かめびし三号蔵
仕込み部屋の東方、敷地の東南隅に、敷地東辺に沿って南北棟で建つのが三号蔵である。桁行11メートル、梁間7.7メートルの切妻造・本瓦葺の平屋建て。現在は諸味の貯蔵庫として使われているが、屋根に越屋根を上げていることから、もとは釜場であったとみられる。
江戸時代の最盛期、引田には10軒ほどの醤油屋や酒蔵があったと伝わるが、現存するのは宝暦3年(1753年)に岡田家が創業したかめびし屋のみである。18代目を数える現在も、筵の上で麹をつくる製法を守り続けている。
切妻の本瓦葺屋根の上に、さらに小さな越屋根を載せる。越屋根は室内の熱や蒸気を逃がすための造作で、これがあることから、この蔵はもともと大豆を蒸したり原料を煮たりする釜場だったと考えられている。現在は諸味を貯蔵する蔵に転用されている。
指定の理由と価値
用途の変化を屋根の形が語る一例である。越屋根という熱気抜きの装置が、かつての釜場としての機能を示す。醸造の各工程に応じて建物が使い分けられ、時代とともに役割を変えてきた敷地の歴史が、この一棟に読み取れる。
筵の上での麹づくりは手間と時間がかかり、それゆえ大半の蔵が機械化した。かめびしは古い方法を守り、麹菌をつけた大豆と小麦を筵に広げておよそ3日間寝かせる。筵が水分と熱を釣り合わせ、麹は均一に育っていく。
見どころ
灰色の瓦の下に続くべんがら色の壁が、かめびしの敷地を特徴づける。道路の両側の建物に及ぶこの塗りが、敷地全体を一続きの街並みとしてまとめており、引田のなかでも他に例を見ない。
屋根の上に載る越屋根を見つけたい。棟の上にもう一段小さな屋根が乗る独特の形で、そこから熱と湿気が抜けるようになっている。今は諸味蔵だが、その越屋根が、火を扱う釜場だった頃の名残を伝えている。
店舗と茶屋では、醤油・もろみ・菓子・うどんを楽しめるが、醸造所そのものは現役かつ私有の施設であり、大半の建物には立ち入れない。営業日や時間は年間を通じて、とくに仕込みの季節に変わるため、最新の情報を確かめて計画したい。
Q&A
- かめびし三号蔵とはどのような建物ですか。
- 香川県東かがわ市引田のかめびし屋を構成する18棟のうちの一棟で、いずれも2003年に登録有形文化財となった。この建物は昭和初期のもので、諸味貯蔵庫。もとは釜場とみられるとして使われてきた。
- かめびしが守る「むしろ麹製法」とは何ですか。
- 麹菌をつけた蒸し大豆と炒り小麦を、い草や稲わらで編んだ筵の上に広げて数日寝かせる麹づくりの製法である。筵が水分を調節し温度を均一に保つ。この製法を続けるのは日本でかめびし屋だけである。
- この建物の内部は見学できますか。
- ここは現役の醸造所であり民間企業の私有地であるため、この建物を含め大半の建物は内部非公開である。敷地内の別の建物にある店舗や茶屋では、醤油・もろみ・うどんを楽しめる。営業状況は季節で変わるため、訪問前に確認したい。
- いつ、どのような理由で登録されましたか。
- 2003年(平成15年)9月19日に登録有形文化財となった。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。べんがら色の壁が引田の街路景観を形づくる、かめびし屋の歴史的な建物群の一部として評価されている。
基本データ
| 名称 | かめびし三号蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 香川県東かがわ市引田2174 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 37-0162 |
| 登録年月日 | 2003年(平成15年)9月19日 登録 |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 年代 | 昭和初期 |
| 構造及び形式等 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積80平方メートル |
| 員数 | 1棟 |
| 所有者 | 合資会社かめびし |
| 公開状況 | 現役の醸造所・私有地のため大半の建物は内部非公開。敷地内に店舗・茶屋あり(営業状況は季節により変動)。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003605
- かめびし屋(東かがわ市観光情報サイト)
- https://higashikagawa.net/sightseeing/kamebishiya
- かめびし屋 公式サイト
- https://kamebishi.co.jp/
最終更新日: 2026.07.02