當麻寺西塔は平安時代前期の三重塔

當麻寺西塔は、奈良県葛城市當麻の當麻寺にある平安時代前期の三重塔で、昭和27年(1952年)に国宝に指定された。読みは「たいまでらさいとう」。同じ境内の東塔と一対をなし、古代の三重塔が東西にそろって残る唯一の例として知られる。

當麻寺西塔は金堂の南西、二上山から東へ延びる尾根の北斜面を造成した場所に建つ。奈良県教育委員会の資料によると、高さは礎石の上から宝珠の頂まで24.1メートルで、基壇の下から礎石までがさらに1.1メートルある。斜面の上に立つぶん、境内の平地から見上げると数字以上に高く感じられる。

三手先の組物と8つの宝輪

當麻寺西塔は各重とも柱間が3間の三重塔で、屋根は本瓦葺である。文化庁の解説によると、各重の中央の間に板扉を開き、組物は典型的な三手先をとる。軒を深く張り出すための組物が、3段にわたって外へ迫り出していくのがよく見える。

初重の内部では心柱に覆板を張り、そこに仏像などの彩色画を描いている。寺の案内では、塔の内部には大日如来が祀られている。

見上げたときに確かめたいのが相輪である。當麻寺西塔と東塔は、相輪の宝輪がどちらも8つしかない。ふつうの塔の相輪は宝輪を9つ重ねて「九輪」と呼ばれるので、8輪は日本の塔ではめずらしい例だと文化庁は記している。

建てられた年代と再建説

當麻寺西塔の建立年代を記した史料は無く、文化庁は様式から平安時代前期の建立と考えている。奈良県教育委員会の資料によると、平成12年(2000年)の防災設備工事に伴う発掘で、西塔の整地層から9世紀後半の土器が出ており、この見方を裏づけている。

一方で、同じ整地層からは當麻寺の創建期にあたる7世紀後半の瓦も出土した。心柱と心礎の形が合わないことから、いまの西塔は創建のままではなく建て直されたものだとする足立康の説(昭和8年、1933年)があり、県の資料はこの説を否定できないとしている。

修理の記録も多い。文化庁によると、建保7年(1219年)、慶長18年(1613年)、正保3年(1646年)、明和4年(1767年)ほかに大小の修理を受けてきた。明治44年(1911年)から大正3年(1914年)にかけても修理が行われている。

心柱の頂から出た金・銀・金銅の舎利容器

當麻寺西塔は平成28年(2016年)6月から、屋根瓦の葺き替えを中心とする修理に入った。平成29年(2017年)7月10日、相輪の頂部を外すと心柱の上端に木の蓋がはめ込まれていた。その下は深さ17センチの円孔になっていて、直径12.2センチ、高さ14.2センチの銅の筒が納まっていた。

筒の中には、金銅製・銀製・金製の3つの舎利容器が入れ子になって納められていた。いちばん内側の金製容器は高さ1.2センチほどで、舎利1粒を紙に包んで入れてある。建保7年や明和4年の修理のときに納めた文書や銭も一緒に見つかった。

奈良国立博物館は、3つの容器の形や金・銀・銅を重ねる構成から、飛鳥時代後期(白鳳期、7世紀後半)の作と推定した。白鳳期の舎利容器がそろって伝わる例はごく少ない。原品は心柱に戻さず保管して公開する方針となり、西塔には複製の容器に舎利を納めて奉籠し直した。

當麻寺西塔が国宝に指定された理由

當麻寺西塔は明治30年(1897年)に古社寺保存法で保護の対象となり、文化財保護法のもとで昭和27年(1952年)に国宝に指定された。文化庁は、古代の三重塔が2基とも完全に残るものとして、東塔とともに貴重だと評価している。

2基のうち東塔は奈良時代、當麻寺西塔はやや遅れた平安時代前期の建立とみられ、寺も様式に変化が見られると案内している。同じ寺の同じ形式の塔を、時代差のある2基として見比べられることが、この一対の大きな価値になっている。

當麻寺西塔の見学

當麻寺西塔の内部は、寺の拝観案内に公開の記載がない。見学は外観が中心になる。塔の立つ丘へは境内から上がれ、境内の開門時間である午前9時から午後5時の間なら無料で近づける。

見る位置は二つ勧めたい。一つは本堂の前あたりで、南の丘の上に東塔と西塔が並ぶ姿が収まる。もう一つは塔の足もとで、初重の板扉と三手先の組物、軒下の支輪が間近に見える。相輪の宝輪を数えて8つであることを確かめるなら、少し離れて見上げるほうがよい。

堂内の撮影可否などの細かな条件は、受付のある本堂で確かめたい。境内への行き方と拝観料は當麻寺のページにまとめてある。

Q&A

Q當麻寺西塔はいつ建てられましたか?
A建立年代を記した史料は無く、文化庁は様式から平安時代前期の建立としています。発掘では整地層から9世紀後半の土器が出ています。ただし7世紀後半の瓦も出ており、建て直されたものとする説もあります。
Q當麻寺西塔と東塔はどう違いますか?
Aどちらも柱間3間の三重塔で国宝ですが、東塔は奈良時代、當麻寺西塔は平安時代前期の建立とみられています。寺も両塔の様式に変化が見られると案内しています。
Q當麻寺西塔の中に入れますか?
A寺の拝観案内に内部公開の記載はなく、外観の見学が中心になります。境内は午前9時から午後5時まで無料で散策できます。
Q當麻寺西塔の相輪が8輪なのはなぜ珍しいのですか?
A塔の相輪はふつう宝輪を9つ重ねて「九輪」と呼ばれます。當麻寺西塔と東塔はどちらも8つで、文化庁は日本の塔では珍しい例としています。
Q當麻寺西塔から見つかった舎利容器とは何ですか?
A平成29年(2017年)の修理中に心柱の頂部から見つかった金製・銀製・金銅製の入れ子の容器です。奈良国立博物館は7世紀後半の作と推定しており、西塔には複製の容器が納め直されました。

基本情報

名称當麻寺西塔
所在地奈良県葛城市當麻
指定区分国宝
指定年昭和27年(1952年)国宝指定(明治30年(1897年)古社寺保存法により指定)
員数1基
寸法方3間、3重の塔婆、本瓦葺。高さ24.1メートル(礎石上から宝珠頂部まで)
所有者當麻寺
公開状況外観は境内から見学可(午前9時〜午後5時、無料)。内部の公開案内なし

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):當麻寺西塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2780
国指定文化財等データベース(文化庁):當麻寺東塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2779
奈良県教育委員会ほか:国宝 当麻寺西塔納置舎利容器について(報道発表資料、平成30年(2018年)11月14日)
https://www.pref.nara.jp/secure/204966/taima.pdf
當麻寺中之坊:拝観案内 境内の散策
https://taimadera.org/guide/3/index.html
當麻寺中之坊:拝観案内 伽藍三堂
https://taimadera.org/guide/2/index.html
葛城市:當麻寺
https://www.city.katsuragi.nara.jp/soshiki/shokokankoka/kankou/spot/6/3/2161.html

最終更新日: 2026.09.30