本堂の前で手を清める小堂
祐天寺水屋は、東京都目黒区中目黒の祐天寺境内で本堂と仁王門の間に建つ弘化3年(1846年)の水屋で、平成25年(2013年)12月24日に国の登録有形文化財に登録された。参拝者が本堂へ向かう前に手と口を清めるための、四方を吹き放しにした小さな建物で、面積は3.0平方メートルしかない。
寺の年表によれば、祐天寺水屋は弘化3年6月24日に上棟し、天井の中央に竜の彫刻が施された。棟札には当時の住職祐興の名号とともに、役僧の学翁、納所の祐巖、大工棟梁の石川常蔵と西宮清忠の名が記されている。翌月には小松石で水盤が造られ、正面に「浄水」の2字が彫られた。揮毫したのは龍眠と号した正木四郎左衛門で、浅草雷門前で海苔を商った江戸後期の書家である。
昭和58年(1983年)には、法然上人の降誕850年と祐天上人の誕生350年を記念する事業の一環として、屋根の葺き替えが行われた。
祐天寺にはかつてもう一つ水屋があった。地蔵堂の前に寛政元年(1789年)にゑ組が寄進し、明治29年(1896年)に再建した水屋で、大正12年(1923年)の関東大震災で全壊したと記録されている。登録されているのは、本堂の前に建つ弘化3年の祐天寺水屋のほうである。
小さな建物に詰めた技
文化庁の解説によると、祐天寺水屋は南北棟で、方1間の入母屋造、銅板葺とする。角柱をわずかに内側へ傾けて立てる内転びとし、四方を吹き放つ。柱の頂部を結ぶ頭貫は虹梁風に形を整え、隅と中備には三斗の組物を置いて丸桁を受ける。軒の内側ではケヤキの板支輪が折上天井を支え、天井の中央には竜の丸彫りを飾る。
柱を内転びに立てると、建物は下から見上げたときに引き締まって見える。わずか3平方メートルの建物に、本堂や門と同じ組物と天井の手法を惜しまず使っている点が、この水屋の見どころである。文化庁は、要所の彫刻も目を引く秀作と評している。登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
天井の竜を見上げる
祐天寺水屋の前に立ったら、水盤よりもまず天井を見上げたい。四周から板支輪が斜めに立ち上がり、その先の折上天井の中央に竜が丸彫りで据えられている。浮き彫りではなく立体の丸彫りなので、見る位置を変えると竜の姿勢も違って見える。
水盤の正面の「浄水」の文字は、柄杓を取る前に確かめておきたい。龍眠の筆で、建物と同じ弘化3年の作である。
柱の内転びは、水屋の少し外から柱の並びを見通すとわかる。四隅の柱が上へ行くほどわずかに寄っているのがわかるはずだ。
祐天寺水屋の見学
祐天寺水屋は四方が開いた建物で、境内が開いていればいつでも見られる。天井の竜は軒の陰にあるので、晴れた日の日中のほうが細部を追いやすい。手水を使う参拝者の妨げにならないよう、撮影は水屋の脇から行いたい。
境内への行き方と参拝の時間は祐天寺のページにまとめてある。
Q&A
- 祐天寺水屋の天井には何がありますか?
- 折上天井の中央に竜の丸彫りが飾られています。寺の年表によれば、弘化3年(1846年)の上棟の際に施されたものです。
- 祐天寺水屋はいつ建てられたのですか?
- 弘化3年(1846年)6月24日に上棟しました。棟札には住職祐興の名号と、大工棟梁の石川常蔵・西宮清忠の名が記されています。
- 祐天寺水屋の水盤の文字は誰が書いたのですか?
- 正面の「浄水」の文字は、龍眠と号した江戸後期の書家、正木四郎左衛門の揮毫です。水盤は弘化3年に小松石で造られました。
- 祐天寺水屋が登録有形文化財に登録されたのはいつですか?
- 平成25年(2013年)12月24日に、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されました。登録番号は13-0303です。
- 祐天寺水屋はどこにありますか?
- 仁王門と本堂の間に南北棟で建っています。四方が開いているので、境内が開いていればいつでも見られます。
基本情報
| 名称 | 祐天寺水屋 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都目黒区中目黒5-1067-1(寺の住所は中目黒5-24-53) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成25年(2013年)12月24日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造、銅板葺、方1間、面積3.0平方メートル |
| 所有者 | 宗教法人祐天寺 |
| 公開状況 | 四方吹き放しで、境内が開いていれば自由に見学できる |
参考文献
- 祐天寺水屋(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009718
- 祐天寺水屋(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/207637
- 祐天寺の歴史 年表 弘化3年(1846年)(明顕山 祐天寺)
- https://www.yutenji.or.jp/history/nenpyo/page-33130/page-33639/
- 祐天寺の歴史 年表 寛政元年(1789年)(明顕山 祐天寺)
- https://www.yutenji.or.jp/history/nenpyo/page-33120/page-33509/
- 祐天寺の歴史 年表 明治29年(1896年)(明顕山 祐天寺)
- https://www.yutenji.or.jp/history/nenpyo/page-33145/page-33746/
- 祐天寺の歴史 年表 大正12年(1923年)(明顕山 祐天寺)
- https://www.yutenji.or.jp/history/nenpyo/page-33147/page-35929/
最終更新日: 2026.09.25