格の違う二つの入口
善通寺誕生院大玄関及び小玄関は、香川県善通寺市善通寺町にある木造平屋建の玄関棟で、明治40年(1907年)に建てられ、平成22年(2010年)に登録有形文化財に登録された。
宸殿の東に取り付き、北側に大玄関、南側に小玄関を並べる。建築面積は201平方メートル。一棟のうちに二つの入口を持ち、それぞれ扱いを変えているところがこの建物の要点である。
大玄関は入母屋造の妻入で瓦葺、正面に軒唐破風を付ける。式台を設け、天井は二重折上の小組格天井。小玄関も入母屋造だが、天井は格天井にとどめ、両脇の間に花頭窓を開ける。文化庁の解説は、この構成が宸殿の正面に格調ある構えをつくると述べる。
玄関が建築として評価される
善通寺誕生院大玄関及び小玄関の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、登録番号は37-0348である。宸殿の37-0347に続く番号が振られており、二棟が一体の建築として扱われていることが番号からも読める。
玄関に格の差を設けるのは、書院造の建物で客の身分や用件に応じて出入口を使い分けた慣習に沿う。二重折上格天井を張る大玄関は最上位の客のためのもので、小玄関はより日常的な出入りに充てられたと考えられる。両者を並べて一棟に納め、なおかつ屋根と天井の仕立てで序列を示した点が、この建物の設計の妙にあたる。
明治40年(1907年)という年代は、誕生院の登録建造物のなかでは宸殿と並ぶ。堂舎の多くが昭和戦前に整えられたのに対し、書院まわりは明治末に形が定まっていた。
二つの屋根を見比べる
正面から見て、北の大玄関と南の小玄関を見比べたい。どちらも入母屋造だが、大玄関は妻を正面に向ける妻入で、その軒に唐破風が重なる。曲線が二段に重なるぶん、視線は自然に北側へ引かれる。
小玄関は装いを抑え、代わりに両脇間の花頭窓が輪郭のアクセントになる。花頭窓は上部を火炎形に飾った窓で、禅宗建築から広まった意匠である。善通寺誕生院大玄関及び小玄関は、こうした細部の差だけで二つの入口の役割を伝えている。
見学の条件
善通寺誕生院大玄関及び小玄関は、勅使門の内側、宸殿の東面にあたる位置に建つ。玄関前の空間までは立ち入れるので、二つの屋根の対比は正面から確かめられる。
玄関から先の宸殿内部は公開されておらず、式台に上がることもできない。総本山善通寺が受け付ける有料の拝観は戒壇めぐりと宝物館で、この建物は対象外である。撮影について個別の掲示はないため、外観を撮る範囲にとどめ、判断に迷えば御影堂内の受付で確認したい。
Q&A
- 善通寺誕生院大玄関及び小玄関はなぜ玄関が二つあるのですか?
- 客の格や用件によって出入口を使い分けるためです。大玄関は二重折上格天井を張る上位の入口、小玄関はより日常的な出入りに充てられます。
- 善通寺誕生院大玄関及び小玄関はいつ建てられましたか?
- 明治40年(1907年)で、東に取り付く宸殿と同じ年です。
- 善通寺誕生院大玄関及び小玄関の中に入れますか?
- 入れません。玄関前までは進めるので、屋根と正面の意匠は外から確認できます。
- 善通寺誕生院大玄関及び小玄関の見どころはどこですか?
- 大玄関の妻入の屋根に重なる軒唐破風と、小玄関の両脇間に開く花頭窓です。装飾の差が二つの入口の役割を示します。
- 善通寺誕生院大玄関及び小玄関の規模はどれくらいですか?
- 木造平屋建で建築面積201平方メートルです。一棟のうちに大小二つの玄関を納めています。
基本情報
| 名称 | 善通寺誕生院大玄関及び小玄関 |
|---|---|
| 所在地 | 香川県善通寺市善通寺町3-615他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財 |
| 指定年 | 平成22年(2010年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積201平方メートル |
| 所有者 | 宗教法人善通寺 |
| 公開状況 | 内部非公開、外観は玄関前から見学可 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 善通寺誕生院大玄関及び小玄関
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008180
- 文化庁 国指定文化財等データベース 善通寺誕生院宸殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008179
- 総本山善通寺 境内の見どころ
- https://zentsuji.com/keidai/
最終更新日: 2026.09.14