大谷石の室を小屋で覆った麹づくりの部屋
石上酒造麹室は、千葉県銚子市田中町の石上酒造の敷地に建つ明治29年(1896年)頃の麹室で、平成30年(2018年)3月27日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「いしがみしゅぞうこうじむろ」、登録番号は12-249である。石上酒造の登録5棟のなかでは、文化庁のデータベースが示す年代が最も早い。
麹室は、蒸し上げた米に麹菌を付け、麹を育てるための部屋である。石上酒造麹室は敷地の南寄り、米蔵の西に建つ。文化庁のデータベースの表記は石造平屋建、金属板葺、建築面積42平方メートル。銚子市教育委員会は、同じ敷地にある大谷石の蔵との比較と聞き取りから、建築を明治29年頃と推定している。
石上酒造麹室の構造:石の壁、杉の内張り、籾殻の断熱
石上酒造麹室の壁は、厚さ30センチメートルの大谷石を長手方向に積んだ組積造である。銚子市の説明によれば、この大谷石の室を、木造平屋建・切妻造・トタン葺の小屋がすっぽり覆っている。外から見えるのは小屋のほうで、麹室の本体はその内側に収まる。
石の内側は全面を杉板で張り、壁体との間には籾殻を詰めて保温している。天井板の上にも藁を敷く。麹づくりは室内の温度と湿度を一定に保つことが要で、石の厚み、籾殻、藁という三重の備えはそのためのものである。石上酒造麹室は、外の小屋、石の室、杉板の内張りという入れ子の造りになっている。
観光向けの冊子「銚子時間」は、石上酒造麹室のような大谷石の石場建ては近年の酒蔵ではあまり見られない造りだと紹介している。
5棟のうち石上酒造麹室だけが「造形の規範」
石上酒造の5棟のうち、登録基準が「造形の規範となっているもの」なのは石上酒造麹室だけで、残る4棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁は石上酒造麹室を、酒造業に欠かせない麹室の好例と評価している。文化庁の解説は、石の積み方から杉板の内張り、籾殻、天井上の藁までを具体的に挙げている。明治の構法が内部の断熱層まで残っている点が、評価の中心にあることが読み取れる。
石上酒造麹室の見学
石上酒造麹室は酒造りの工程のなかでも衛生管理がとりわけ厳しい場所で、内部は公開されていない。石上酒造の見学は事前予約制で、どこまで案内されるかは予約の際に蔵元へ確かめたい。外から見えるのは大谷石の室を覆う木造の小屋で、石の壁は小屋の内側にある。撮影の可否も予約時に確認しておきたい。
Q&A
- 石上酒造麹室とはどんな建物ですか?
- 蒸した米に麹菌を付けて麹を育てるための部屋です。大谷石を積んだ室の内側を杉板で張り、木造の小屋で全体を覆っています。
- 石上酒造麹室はいつ建てられましたか?
- 文化庁のデータベースは明治29年(1896年)頃としています。銚子市教育委員会は、敷地内の大谷石の蔵との比較と聞き取りから推定しています。
- 石上酒造麹室の保温の工夫は?
- 厚さ30センチメートルの大谷石の壁と杉板の内張りの間に籾殻を詰め、天井板の上には藁を敷いています。
- 石上酒造麹室の登録基準は何ですか?
- 「造形の規範となっているもの」です。石上酒造の5棟のなかで、この基準で登録されたのは麹室だけです。
- 石上酒造麹室の中を見学できますか?
- 内部は公開されていません。石上酒造の見学は事前予約制なので、案内の範囲は予約時に蔵元へ確認してください。
基本情報
| 名称 | 石上酒造麹室(いしがみしゅぞうこうじむろ) |
|---|---|
| 所在地 | 千葉県銚子市田中町7-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)、登録番号12-249 |
| 指定年 | 平成30年(2018年)3月27日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 石造平屋建、金属板葺、建築面積42平方メートル、大谷石の壁厚30センチメートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 内部は非公開。見学は石上酒造への事前予約制 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):石上酒造麹室
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012104
- 千葉県:石上酒造米蔵ほか
- https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/q111-102.html
- 銚子市:石上酒造米蔵・麹室・仕込蔵(醪蔵)・貯蔵蔵・文庫蔵
- https://www.city.choshi.chiba.jp/edu/sg-guide/page210178.html
- 銚子時間:石上酒造米蔵ほか(国登録有形文化財)
- https://choshi-jikan.jp/history/industry/spot03.html
最終更新日: 2026.09.30