延暦寺大講堂(旧東照宮本地堂)とは
延暦寺大講堂(旧東照宮本地堂)は、滋賀県大津市坂本本町の比叡山東塔にある江戸時代前期の仏堂で、寛永11年(1634年)に山麓坂本の東照宮本地堂として建てられ、昭和62年(1987年)6月3日に重要文化財に指定された。僧が経典を講じ論議する大講堂として使われている。
比叡山の大講堂は、『滋賀県百科事典』によれば天長5年(828年)の創建と伝え、焼失と再建を繰り返してきた。元亀2年(1571年)の焼き討ちの後、寛永年間に根本中堂とともに再建された先代の大講堂は、禅宗様を基調とする大きな建物だったが、昭和31年(1956年)に全焼した。
そこで、坂本の東照宮に本地堂(讃仏堂)として建てられていた現在の建物が、前の大講堂の跡へ移された。文化庁はこの移建を昭和38年(1963年)とし、延暦寺の案内は昭和39年(1964年)としている。このとき、東照宮境内にあった鐘楼も一緒に山上へ移され、いまは阿弥陀堂鐘楼として「延暦寺」11棟の一つになっている。
延暦寺大講堂の形式と指定の価値
文化庁の記録では、延暦寺大講堂(旧東照宮本地堂)は「桁行七間、梁間六間、一重、入母屋造、向拝三間、銅板葺」である。『滋賀県百科事典』は平面の規模を正面7間で22.74メートル、側面6間で18.02メートルとしている。
意匠は和様を基調とする。柱に長押をめぐらし、蔀戸を多く用いて、側面に規則正しい格子の面をつくる。一方で、妻飾には二重の虹梁と大瓶束を用い、一部に桟唐戸を入れていて、禅宗様の手法も混じる。文化庁は「和様を基調とした端正な意匠」とまとめ、寛永期の建築としての価値を認めている。
内部はすべて床張りで、前から3間を外陣、その奥を内陣とする。内陣には胎蔵界の大日如来を中心に、十一面観音と弥勒菩薩を脇侍として祀る。堂内には桓武天皇、聖徳太子、天台大師、最澄のほか、比叡山で学んだのちに一宗一派を開いた僧たちの木像や画像が多く安置されている。
徳川家康を祀る東照宮の本地堂として建てられた建物が、比叡山の学問の中心である大講堂に転用されている点に、この堂の来歴の特色がある。江戸時代初期の東照宮建築の一部が、場所と用途を変えて使われ続けている例でもある。
見どころ ― 祖師像の並ぶ外陣と和様の外観
延暦寺大講堂の前に立つと、正面3間に張り出した向拝と、両側面に並ぶ蔀戸の格子がまず目に入る。妻側に回ると、二重虹梁と大瓶束の組み方が見え、和様の本体に禅宗様の細部を組み合わせた構成が読み取れる。
堂内では、比叡山で修行した各宗派の開祖の像に注目したい。延暦寺の案内では、本尊大日如来の左右に比叡山で修行した宗祖の木像が祀られ、外陣には釈迦をはじめ仏教・天台宗ゆかりの高僧の肖像画が掛かる。日本仏教の多くの宗派がこの山から出たことを、像の並びで確かめられる。
見学方法 ― 東塔の大講堂
延暦寺大講堂(旧東照宮本地堂)は東塔地区にあり、戒壇院の下手に建つ。東塔の巡拝時間内に参拝でき、東塔・西塔・横川共通券が必要である。延暦寺の案内では、内部に本尊と宗祖像が祀られており、参拝者は外陣から拝する形になる。
法要のときは入堂が制限されることがある。撮影の可否は公式案内に明記がないため、堂内では現地の掲示や係員の指示に従いたい。境内への行き方と巡拝時間・料金は延暦寺のページにまとめてある。
Q&A
- 延暦寺大講堂はもともと何の建物でしたか?
- 寛永11年(1634年)に山麓坂本の東照宮の本地堂として建てられた仏堂です。昭和31年(1956年)に先代の大講堂が焼けた後、山上へ移されて大講堂になりました。
- 延暦寺大講堂が山上に移されたのはいつですか?
- 文化庁は昭和38年(1963年)、延暦寺の案内は昭和39年(1964年)としています。
- 延暦寺大講堂には何が祀られていますか?
- 胎蔵界の大日如来を本尊に、十一面観音と弥勒菩薩を脇侍として祀ります。比叡山で学んだ各宗派の開祖の像や高僧の画像も安置されています。
- 延暦寺大講堂はいつ重要文化財に指定されましたか?
- 昭和62年(1987年)6月3日です。和様を基調とした端正な意匠の寛永期の建築として評価されています。
- 延暦寺大講堂の中に入れますか?
- 東塔の巡拝時間内に参拝でき、外陣から本尊と祖師像を拝します。東塔・西塔・横川共通券が必要です。
基本情報
| 名称 | 延暦寺大講堂(旧東照宮本地堂) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県大津市坂本本町(比叡山東塔) |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物) |
| 指定年 | 昭和62年(1987年)6月3日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行7間、梁間6間、一重、入母屋造、向拝3間、銅板葺 |
| 所有者 | 延暦寺 |
| 公開状況 | 東塔の巡拝時間内に参拝可(共通券が必要) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース「延暦寺大講堂(旧東照宮本地堂)」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1328
- 国指定文化財等データベース「延暦寺」詳細解説(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004892
- 文化遺産オンライン「延暦寺大講堂(旧東照宮本地堂)」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/122337
- レファレンス協同データベース「延暦寺大講堂の概要」(国立国会図書館・滋賀県立図書館)
- https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000102483
- 東塔(天台宗総本山 比叡山延暦寺)
- https://www.hieizan.or.jp/grounds/toudou.html
最終更新日: 2026.09.25