越後一宮、弥彦山のふもとの社

彌彦神社は、新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦にある越後国一宮で、明治45年(1912年)の大火で焼けた社殿が大正5年(1916年)に再建され、本殿以下25件が平成10年(1998年)に国の登録有形文化財に登録された。御祭神は伊夜日子大神(天香山命)で、地元では「おやひこさま」の呼び名で親しまれている。神社によれば、歴史的な読みは「いやひこ」で、現在は「やひこ」と言い習わされている。文化庁の登録名のふりがなは「いやひこじんじゃ」である。

社伝では、越の国を開いた天香山命が神去り、弥彦山に葬られたのを御子の天五田根命がまつったのが始まりとされる。国史への初出は『続日本後紀』の天長10年(833)の条で、「越後國蒲原郡伊夜比古神」が名神に預かったと記す。『万葉集』巻十六には「いやひこ」を詠んだ歌が2首あり、延喜5年(905)奏進の『延喜式』では越後国でただ一つの名神大社とされた。

中世から近世にかけては、源頼朝の神領寄進、上杉家による社殿修造、江戸幕府の朱印地安堵などが続いたと神社は伝える。明治4年(1871年)には国幣中社に列した。

明治45年の大火と大正5年の再建

明治45年(1912年)3月11日、門前町から出た火が燃え移り、本殿以下の社殿が焼け落ちた。再建は大正5年(1916年)に成り、神社はこれを「旧に倍する荘厳且つ壮大」な社殿と記している。なお、神社公式サイトの社殿の案内には大正5年に「1915」と西暦を添えた箇所があるが、大正5年は1916年にあたり、文化庁の記録も1916年である。

文化庁の記録では、設計は東京帝国大学の伊東忠太と桐山平太郎、工事の監督は奥本五一で、飾金具の意匠は大江新太郎ら明治神宮造営局のグループが担った。弥彦村によれば、工事は新潟県に委託された直営工事だった。再建にあたっては、弥彦山を背に負う位置へ社殿が移されている。

境内の御神木の手前には旧本殿の跡があり、焼失前は拝殿の前にあったという玉の橋は、いまは一之鳥居をくぐった先の御手洗川の上手に架かる。焼失前の配置の手がかりは、こうしたところに拾える。

境内の配置と歩く順序

表参道を進むと、朱塗りの一之鳥居が境内の入口に立つ。手前の右に社号標、左に制札台がある。鳥居をくぐると御手洗川に石橋が架かり、その上手に玉の橋が見える。参道を進むと、やや奥まって絵馬殿が建ち、その先で手水舎と神符授与所が向かい合う。

参道は手水舎のところで左へ折れ、石段の上に石造の二之鳥居が立つ。二之鳥居の手前右手の高みには御神木と神木石柵があり、二之鳥居をくぐって神馬舎のところで折れた突き当たりに斎館(旧勅使館)が建つ。二之鳥居から先、参道の右手には舞殿・楽舎・参集殿(旧拝観所)が並び、その上段に摂社・末社が横一列に建つ。

随神門をくぐると拝殿の前に出る。拝殿の後方には左に神饌所、右に伺候所が控え、祝詞舎・幣殿・石廊下を経て、瑞垣に囲まれた本殿へと続く。本殿は弥彦山を背負うように建っている。随神門の近くには鼓楼があり、時を告げる太鼓がいまも打たれている。

登録有形文化財25件

平成10年(1998年)9月2日に登録されたのは、本殿・幣殿・祝詞舎・拝殿・神饌所・瑞垣及び裏門・伺候所・摂社乙子神社・摂社今山神社・摂社草薙神社・一之鳥居・石廊下・舞殿・楽舎・参集殿(旧拝観所)・二之鳥居・手水舎・斎館(旧勅使館)・鼓楼・絵馬殿・制札台・神符授与所・神木石柵・石橋・狛犬の25件で、登録番号は15-0003から15-0027まで続く。弥彦村によれば、新潟県で2番目の登録有形文化財だった。

登録の基準はいずれも「造形の規範となっているもの」である。年代は25件とも大正5年(1916年)とされ、近代の建築家が一つの神社の境内をまとめて設計した例として、社殿だけでなく鳥居・橋・石柵・狛犬までがそろって残る。

境内には、このほか元禄年間の社殿を伝える末社十柱神社のように、国の別の制度で指定を受けた建物もある。随神門は昭和15年(1940年)、参道入口の大鳥居は昭和57年(1982年)の建立で、登録の対象には含まれていない。

参拝と見学のきまり

境内は自由に参拝できる。拝殿に昇って祈願を受ける御祈祷は、拝殿に向かって右手の祈祷殿受付で午前8時30分から午後4時まで受け付けており、個人は予約不要で、所要は20分から30分ほどである。拝殿内での撮影と録音は断られている。御札・御守・御朱印は授与所で午前8時30分から午後4時まで授与される。

本殿・幣殿・祝詞舎など拝殿より奥の建物は、拝殿前や境内から外観を眺めることになる。宝物殿は午前9時から午後4時まで、月曜(休日の場合は翌日)と1月・2月は休館で、拝観料は大人300円、高校・大学生200円、小学・中学生100円である。

祭礼と神楽

彌彦神社では年に400回を超える祭典が行われると神社は案内している。最もにぎわうのは7月25日夜の燈籠神事で、2基の御神輿に稚児や神職が供奉し、造花で飾った大燈籠が村内を巡る。舞楽の大々神楽は4月18日の妻戸大神例祭で全13曲が舞殿で奏され、春と秋の土曜日にも1、2曲が奉奏される。

鼓楼の大太鼓は、毎朝午前5時(11月から3月は午前6時)、正午、午後10時の1日3回、時を告げて打ち鳴らされる。11月1日から24日までは菊まつりが開かれる。

アクセス

鉄道ではJR弥彦線の終点、弥彦駅が最寄りで、神社までは徒歩15分ほどである。上越新幹線の燕三条駅で弥彦線に乗り換えるか、信越本線の東三条駅、または越後線の吉田駅で乗り換える。燕三条駅からタクシーなら約30分かかる。

車では北陸自動車道の三条燕インターチェンジまたは巻潟東インターチェンジから約30分。神社の周辺には無料の駐車場があり、神社脇の駐車場(大型バス20台・普通車50台)と村営第一駐車場(普通車345台ほか)から拝殿までは歩いて約5分である。菊まつりの期間は一部が有料になる。社務所の電話は0256-94-2001。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 彌彦神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000658
国指定文化財等データベース(文化庁)— 彌彦神社狛犬
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000682
弥彦村 — 国登録有形文化財
https://www.vill.yahiko.niigata.jp/culture/?content=582
弥彦村 — 彌彦神社
https://www.vill.yahiko.niigata.jp/culture/?content=458
越後一宮 彌彦神社 — 御由緒
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/history/yuisyo/index.html
越後一宮 彌彦神社 — 御本殿・拝殿
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/meguru/gosyaden/index.html
越後一宮 彌彦神社 — 御祈祷(御祓)
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/visit/gokitou/index.html
越後一宮 彌彦神社 — 御札・御守・御朱印
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/visit/gift/index.html
越後一宮 彌彦神社 — 宝物殿
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/meguru/homotsuden/index.html
越後一宮 彌彦神社 — 年間の主な祭典・行事
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/event/index.html
越後一宮 彌彦神社 — 交通アクセス
https://www.yahiko-jinjya.or.jp/access/index.html

最終更新日: 2026.10.01

基本情報

名称彌彦神社
所在地新潟県西蒲原郡弥彦村大字弥彦2898
所有者宗教法人彌彦神社
指定登録有形文化財 25件
座標37.70626, 138.82694