飾りを持たない二階建の蔵

善通寺誕生院南土蔵は、香川県善通寺市善通寺町にある土蔵造二階建の建物で、大正期(1912年から1925年)に建てられ、平成22年(2010年)に登録有形文化財に登録された。

誕生院の伽藍の南西隅に、南北棟で建つ。屋根は切妻造の桟瓦葺で、構造体とは別に架けた置屋根とする。置屋根は蔵の本体を雨から守るために上から覆う形式で、土蔵に多く用いられる。建築面積は25平方メートル。

基礎は切石を高く積み上げ、壁は白い漆喰で仕上げる。北面に両開きの戸を設け、東西の面に窓を穿つ。内部は板敷で壁も板張り、1階は引違い戸によって南の一間を間仕切る。文化庁の解説は、装飾的要素を廃した簡明な土蔵と評する。善通寺誕生院南土蔵は、誕生院19件のなかで唯一の二階建にあたる。

実用の建物が登録される意味

善通寺誕生院南土蔵の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、登録番号は37-0349である。

仏堂や門のように人を迎える建物ではなく、物を納めるための建物である。それでも19件のうちの1件として登録されたのは、この土蔵が誕生院の南西の一角を構成しているからにほかならない。堂や門だけを拾えば、寺の暮らしを支えた建物が抜け落ちる。橋・塀・石積とともに土蔵まで含めたところに、この一括登録の考え方が表れている。

大正期という年代も特徴的である。誕生院の登録建造物では、明治40年(1907年)の宸殿と昭和11年(1936年)の御影堂の間に挟まれる時期にあたり、同時期のものは大正4年(1915年)の御影堂前廻廊のみである。

白い壁と切石の基礎

この建物を見るなら、壁面と基礎の取り合いに注目したい。切石を高く積んだ基礎の上に白漆喰の壁が立ち上がり、素材の境目がまっすぐな水平線として通る。装飾がないぶん、線の通り方だけで建物の印象が決まる。

屋根も確かめておきたい。置屋根は本体の壁とわずかに間を空けて架かるため、軒下の陰の付き方が普通の切妻屋根とは異なる。開口部は北面の戸と東西面の窓に限られ、南面は閉じている。善通寺誕生院南土蔵は、必要なものだけで構成された建物がどう見えるかの実例になっている。

見学の条件

善通寺誕生院南土蔵は誕生院の南西隅にあり、堂舎の並ぶ中心部からは外れる。宸殿の西側へ回り込むと壁面が見えるが、位置の関係で正面から全体を見渡せる場所は限られる。

収蔵のための建物であり、内部は公開されていない。総本山善通寺で有料になるのは御影堂内で受け付ける戒壇めぐりと宝物館の拝観だけで、この土蔵は対象外である。撮影について個別の掲示はないが、寺務の区画に近いため、外観を遠目に撮る程度にとどめたい。

Q&A

Q善通寺誕生院南土蔵はどんな建物ですか?
A土蔵造二階建、切妻造桟瓦葺の置屋根をもつ収蔵用の建物です。建築面積25平方メートルで、誕生院19件のうち唯一の二階建です。
Q善通寺誕生院南土蔵はいつ建てられましたか?
A大正期(1912年から1925年)です。文化庁のデータベースは年を特定せず、時期のみを記録しています。
Q善通寺誕生院南土蔵の中に入れますか?
A収蔵のための建物で、内部は公開されていません。外観のみの見学になります。
Q善通寺誕生院南土蔵はどこにありますか?
A誕生院の伽藍の南西隅です。宸殿の西側へ回り込むと壁面が見えます。
Q善通寺誕生院南土蔵の見どころはどこですか?
A高く積んだ切石の基礎と白漆喰の壁が接する水平線、そして本体と間を空けて架かる置屋根の納まりです。

基本情報

名称善通寺誕生院南土蔵
所在地香川県善通寺市善通寺町3-615他
指定区分登録有形文化財
指定年平成22年(2010年)登録
員数1棟
寸法土蔵造2階建、瓦葺、建築面積25平方メートル
所有者宗教法人善通寺
公開状況内部非公開、外観のみ見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 善通寺誕生院南土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008181
文化庁 国指定文化財等データベース 善通寺誕生院御影堂前廻廊
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008173
総本山善通寺 境内マップ
https://zentsuji.com/keidai/map/

最終更新日: 2026.09.14