かめびし作業場
主屋(事務室・展示室)の東方、離れ座敷(資材置場)の北方に建つのが作業場である。桁行15メートル、梁間7メートルの切妻造・桟瓦葺の木造2階建てで、東端だけを3階建てとする。もと2階は醤油の殺菌加熱、すなわち火入れの場として使われ、3階部分は空気抜きの役割をもったとされる。
宝暦3年(1753年)に岡田家が創業したかめびし屋は、引田で270年余にわたり醤油を醸してきた。麹づくりがほぼ機械化された時代にあって、ただ一軒むしろ麹製法を守り、いまや国内で唯一この製法を続ける醸造元となっている。
切妻造・桟瓦葺の木造2階建てを基本とし、東端のみ一段高い3階建てとする変則的な構成をとる。2階では搾りたての醤油を加熱して殺菌する火入れの作業が行われ、そこで生じる熱気や湯気を、最上部の3階から抜くしくみだったと考えられている。敷地内で最も高くそびえる建物である。
指定の理由と価値
醤油づくりの最終工程に近い火入れ(加熱殺菌)の場を、3階建てという立体的な構成で成り立たせた点に特徴がある。熱と蒸気を上へ逃がすために東端を高くする合理的な造りは、醸造の実務が建築の形を決めた例といえる。敷地内で唯一の3階建てとして、遠くからでも位置がわかる。
かめびしの製法の核心が、機械ではなく手編みの筵の上で麹を育てるむしろ麹製法である。筵が余分な水分を吸い、温度を平らにならすことで独特の麹が生まれ、その麹が味の源だと蔵は考えている。
見どころ
かめびしは壁の深い赤で知られる。建物はべんがら(赤茶色の顔料)で塗られ、灰色の瓦の下に赤い壁面が連続する。この蔵に特有の街路景観である。
敷地のなかで最も高い、3階建ての東端を目印に探すとよい。もと火入れの熱気を抜くために設けられた最上階が、建物全体に独特の縦長のシルエットを与えている。醸造の各工程が別々の建物で行われていたことを、この高さが教えてくれる。
敷地内の店舗では醤油やもろみを試して購入でき、醤油風味の菓子も並ぶ。茶屋ではうどんも供される。稼働中の醸造所であり私有地であるため、多くの建物は見学に開かれておらず、営業時間は季節で変わる。あらかじめ確認しておくとよい。
Q&A
- かめびし作業場とはどのような建物ですか。
- 香川県東かがわ市引田のかめびし屋を構成する18棟のうちの一棟で、いずれも2003年に登録有形文化財となった。この建物は大正末期のもので、もと2階が醤油の火入れ場、3階が空気抜きとして使われてきた。
- かめびしが守る「むしろ麹製法」とは何ですか。
- 麹菌をつけた蒸し大豆と炒り小麦を、い草や稲わらで編んだ筵の上に広げて数日寝かせる麹づくりの製法である。筵が水分を調節し温度を均一に保つ。この製法を続けるのは日本でかめびし屋だけである。
- この建物の内部は見学できますか。
- ここは現役の醸造所であり民間企業の私有地であるため、この建物を含め大半の建物は内部非公開である。敷地内の別の建物にある店舗や茶屋では、醤油・もろみ・うどんを楽しめる。営業状況は季節で変わるため、訪問前に確認したい。
- いつ、どのような理由で登録されましたか。
- 2003年(平成15年)9月19日に登録有形文化財となった。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。べんがら色の壁が引田の街路景観を形づくる、かめびし屋の歴史的な建物群の一部として評価されている。
基本データ
| 名称 | かめびし作業場 |
|---|---|
| 所在地 | 香川県東かがわ市引田2174 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 37-0168 |
| 登録年月日 | 2003年(平成15年)9月19日 登録 |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 年代 | 大正末期 |
| 構造及び形式等 | 木造3階建、瓦葺、建築面積105平方メートル |
| 員数 | 1棟 |
| 所有者 | 合資会社かめびし |
| 公開状況 | 現役の醸造所・私有地のため大半の建物は内部非公開。敷地内に店舗・茶屋あり(営業状況は季節により変動)。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003611
- かめびし屋(東かがわ市観光情報サイト)
- https://higashikagawa.net/sightseeing/kamebishiya
- かめびし屋 公式サイト
- https://kamebishi.co.jp/
最終更新日: 2026.07.02