石で積んだ浄土真宗の本堂
新照寺本堂は、鹿児島県姶良市住吉の新照寺にある明治25年(1892年)上棟の石造平屋建の本堂で、平成20年(2008年)4月18日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「しんしょうじほんどう」、登録番号は46-0069である。
外周の壁を木ではなく石で積み上げ、その上に桟瓦葺の大屋根を架ける。正面の梁間は16メートル、奥行きにあたる桁行は18メートル、建築面積は290平方メートルある。屋根の形は寄棟造で、入口を屋根の短辺の側に設ける妻入とする。
新照寺本堂の年代は、堂に残る棟札から上棟の年として確かめられている。姶良市は本堂の完成を明治26年(1893年)と紹介しており、1年の差は上棟と竣工の違いとも考えられるが、はっきりしない。
「再現することが容易でないもの」とされた理由
同じ日に登録された新照寺の4件のうち、登録基準が「再現することが容易でないもの」となっているのは新照寺本堂だけである。正門・石塀・通用門の3件はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、本堂は景観ではなく建物そのものの成り立ちが評価された。
日本の仏堂は木造がふつうで、壁まで石で積んだ本堂は数が少ない。新照寺本堂の場合、その石の壁を誰が築いたかまで記録が残る。棟札には上棟の年とともに石工の棟梁と大工の棟梁の名が記され、石の壁と木の小屋組を別の職人がそれぞれ受け持ったことがうかがえる。文化庁の解説は2人の名を挙げていないが、石工と大工が並んで名を残した棟札は、この堂が石と木の協働でできたことを示す一次の証拠になっている。
姶良市は、石材による本堂の建立が、明治9年(1876年)に禁制が解かれるまでひそかに念仏を守ってきた「かくれ念仏」の講の門徒の願いから始まったと紹介している。石は寺師の黒葛野から切り出したと伝わる。
新照寺本堂の見どころ
まず正面の屋根を見たい。新照寺本堂は大屋根の正面側を途中で切り上げ、そこから前へ屋根を葺き降ろして向拝をつくっている。寄棟の大きな屋根が石の箱の上に載り、正面だけ軒が前へ伸びて参詣者を迎える形になる。
次に側面と背面へ回る。外周の石壁には、側面と背面にそれぞれ2か所ずつ、壁から張り出した控壁が設けてある。屋根の重さを受ける長い石壁が外へ倒れないように支える工夫で、木造の堂には見られない部分である。
四隅の角もよく見ておきたい。新照寺本堂の隅は、石を互い違いに突き出して積む算木積の形をとり、文化庁が「隅石風」と呼ぶ意匠になっている。平らな壁の面に対して角だけ石が凹凸を見せるので、斜めから眺めると輪郭がはっきり読める。
新照寺本堂の見学
新照寺本堂はいまも法要に使われている本堂で、堂内の公開日時や拝観料について寺からの案内は見当たらない。内部に上がれるかどうかは寺の都合によるので、法要の時間を避け、寺の方に尋ねてから入りたい。撮影についても案内がないため、堂内を撮るときは許可を得ておくのがよい。
外観は、南の正門をくぐった位置から正面の向拝と寄棟の屋根を見上げるのがよい。控壁と隅の算木積は、西側の通用門から境内に入ると本堂の側面が近く、確かめやすい。
Q&A
- 新照寺本堂はいつ建てられましたか?
- 文化庁のデータベースは、棟札で確かめられた上棟の年として明治25年(1892年)としています。姶良市は本堂の完成を明治26年(1893年)と紹介しています。
- 新照寺本堂の大きさと構造は?
- 正面の梁間16メートル、桁行18メートル、建築面積290平方メートルの石造平屋建です。屋根は寄棟造・妻入の桟瓦葺で、正面に向拝が付きます。
- 新照寺本堂はなぜ登録有形文化財になったのですか?
- 登録基準は「再現することが容易でないもの」です。壁まで石で積んだ仏堂であることに加え、棟札により上棟の年と石工・大工の棟梁が判明している点が文化庁の解説に挙げられています。
- 新照寺本堂の中は見学できますか?
- 堂内の公開日時についての案内はありません。いまも法要に使われる本堂なので、内部に上がりたい場合は寺の方に尋ねてください。外観は正門の内側から見られます。
- 新照寺本堂の外壁で見ておきたいところは?
- 側面と背面に2か所ずつある控壁と、四隅を算木積にした隅石風の角です。どちらも木造の本堂には無い部分です。
基本情報
| 名称 | 新照寺本堂(しんしょうじほんどう) |
|---|---|
| 所在地 | 鹿児島県姶良市住吉字櫻木545 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)、登録番号46-0069 |
| 指定年 | 平成20年(2008年)4月18日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 石造平屋建、寄棟造妻入、桟瓦葺、梁間16メートル・桁行18メートル、建築面積290平方メートル |
| 所有者 | 新照寺 |
| 公開状況 | 外観は見学可。堂内の公開日時の案内なし(寺に要確認) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):新照寺本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007152
- 文化遺産オンライン:新照寺本堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/120024
- 鹿児島県教育庁文化財課「かごしま文化財事典」:新照寺本堂
- https://k-bunkazai-school.com/cultural/f-q-60067/
- 姶良市:国登録文化財(新照寺本堂・正門・石塀・通用門)
- https://www.city.aira.lg.jp/bunkazai/kanko/bunka/bunkazai/kunitoroku.html
最終更新日: 2026.09.29