延暦寺根本中堂廻廊とは

延暦寺根本中堂廻廊は、滋賀県大津市坂本本町の比叡山東塔で、延暦寺の総本堂である根本中堂の前庭を囲む江戸時代前期の廻廊で、明治32年(1899年)4月5日に国の指定を受け、現在は重要文化財となっている。文化庁の記録では、根本中堂と同じ寛永17年(1640年)の建立である。

根本中堂は東を向いて建ち、その正面に中庭が開く。延暦寺根本中堂廻廊は、この中庭を堂の前でコの字に折れ曲がりながら取り囲み、堂と庭をひと続きの聖域にまとめている。延暦寺の案内によれば、廻廊と中門が初めて設けられたのは天元3年(980年)、慈恵大師良源の時代で、谷を埋め立てて中堂を現在と同じ11間の大堂に広げた際のことという。

元亀2年(1571年)の焼き討ちで中堂とともに失われたのち、天海の進言を受けた3代将軍徳川家光の命で再建が進められた。文化庁は根本中堂と廻廊の建立を寛永17年(1640年)とし、延暦寺は中堂の竣工を寛永19年(1642年)としている。着工から完成までの幅をどちらの年で示すかの違いとみられる。

延暦寺根本中堂廻廊の形式と価値

国指定文化財等データベースは、延暦寺根本中堂廻廊を「桁行折曲り四十一間、梁間二間、一重、両下造、正面前後軒唐破風付、両側面車寄各唐破風造、とち葺」と記録する。折れ曲がった全長で柱間が41、奥行きは2間。屋根は両側へ流れ下る両下造(りょうさげづくり)で、中庭側と外側の両方に軒を出す。

形式の中で目を引くのは、要所に置かれた唐破風である。正面中央では外側と中庭側の両方の軒に軒唐破風を付け、ここが廻廊の表口であることを示す。左右の側面には唐破風造の車寄が張り出し、長い廻廊の単調さに節をつくっている。

屋根は栩葺(とちぶき)である。延暦寺の改修記録によると、厚さ2.4センチ、長さ30センチの板を8.5センチずつずらしながら打ち重ねていく。根本中堂の屋根が寛政10年(1798年)に栩葺から銅板葺へ改められたのに対し、延暦寺根本中堂廻廊は栩葺を保ってきた。本堂と廻廊で屋根の材料が違うのはこの経緯による。

塗装にも決まりがある。柱と頭貫より下は油を混ぜた「ちゃん塗」、組物より上は丹塗で塗り分け、建具には黒漆を塗る。今回の修理に先立つ調査では、再建当初は幕府が特別に認めた建物にしか許されなかった「土朱塗り」だったことが分かった。材料の入手が難しいため工法はちゃん塗のまま、色合いを当初に近づけて塗り直している。

延暦寺根本中堂廻廊の価値は、平安時代以来の中堂と前庭の構えを、江戸時代前期の再建で改めて形にした点にある。中堂の外側を回廊で囲む配置は、延暦寺の総本堂の格を空間として示すもので、国宝の根本中堂と一体で見てこそ意味が通る建物である。

見どころ ― 大改修で見える廻廊の屋根

根本中堂と廻廊は、平成28年(2016年)から約15年の予定で保存修理が進められている。修理の中心は中堂の銅板葺、廻廊の栩葺の葺き替え、全体の塗装と彩色で、工事中も参拝ができるように処置されている。工事中の建物は大きな素屋根(仮設の覆い屋)の中にある。

工事の期間に限った見方として、中庭に設けられた修学ステージがある。根本中堂の軒先の高さまで上ることができ、延暦寺根本中堂廻廊の屋根を上から見下ろせる。栩の板が細かくずらされて何層にも重なる様子や、唐破風の曲線の頂部が、地上からとはまったく違う角度で見える。延暦寺の案内では、修学ステージの公開は解体工事の開始に伴い令和8年(2026年)12月頃までの予定である。

地上では、柱に施されたちゃん塗と、組物まわりの丹塗の色の違いを確かめたい。修理後は当初の土朱塗りに近い色合いに整えられており、黒漆の建具との対比がくっきり出る。

廻廊の正面側、東の一段高い台地には文殊楼が立つ。石段を上がって文殊楼の前から振り返ると、廻廊の表口と根本中堂が一直線に並ぶ構えがよく分かる。

見学方法 ― 工事中の見学と見学会

延暦寺根本中堂廻廊は東塔の中心、根本中堂の前庭を囲んで建つ。現在は保存修理中で、根本中堂とともに大きな素屋根の中にあるが、工事中も参拝ができるよう処置されている。中庭の修学ステージは、延暦寺の案内で令和8年(2026年)12月頃までの公開予定である。

延暦寺は根本中堂の工事現場を案内する見学会も開いている。参加は無料で、受付は根本中堂入口。2026年は10月10日と11月の各土曜日に予定され、素屋根の解体に伴い今年が最後の開催とされている。日程は延暦寺の公式サイトで確かめたい。

撮影の可否は公式案内に明記がないため、廻廊や工事区域では現地の指示に従うこと。見学は東塔の巡拝時間内で、東塔・西塔・横川共通券が必要である。境内への行き方と巡拝時間・料金は延暦寺のページにまとめてある。

Q&A

Q延暦寺根本中堂廻廊はいつ建てられましたか?
A文化庁の記録では、根本中堂と同じ寛永17年(1640年)の建立です。延暦寺は中堂の竣工を寛永19年(1642年)としています。廻廊そのものの起こりは天元3年(980年)とされます。
Q延暦寺根本中堂廻廊は改修工事中でも見学できますか?
A見学できます。工事中も参拝できるよう処置されており、中庭の修学ステージからは廻廊の屋根を見下ろせます。修学ステージは令和8年(2026年)12月頃までの予定です。
Q延暦寺根本中堂廻廊の屋根はなぜ根本中堂と違うのですか?
A根本中堂の屋根は寛政10年(1798年)に栩葺から銅板葺へ改められましたが、廻廊は栩葺のまま受け継がれてきたためです。
Q延暦寺根本中堂廻廊の改修現場の見学会はありますか?
A延暦寺が無料の見学会を開いており、受付は根本中堂入口です。2026年は10月10日と11月の各土曜日の予定で、素屋根の解体に伴い今年が最後とされています。
Q延暦寺根本中堂廻廊と文殊楼はどういう位置関係ですか?
A文殊楼は廻廊の正面側、東の一段高い台地に建ちます。文殊楼の前から振り返ると、廻廊の表口と根本中堂が一直線に並ぶ構えが分かります。

基本情報

名称延暦寺根本中堂廻廊
所在地滋賀県大津市坂本本町(比叡山東塔)
指定区分重要文化財(建造物)
指定年明治32年(1899年)4月5日
員数1棟
寸法桁行折曲り41間、梁間2間、一重、両下造、正面前後軒唐破風付、両側面車寄各唐破風造、栩葺
所有者延暦寺
公開状況東塔の巡拝時間内に見学可(共通券が必要)。保存修理工事中

参考文献

国指定文化財等データベース「延暦寺根本中堂廻廊」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1321
文化遺産オンライン「古都京都の文化財」推薦書 内容説明 E 延暦寺
https://online.bunka.go.jp/suisensyo/kyoto/MAINTEXT/3b-E-j.html
国宝根本中堂大改修(天台宗総本山 比叡山延暦寺)
https://www.hieizan.or.jp/renovation/overview.html
改修のあらまし(天台宗総本山 比叡山延暦寺)
https://www.hieizan.or.jp/renovation/process.html
根本中堂改修見学会(天台宗総本山 比叡山延暦寺)
https://www.hieizan.or.jp/experience/renovation.html
東塔(天台宗総本山 比叡山延暦寺)
https://www.hieizan.or.jp/grounds/toudou.html
巡拝時間・料金(天台宗総本山 比叡山延暦寺)
https://www.hieizan.or.jp/tickets/
交通案内(天台宗総本山 比叡山延暦寺)
https://www.hieizan.or.jp/access/

最終更新日: 2026.09.25