木造の形をコンクリートで写した僧侶の浴室

西教寺浴室は、滋賀県大津市坂本本町の天台真盛宗総本山西教寺にある昭和6年(1931年)建築の鉄筋コンクリート造の浴室で、平成13年(2001年)8月28日に登録有形文化財に登録された。読みは「さいきょうじよくしつ」。

書院の北東にあり、長く僧侶の浴室として使われてきた。西教寺で登録有形文化財になっている18棟のうち、鉄筋コンクリート造はこの浴室だけで、ほかはすべて木造か土蔵造である。

平屋建で、南北に棟を通した切妻造・妻入とし、建築面積は41平方メートル。平面は棟の通りで左右に分かれ、手前の半分が脱衣室、奥の半分が浴槽になる。

登録の理由:木造の形式を忠実に再現したRC造

西教寺浴室は「造形の規範となっているもの」として登録された。文化庁の解説が評価するのは、材料を鉄筋コンクリートに替えながら、見た目は木造の建物の作法をそのまま写している点である。

柱、長押、柱の上で桁を受ける舟肘木、さらに妻の破風板と懸魚まで、本来は木で作る部材の形がコンクリートで忠実に再現されている。湯気と水を毎日浴びる浴室を耐久性の高い構造でつくりつつ、寺の建物として周囲の木造建築と違和感なく並ぶように仕上げた設計である。

屋根の葺き材については、文化庁データベースの記載が一致しない。構造欄は「鉄板葺」、解説文は「銅板葺」としており、どちらが現況かは一次資料からは確定できない。本稿では両方の記載を示すにとどめる。

西教寺浴室の見どころ

見どころは妻面に集まっている。切妻の三角形の縁を破風が走り、その頂に懸魚が下がる。木造の寺院建築で見慣れた構えだが、ここでは全体がコンクリートで成形されている。近づいて表面の質感を確かめると、木目のない均質な肌に、木造の部材の輪郭だけが写されていることが分かる。

側面では、柱と長押が壁面に格子状の線を描き、柱頭の舟肘木が桁を受ける。昭和初期に寺院が鉄筋コンクリートを取り入れたとき、新しい材料で伝統の形をどう表すかを試みた記録として、西教寺浴室は小さいながら貴重な例になっている。

西教寺浴室の見学方法

西教寺浴室は寺の生活を支える奥向きの建物で、内部は公開されていない。西教寺文化遺産ガイドの境内図でも見学先に挙げられておらず、書院の北東という位置は通常の拝観範囲から外れる。

コンクリートで写した懸魚や破風を見たい場合は、訪問前に寺へ相談しておくのが確実である。

Q&A

Q西教寺浴室はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A昭和6年(1931年)の建築で、平成13年(2001年)8月28日に登録有形文化財に登録されました。
Q西教寺浴室はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A鉄筋コンクリート造でありながら、柱・長押・舟肘木・破風・懸魚といった木造の形式を忠実に再現している点が評価されました。登録基準は「造形の規範となっているもの」です。
Q西教寺浴室の内部はどのような間取りですか。
A棟の通りで左右に分かれ、手前の半分が脱衣室、奥の半分が浴槽です。
Q西教寺浴室の屋根は何で葺かれていますか。
A文化庁データベースの構造欄は鉄板葺、解説文は銅板葺と記しており、記載が一致していません。
Q西教寺浴室は見学できますか。
A内部は公開されておらず、境内図の見学先にも含まれていません。見学を希望する場合は寺に問い合わせてください。

基本データ

名称西教寺浴室(さいきょうじよくしつ)
所在地滋賀県大津市坂本本町3210
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2001年(登録)
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造平屋建、建築面積41平方メートル
所有者宗教法人西教寺
公開状況一般公開の案内なし(内部非公開)

参考文献

西教寺浴室(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002276
西教寺書院(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002273
境内図(西教寺文化遺産ガイド)
https://saikyojiguide.jp/map/

最終更新日: 2026.09.27