。

本堂を見るときは、軒下から上へ目を移したい。正面の階段上部に突き出す象鼻(ぞうばな)は修理で古い塗装を落として塗り直され、蟇股や組物にも彩色が施された。側面では、瓶の形をした大瓶束が目にとまる。

仁王門

天台寺仁王門は切妻造の八脚門で、本堂へ上る参道の途中に立つ。門に安置された仁王像は、寺の伝えでは鎌倉時代の仏師運慶の作とされる。病や怪我のある箇所と同じ場所に札を貼ると治るといわれ、現在はパネルに札を貼る形になっている。寺は、男性は向かって右の阿形像に、女性は左の吽形像にお参りするよう案内している。

杉板の屋根

いま天台寺を訪れて最初に気づくのは屋根の姿だろう。修理前の本堂は銅板葺、仁王門は鉄板葺で、いずれも戦後に替えられたものだった。文化庁のデータベースは今もこの金属屋根の形式を記している。修理の途中で古い屋根材が見つかり、文献と照らし合わせた結果、建立当初は2棟とも杉板で葺かれていたことが判明し、寺は文化庁の指導を受けて当初の姿に戻すことを決めた。

本堂は厚さ約1センチメートルの杉板を竹釘で重ねて留める「とち葺」、仁王門はさらに薄い約3ミリメートルの板を用いる柿葺である。板は杉丸太を割って取る手割りで、表面にはわずかな凹凸が残る。板の厚みは上下で少しずつ変えてあり、板どうしが密着せずにできるすき間が、雨のあと屋根を早く乾かす。棟の箱棟は銅板で覆われている。

天台寺の見学方法とアクセス

天台寺の拝観時間は、4月から10月が午前8時30分から午後5時、11月から3月が午前8時30分から午後4時。拝観料は1人500円で、中学生以下は無料。境内の御札所で納める。文化財の保存管理や防災設備の維持のため、2024年4月1日から現在の額に改められた。

本堂と仁王門は拝観時間内であれば外観をいつでも見られる。本堂内部にどこまで入れるか、堂内で撮影してよいかは寺の公式サイトに記載がないため、撮影の前に御札所で確かめておきたい。

公共交通機関では、東北新幹線の二戸駅からJRバス東北の二戸-浄法寺線に乗り、「天台寺」停留所まで約23分、運賃は730円。JRイーストパスやジャパン・レール・パスでも乗車できる。平日の時刻表では二戸駅発が1日7本なので、帰りの便も先に確かめておくとよい。停留所から天台寺までは徒歩約25分で、最後は石段の参道を上り、仁王門をくぐって本堂に至る。

車の場合は、八戸自動車道の浄法寺インターチェンジから約5分。寺の旧公式サイトは、浄法寺歴史民俗資料館の少し先にある専用駐車場を案内しており、大型車は停められず12月から3月は閉鎖される。ボランティアガイドによる境内の無料案内もあり、寺の公式サイトにある二戸市の観光協会へ7日前までに申し込む。

Q&A

Q天台寺の本堂と仁王門は拝観できますか?拝観時間と拝観料は?
A拝観できます。天台寺の拝観時間は4月から10月が午前8時30分から午後5時、11月から3月が午前8時30分から午後4時です。拝観料は500円(中学生以下無料)で、御札所で納めます。本堂内部への立ち入りや堂内の撮影は、御札所で確認してください。
Q二戸駅から天台寺へはどう行けばよいですか?
A二戸駅からJRバス東北の浄法寺行きに乗り、「天台寺」で降ります。乗車約23分、運賃730円で、JRイーストパスやジャパン・レール・パスも使えます。停留所から天台寺までは徒歩約25分です。車なら八戸自動車道の浄法寺インターチェンジから約5分です。
Q天台寺の本堂と仁王門はいつ、誰が建てたのですか?
A盛岡藩主の南部重直です。天台寺の仁王門は明暦3年(1657年)、本堂は万治元年(1658年)に完成しました。2013年から2020年の修理で、本堂の敷居の裏から「明暦4年」(1658年)の墨書が見つかり、建立年が裏づけられました。
Q天台寺の本堂と仁王門の屋根が板葺きなのはなぜですか?
A2020年に終わった修理で古い屋根材が見つかり、天台寺の2棟は建立当初、杉板で葺かれていたことが分かったためです。戦後の銅板・鉄板をやめ、本堂は約1センチメートル厚のとち葺、仁王門は約3ミリメートル厚の柿葺に戻されました。
Q天台寺の本尊の聖観音立像は本堂で見られますか?
A本堂に祀られているのは複製です。天台寺の本尊はかつて本堂内陣の厨子に秘仏として納められていましたが、現在は本堂裏の収蔵庫に安置されています。

基本情報

名称天台寺(本堂・仁王門)
所在地岩手県二戸市浄法寺町御山
指定区分重要文化財(建造物)
指定年平成2年(1990年)
員数2棟(附 棟札11枚、造営文書1通)
寸法本堂:桁行5間・梁間5間、向拝1間/仁王門:八脚門(文化庁データベースに寸法の記載なし)
所有者天台寺
公開状況外観は拝観可。午前8時30分~午後5時(冬期は午後4時まで)。拝観料500円(中学生以下無料)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「天台寺 本堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/114
文化庁 国指定文化財等データベース「天台寺 仁王門」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/115
文化遺産オンライン「天台寺 本堂」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/120924
文化遺産オンライン「天台寺 仁王門」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/154655
天台寺「天台寺の紹介」
https://tendaiji.or.jp/about/
天台寺「境内・周辺案内」
https://tendaiji.or.jp/info/
天台寺「保存修理の経過について」
https://tendaiji.or.jp/repair/
天台寺「平成27年10月の工事進捗」
https://tendaiji.or.jp/h27-10/
天台寺「平成29年4月の工事進捗」
https://tendaiji.or.jp/h29-4/
天台寺「平成30年5月の工事進捗」
https://tendaiji.or.jp/h30-5/
天台寺「令和元年6月の工事進捗」
https://tendaiji.or.jp/r1-6/
天台寺「令和元年9月の工事進捗」
https://tendaiji.or.jp/r1-9/
天台寺「令和元年11月の工事進捗」
https://tendaiji.or.jp/r1-11/
天台寺(旧公式サイト)「交通」
https://www.tendaiji.or.jp/access.html
JRバス東北「二戸-浄法寺」時刻表・運賃
https://www.jrbustohoku.co.jp/route/14/172/

最終更新日: 2026.10.05

同エリアの文化財

いずれも同じエリアの徒歩圏内にあるので、あわせての見学がおすすめです。

  1. 天台寺 仁王門 0.00 km
  2. 天台寺 本堂 0.07 km