かめびし十二号蔵
敷地東辺の北寄りに位置し、十一号蔵の北妻面に接して南北棟で建つのが十二号蔵である。桁行7.4メートル、梁間6メートルの規模で、東側の屋根面が長く伸びる招き造としている点に特徴がある。外装はもと焼杉の縦板張で、東の桁行面には水切瓦を付けて変化をもたせている。
宝暦3年(1753年)に岡田家が創業したかめびし屋は、引田で270年余にわたり醤油を醸してきた。麹づくりがほぼ機械化された時代にあって、ただ一軒むしろ麹製法を守り、いまや国内で唯一この製法を続ける醸造元となっている。
屋根は東側の面が長く西側が短い招き造で、左右非対称のシルエットをつくる。外壁はもと焼杉の縦板張とし、板を焼いて炭化させることで耐久性と防腐性を高めている。東の桁行面には水切瓦を数段差し込み、雨水を切って壁を守るとともに、横に走る瓦の線が外観に変化を与えている。
指定の理由と価値
登録18棟のなかで建築面積42平方メートルと最も小さいが、招き造の屋根、焼杉の縦板張、水切瓦という意匠の要素が凝縮されている。土蔵の白壁やべんがら塗りとは異なる、板張りの質感がこの蔵の個性であり、敷地内の建物の多様さを示している。
かめびしの製法の核心が、機械ではなく手編みの筵の上で麹を育てるむしろ麹製法である。筵が余分な水分を吸い、温度を平らにならすことで独特の麹が生まれ、その麹が味の源だと蔵は考えている。
見どころ
かめびしは壁の深い赤で知られる。建物はべんがら(赤茶色の顔料)で塗られ、灰色の瓦の下に赤い壁面が連続する。この蔵に特有の街路景観である。
屋根を横から見ると、東側だけが長く伸びる招き造の形がよくわかる。東面に走る水切瓦の横線と、焼杉板の黒い縦の質感にも目を向けたい。小さな蔵だが、意匠の見どころが詰まっており、他の土蔵とは違う表情をもっている。
敷地内の店舗では醤油やもろみを試して購入でき、醤油風味の菓子も並ぶ。茶屋ではうどんも供される。稼働中の醸造所であり私有地であるため、多くの建物は見学に開かれておらず、営業時間は季節で変わる。あらかじめ確認しておくとよい。
Q&A
- かめびし十二号蔵とはどのような建物ですか。
- 香川県東かがわ市引田のかめびし屋を構成する18棟のうちの一棟で、いずれも2003年に登録有形文化財となった。この建物は大正末期のもので、東側屋根面が長い招き造の蔵として使われてきた。
- かめびしが守る「むしろ麹製法」とは何ですか。
- 麹菌をつけた蒸し大豆と炒り小麦を、い草や稲わらで編んだ筵の上に広げて数日寝かせる麹づくりの製法である。筵が水分を調節し温度を均一に保つ。この製法を続けるのは日本でかめびし屋だけである。
- この建物の内部は見学できますか。
- ここは現役の醸造所であり民間企業の私有地であるため、この建物を含め大半の建物は内部非公開である。敷地内の別の建物にある店舗や茶屋では、醤油・もろみ・うどんを楽しめる。営業状況は季節で変わるため、訪問前に確認したい。
- いつ、どのような理由で登録されましたか。
- 2003年(平成15年)9月19日に登録有形文化財となった。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。べんがら色の壁が引田の街路景観を形づくる、かめびし屋の歴史的な建物群の一部として評価されている。
基本データ
| 名称 | かめびし十二号蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 香川県東かがわ市引田2174 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 37-0165 |
| 登録年月日 | 2003年(平成15年)9月19日 登録 |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 年代 | 大正末期 |
| 構造及び形式等 | 木造平屋建、瓦葺一部鉄板葺、建築面積42平方メートル |
| 員数 | 1棟 |
| 所有者 | 合資会社かめびし |
| 公開状況 | 現役の醸造所・私有地のため大半の建物は内部非公開。敷地内に店舗・茶屋あり(営業状況は季節により変動)。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003608
- かめびし屋(東かがわ市観光情報サイト)
- https://higashikagawa.net/sightseeing/kamebishiya
- かめびし屋 公式サイト
- https://kamebishi.co.jp/
最終更新日: 2026.07.02